宇野昌磨 神プログラムまとめ

先日、現役引退を発表した宇野昌磨さんの歴代プログラムのうち、特に私が好きなプログラム10個を神プロとして取り上げてみました。

どうやら私の感性は常人からややずれているようで、多くの人が神プロにあげているプログラムが入っていなかったり、逆にあまり言及されていないプログラムが入っていたりしますが、ご容赦ください。

目次

第10位 2023~24FS「Timelapse/鏡の中の鏡」

現役最後のフリースケーティングプログラムとなりました。

このプログラムでは、前半の「Timelapse」では彼のスケート人生を、後半の「鏡の中の鏡」では自己の内面との対話を描き出しているように感じました。

「Timelapse」とは、長い時間を短い時間に圧縮して見せる映像技術のこと。例えば、蕾から花が開くまで一定の間隔で写真を撮り続けてその写真を連続して再生することで、花が開くまでの長い時間の変化を短時間で見せることが出来るらしい。そう考えると、過去から未来へと流れる彼のこれまでのスケート人生を表現しているように感じました。

ステップシークエンスの途中で「鏡の中の鏡」に移り変わると、完全に他者の存在が消えていくよう。鏡を覗き込むことで見える自分自身の姿、そしてその姿に向き合っており、ひたすら自分自身との対話を繰り返しているように見えます。どのように魅せるかという競技で、表現の向きが外ではなく、内に向かっているのが非常に印象的でした。

第9位 2017~18FS「トゥーランドット」

https://www.youtube.com/watch?v=bHY3FcNKzL8

2015~16シーズンと2017~18シーズンのどちらが良いか非常に悩みました。プログラムの編曲としては、前者の方が正統派で好みです。しかし、2年の時を経て曲と宇野選手の表現が噛み合ったのが2017~18シーズンのトゥーランドットではないかと思うので、こちらをランクインさせてみました。

ところで、この青と金色の衣装すごく良いですよね。まさに王子という衣装です。一方で、苦しいから~という理由で首回りをハサミでじょきじょき切ったという逸話が残されており、非常に昌磨さんらしいなと感じます。

おそらく当時から交際していたであろう本田真凜さんが、全く同じシーズンのフリースケーティングにトゥーランドットを使用していたのが、意図的なのか偶然なのか気になっています。知っている方、もしくは本人は教えてください。

第8位 2019~21SP「Great Spirit」

THE 宇野昌磨と言えばGreat Spirit。通称グレスピ。

このプログラムは元々エキシビションプログラムとして作成され、話題となっていたプログラムでした。かなり個性的なプログラムであり、競技用に作り直すことでエキシビション時代の良さが消えてしまわないかという懸念がありました。しかし、その懸念は全くの杞憂であったことを思い知らされました。エキシビション時代の溢れるエネルギーは残り、競技用の難易度の高い技術要素が入ることで見ごたえが増しました。

グレスピをここまで表現できる選手は他にいないでしょう。

第7位 2019~21FS「Dancing On My Own」

昌磨さんのプログラムは彼のコーチでもあった樋口美穂子さん、ステファン・ランビエールさんによる作品が多いですが、「Dancing On My Own」はデイビッド・ウィルソンさんの作品です。その他にも”This Town”(私が勝手に「この町しょまち」と呼んでいる)もウィルソンさんの作品ですが、昌磨×ウィルソンはシンプルで爽やかな風が吹き抜けるようなプログラムになる印象があります。

「Dancing On My Own」は失恋の歌です。自らの愛する人は別の女性のことを見ており、私は一人で踊り続けている(=dancing on my own)と。このシーズンは、前シーズンまで長年指導を受けていたグランプリ東海クラブの山田満知子さん、樋口美穂子さん(当時)から離れることになりました。失恋による喪失感と新しいスタート、古巣からの卒業と新しいスタートを切る自らを重ねているようにも見えました。

第6位 2016~17EX「See You Again」

様々な想いが詰まっているプログラム。通称「しゆあげ」。

「See You Again」自体が不慮の事故で亡くなった友人を想って作られた曲であることは知られていますが、昌磨さん自身も亡くなった彼の大切な人を想って滑っているということが、彼の弟である宇野樹さんの書籍「兄・宇野昌磨 弟だけが知っている秘密の昌磨」によって言及されています。また、ソチオリンピック銅メダリストであるデニス・テンさんが強盗に襲われ命を落とした直後のアイスショーでも、昌磨さんは「See You Again」を滑っていました。

これら背景を踏まえて改めて「See You Again」を見ると、また見え方が変わってくるのではないかと思います。

現役引退を発表する直前に出演したアイスショー プリンスアイスワールド横浜公演でも「See You Again」を披露していましたが、競技生活への別れを想いながらの演技だったのかもしれません。

第5位 2015~16SP「Legends」

シニア本格デビューシーズンのプログラムですが、「これ宇野昌磨以外に演技できるやつおる?」感が強い。強すぎる。

曲が全くフィギュアスケート向きではないんですね。メッセージ性があるわけでもなく、ストーリー性があるわけでもない。それをただただ彼の動きだけでプログラムとして成立させている。彼の踊り、シニア本格デビューの勢いと疾走感が重なり、この時しか演じることが出来ないプログラムになっていました。

余談ですが、このプログラムで史上初の4回転フリップを成功させることになります。

第4位 2022~23FS「G線上のアリア」

「しょま線上のしょまち」と呼んでいるのは私だけ。昌磨さんは正統派クラシックを演じることがあまりなかったですし、「G線上のアリア」をフィギュアスケートで使用する選手は曲の知名度の割にはかなり少なかったので、このチャレンジングな選曲に驚かされました。バッハの音楽が持つ静かで荘厳な雰囲気は彼の鋭く重いスケートに非常に合っています。

彼は腕の使い方が非常に上手いですが、このプログラムでは背中や胸の使い方の上手さが際立っています。どうやって動かしているのかわからないような動きが散見されます。彼はワンピースオンアイスでゴム人間ルフィを演じていますが、本当にゴム人間なんでしょうか…?

第3位 2021~22SP「オーボエ協奏曲ニ短調」

軽い・重い、鋭い・柔らかいという指標で昌磨さんのスケートを見ると、重く・鋭いスケートだということが出来るでしょう。そんな重く・鋭いスケートが最も良さを際立たせていたプログラムが「オーボエ協奏曲ニ短調」だと言えるでしょう。

このプログラムはポージングが非常に印象的で、ドレープ風の美しい衣装と顔面偏差値80のお顔も相まって西洋彫刻がフィギュアスケートをしているように見えます。もはや彼自身が芸術作品。

宇野昌磨はかなり癖が強い演技者だと思っています。中途半端な癖だと見苦しいかもしれないけれど、彼のようにあまりに癖が強すぎるレベルまで到達すると、それは個性として強みになるんだろうとこのプログラムを見ながら感じました。

第2位 2021~22EX「Earth Song/History」

おそらくこのプログラムをベストプログラムに上げるのは私だけ。北京オリンピックがあった2021~22シーズンは、先に紹介したオーボエ協奏曲ニ短調とEarth Song/History(=マイケルジャクソンメドレー)のどちらかをショートプログラムにすると話していました。

結局、オーボエ協奏曲ニ短調がショートプログラムに、マイケルジャクソンメドレーがエキシビションになりましたが、私は後者の方が好みのプログラムです。オーボエ協奏曲ニ短調はこれまでの宇野昌磨を突き詰めてきた最高到達点。一方マイケルジャクソンメドレーは今までにない宇野昌磨であり、競技会で演じるのはあまりにチャレンジングなプログラムでした。

ムーンウォーク等のTHE マイケルジャクソンともいえるような振り付けも入っていますが、それ以上に細かい音の取り方の上手さが目を引きました。特に彼の代名詞でもあるクリムキンイーグルと同時に始まる後半部分のHistoryの表現はリズミカルで、エネルギッシュで、それでいてセクシーな演技でした。

ところで、この衣装はまるでエナジードリンクのモンスターのように見えます。彼はゲーマーなのでおそらく常飲しているでしょう。

第1位 2016~17FS「ブエノスアイレス午前零時/ロコへのバラード」

やっぱりロコがナンバーワン。やロN1

振付師は当時昌磨さんのコーチでもあった鬼才・樋口美穂子さんです。美穂子はもっと評価されるべき。ローリー・ニコル、ブノワ・リショー辺りとも戦える。

前半の「ブエノスアイレス午前零時」は不穏な空気が漂います。そこに高難度ジャンプである4Loと4Fを配置することで、深夜12時を回ったブエノスアイレスの街並みの緊張感を見事に表現していました。

ひゅーーーーん3A+3Tから後半の「ロコへのバラード」へ。後半はプログラムの作り方が非常に上手いですね。前半よりは省エネ気味ですが、印象的な音に合わせた振り付け、ジャンプや各要素を盛り上がりに合わせて配置することで、プログラムの盛り上がりを作ることに成功しています。一番の盛り上がりで持ってくる3A+1Eu+3F~3S~コレオシークエンスのクリムキンイーグルという終盤の流れが、曲に非常に合った形で配置されており素晴らしいです。

無理やりプログラムを10個に絞りましたが、他にもたくさん良いプログラムがあります。本当に素晴らしいキャリアでした。お疲れさまでした!そして、これからも素晴らしい作品を見れるのを楽しみにしています!

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この記事を書いた人

ただのフィギュアスケートファン。フィギュアスケート現地観戦し始めて10年前後。現在も日本国内の大会・アイスショーに出没しています。
このブログでは現地観戦の感想、日々感じたことをのんびり書いています。

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