2022~23シーズン 個人的今季ベストプログラム④【1~5位】

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この記事で書いていること

2022~23シーズンの個人的今季ベストプログラムもついに最終回(仮)となりました!(番外編も書こうかなとは思っていますがとりあえず…)

ベスト20を紹介してきましたが、今回ようやくトップ5を紹介します。6~20位は以下のページを参照ください。

個人的今季ベストプログラム

第5位

・氏名:アデリア・ペトロシアン(ロシア)
・区分:女子シングル・ショートプログラム
・プログラム名:Voilà
・ベスト演技:ロシアグランプリファイナル

私はたまにペトロシアンを見ていると怖くなる時があります。例えば、アレクサンドラ・トゥルソワはクワドモンスターですが人間味がありますし、ソフィア・アカチエワは宇宙人かな?と思うこともあるんですが、何者なのかがわかる気がするんですよね。けど、ペトロシアンだけは、人間の皮を被った人間ではない何かなのではないかと感じる瞬間が時たまあります。

ペトロシアンが演じる”Voilà”は彼女に非常に合っていると感じる一方、なぜ彼女に合っているのかが言語化できずにいました。曲がペトロシアンに合っているのはもちろんなんですが、もっと根本的なものが同じなのではないかーそんな気がしていました。

私の中でなんとなく腑に落ちたのは、”Voilà”のミュージックビデオを見て、何を歌っているのか歌詞を確認したあたりからです。”Voilà”を歌うBarbara Praviさんは、複数の国にルーツを持つフランス人女性です。”Voilà”では、「ハーフの歌手である私の言うことを聞いて」「黒い瞳の女の子(=Barbara Praviさん)と、彼女の狂った夢をあなたの恋人、友人に話して」と語りかけるように歌いだすと、サビでは「笑♪笑♪笑♪」…ではなく、「これが私なの」と全てさらけ出すように何度も歌います。

一方で、ペトロシアンも同じように全てをさらけ出しているように見えます。彼女は演技前後、演技中に一切表情が変わらないんですよね。「私は世界一を取りに来ました。さあ私を見て、これが私。」とでも言うように。身体的能力だけ見れば、ペトロシアンよりも優れているスケーターは他にもたくさんいるでしょう。にもかかわらず、彼女は本気で自らが世界一を取ると信じている。そして、そんな自分のことも「これが私」だと動じずに演じている。そこに怖さを感じていたのかもしれません。

また、ミュージックビデオで音楽の最終盤に見せる二面性、黒ずくめの男たちに囲まれながら笑っているのも、真顔でまっすぐ前を見つめる姿も、ペトロシアンに感じる不気味さに近いものを感じました。

これが私だと全てさらけ出すように歌うBarbara Praviさんとペトロシアンがなんとなく被るような気がしました。だからこそ、私はペトロシアンが演じる”Voilà”が非常に合っているように感じたのかもしれません。

第4位

・氏名:住吉りをん(日本)
・区分:女子シングル・フリースケーティング
・プログラム名:Enchantress
・ベスト演技:鍵山優真・住吉りをん 2022 新プログラム披露スペシャル!
ショートプログラムを紹介した時にも述べましたが、彼女は壮大さと繊細さを併せ持つ唯一無二のスケーターです。ショートプログラムでは彼女の繊細さに焦点を当てていたのに対して、このフリースケーティングでは、彼女の持つ雄大さ・壮大さに特に焦点が当てられています。
それだけでなく、少しいたずらっ子のような印象も受けます。曲名Enchantressは、魔女、魔法使いという意味ですが、このプログラムで演じるのは気まぐれな魔法使いとでも述べるのが適切でしょうか。
今シーズン中に公式試合ではEnchantressを完成させることが出来ませんでしたが、実はシーズン開始直前に配信された動画において住吉選手はEnchantressを完璧に演技できています。
4T,3Lo,3F3T,3Lz//2A3T,3F2T2Lo,3S
4Tこそアンダーローテーション気味でしたが、この構成を完璧にこなしてみせました。この演技ができれば、彼女に敵う選手はいないでしょう。
私は最近、住吉選手の演技を見るたびに「未来の世界女王だ」と思います。今シーズンは演技をまとめることに苦戦していましたが、来シーズンも継続するEnchantressを完成させ、彼女の持つ圧倒的なポテンシャルを全て発揮できることを祈っています。

第3位

・氏名:坂本花織(日本)
・区分:女子シングル・フリースケーティング
・プログラム名:Elastic Heart
・ベスト演技:全日本選手権

「また、坂本花織は私の想像をはるか先に越えていった」と、THE ICEでこのプログラムを初めて見たときに感じました。

時を少し戻して、今シーズンのプログラムが”Elastic Heart”だと聞いた時に、この曲を競技プログラムで演技するのは難しいのではないか…との懸念がありました。プログラム展開を考えると、そのまま編集なしで楽曲を使用することはできない。それではどのように編集するのか?Siaの特徴的な声をどのようにフィギュアスケートで表現していくのか?確かに過去にSiaで滑ったスケーターは数名いるが、彼女の人気を鑑みると実際に滑ったスケーターはあまりにも少ない。そのことから、Siaはフィギュアスケートとは合わないのではないかと考えていました。しかし、冒頭に戻り、この懸念は私の杞憂であることを坂本花織は証明しました。

坂本選手の演じる”Elastic Heart”の優れた点は、「New花織」であり新しい坂本選手の良さを引き出した点、にもかかわらず彼女がずっと前からこの曲を滑っていたように思えるほど、彼女に非常に合っている点でしょう。

また、”Elastic Heart”の通常版を使用するのではなく、冒頭はピアノから入りバラードバージョンを使用しています。この点は坂本選手の良さを際立たせるのに非常に有用でした。彼女のキャラクターはTHE 関西人で、芸人のように感じることもあるくらいです。そのため、明るい楽曲が似合うように思われがちですが、実は憂いのある楽曲にスケートをのせて演技するのがとても似合います。

“Elastic Heart”(=しなやかで強い心)を持つ女性とは、まさに坂本選手のような人を言うのでしょう。

第2位

・氏名:ソフィア・アカチエワ(ロシア)
・区分:女子シングル・フリースケーティング
・プログラム名:Welcome to Earth,Arrival of the Birds
・ベスト演技:ロシア選手権

ダニイル・グレイヘンガウス、エテリ・トゥトベリーゼの史上最高傑作と称しても良いでしょう。

このプログラムは前半が”Welcome to Earth”というまだ見ぬ地球を探検するドキュメンタリー番組のサウンドトラックを使い、後半が以前アダム・リッポンさんがプログラムに使用していた”Arrival of the Birds”を使用しています。

別の機会で私なりのプログラム解釈を詳しく説明したいと思いますが、

①地球の生命誕生
②未知の森への探検
③宇宙人の地球への襲来

この3つが解釈できるなと思っています。

いずれにしてもキーワードは自然になるのではないかと考えていますが、アカチエワの弱点であった動きの固さが自然を表現するのに非常に合っているように思いました。後半に曲が変わるタイミングで動きに少し柔らかさを出して演じ分けていたのも見事でした。

アカチエワの弱点を逆手に取ってプログラム表現に落とし込んだ点、アカチエワのイメージを完全に覆すプログラムであった点、そしてこのプログラムの質が高く、アカチエワと非常に合っていた点、これらを考慮するとグレイヘンガウスの史上最高傑作と言わざるを得ないでしょう。

これもまた、別の機会に論じたいと思っていますが、このプログラムで使用されるマイムは、エテリ組が行っているマイムではなく、ブノワ・リショーのプログラムで見られるマイムが使われていることも特徴的でした。

ロシア選手権優勝が決まった瞬間、表情を変えず口元を抑えた姿がとても印象に残っています。

地球へようこそ、ソーニャ・アカチエワ

このプログラムの詳細はこちらの記事で考察しています👇

第1位

・氏名:三浦璃来・木原龍一組(日本)
・区分:ペア・フリースケーティング
・プログラム名: Two
・ベスト演技:全部ベスト!!!
このプログラムは“Two”が「今の」りくりゅうペアの関係性そのものではないかと思うんですよね。
“Two”の歌詞を見ても、「あなたが好きだ!」ではなく、相手を気遣う言葉ばかり。
キス&クライやインタビューでもお互いを気遣っているりくりゅうと重なりました。
歌詞もさることながら、曲の優しい雰囲気も非常に合っています。このプログラムは本当に幸福感がすごいです。会場で見ていると、大号泣しながら幸福感に包まれます(傍から見たらただの変人)。
プログラムの作りにも触れておくと、中盤のピアノ曲がすごく良いアクセントになりましたね。原曲にはなかったんですが、ここがないとプログラムがうまくしまりません。ベスト演技をこういう記載にしたのは、ミスやうまくいかなかったことも含めて、その時のりくりゅうであり、このプログラムの表現ではないかと思えるから。
人間関係が一番わからない。今日は同じ歩幅で歩けても、明日は違う方向を向いていることもある。
同じ歩幅で歩いていたとしても、今日と全く同じ関係性でいられることはおそらくない。
だからこそ、“Two”は今のりくりゅうでしか表現できない宝物のようなプログラムに思えて仕方がないのです。
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この記事を書いた人

ただのフィギュアスケートファン。フィギュアスケート現地観戦し始めて10年前後。現在も日本国内の大会・アイスショーに出没しています。
このブログでは現地観戦の感想、日々感じたことをのんびり書いています。

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