Hersh氏論考への反論

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はじめに

2023年12月5日に発表されたPhilip Hersh氏の論考では、ウクライナ侵攻に伴いロシア選手が国際競技大会への出場が認められていない現状について記されている。

同氏の指摘を端的にまとめると、とくに女子シングルにおいてロシア選手不在による影響が大きい。具体的には、試みた4回転ジャンプの回数減少、グランプリシリーズ優勝スコアの低下を指摘し、ロシア選手不在によって競技として後退しているのではないか?と述べている。(同氏の記事

今回の記事では、同氏の論考に対する反論を目的としています。

Hersh氏への反論

Hersh氏が指摘するとおり、4回転ジャンプの試行回数減少、グランプリシリーズ優勝スコアの低下は事実として存在する。

同氏の指摘は、女子ジュニアにおける4回転ジャンプの試行回数減少という観点で考えれば成立するだろう。

これら指摘は女子シニアになると当てはまらなくなると考える。

2023~24シーズンのロシアグランプリシリーズ 女子シニアにおいて、4回転ジャンプを試行した(プロトコルに残った)のは以下選手である。

ロシアグランプリシリーズ 4回転ジャンプ試行選手
  • アデリア・ペトロシアン
  • アリーナ・ゴルバチョワ
  • ダリア・サトコワ
  • カミラ・ワリエワ
  • マリア・パラモノワ

この人数だけ見れば、女子シニアにおいてもロシア選手不在によって、4回転ジャンプ試行が減っていると言えるかもしれない。しかし、重要な点は、これら選手のうち、国際大会においてもシニア年齢を満たすのは、アデリア・ペトロシアン、カミラ・ワリエワの2人だと言うことである。

それ以外の3人は、国際大会ではギリギリシニア年齢を満たさない。つまり、ロシア選手の不在は女子シニアにおける4回転ジャンプ試行回数の減少に影響を与えている一要因だが、主たる要因ではない。4回転ジャンプ試行回数の減少に影響を与えている主たる要因は、シニア年齢引き上げではないか?との仮説を設定する方が適切だと思われる。

異なる大会のスコアを比較することは適切でないし、ましてや国内大会と国際大会であればなおさらである。そのため、ロシアグランプリシリーズの優勝スコアとグランプリシリーズの優勝スコアを比較することはしない。しかし、シニア年齢引き上げがなければ、ジア・シン、中井亜美ら現在のジュニアトップ選手がシニアの国際大会に出場が可能だったことを考えると、ロシア選手の不在よりも、シニア年齢引き上げの方が影響が大きかったのではないか?と考える必要があるように思われる。

ロシア選手は国際大会に出場することができるのであれば、現在は試合に出場していない有力選手が試合に出場するのではないか、さらに仕上げてくるのではないかという指摘もありえる。そして、それら指摘は妥当性がある。しかし、これら「たられば」を言っても検証ができないため考慮はしない。

Hersh氏が指摘するとおり、ロシア選手の不在は女子シングルにおける4回転ジャンプの試行回数減少、グランプリシリーズ優勝スコアの低下の一要因ではあるが、シニア年齢引き上げの影響を過小評価していることに問題がある。これら複数の要因を整理して現状分析することが重要ではないか?というのが私の意見である。

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この記事を書いた人

ただのフィギュアスケートファン。フィギュアスケート現地観戦し始めて10年前後。現在も日本国内の大会・アイスショーに出没しています。
このブログでは現地観戦の感想、日々感じたことをのんびり書いています。

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