2024年フィギュアスケート国際競技会派遣選手団の考察

目次

世界選手権

男子シングル

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選考基準該当選手選出選手
1枠目全日本選手権優勝者宇野昌磨宇野昌磨
2枠目全日本選手権2位、3位鍵山優真、山本草太鍵山優真
GPF出場上位2名鍵山優真三浦佳生
SB上位3名鍵山優真三浦佳生、佐藤駿
3枠目2枠目の選考で漏れた選手山本草太、三浦佳生、佐藤駿三浦佳生
WS上位3名三浦佳生、友野一希、佐藤駿
SWR上位3名三浦佳生、佐藤駿、山本草太
総合得点平均上位3名佐藤駿、三浦佳生、友野一希
世界選手権(男子シングル)候補選手

1枠目は全日本選手権優勝の宇野選手が自動的に決定2枠目は全選考基準においてトップの成績である鍵山選手が文句なしで決まったでしょう。

議論となったのは3枠目。三浦佳生(5/6)、山本草太(2/6)、佐藤駿(4/6)、友野一希(1/6)が候補選手として残りました。まず、友野選手が候補から外れるでしょう。唯一基準を満たしているのは、総合得点平均上位3名のみであり、その基準内順位も3番手です。佐藤駿選手、山本草太選手については、複数基準を満たしていますが、基準内順位で三浦佳生選手を上回っている項目は両者ともに1項目のみ。それ以外はすべて三浦選手が基準内順位で上回っており、なおかつ満たしている基準数も多いです。これらを踏まえて、三浦佳生選手が3枠目として選出されたものと思われます。

日本スケート連盟の竹内強化部長は3枠目選考について、「競技力の高さ」という観点から三浦選手を選考したと説明しています。

補欠は3枠目を争った山本草太選手、佐藤駿選手、友野一希選手が入りました。

女子シングル

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選考基準該当選手選出選手
1枠目全日本選手権優勝者坂本花織坂本花織
2枠目全日本選手権2位、3位千葉百音千葉百音
GPF出場上位2名吉田陽菜、住吉りをん
SB上位3名吉田陽菜、渡辺倫果、松生理乃
3枠目2枠目の選考で漏れた選手吉田陽菜、住吉りをん、渡辺倫果、松生理乃吉田陽菜
WS上位3名三原舞依、渡辺倫果、吉田陽菜
SWR上位3名吉田陽菜、渡辺倫果、住吉りをん
総合得点平均上位3名吉田陽菜、住吉りをん、渡辺倫果
世界選手権(女子シングル)候補選手

1枠目は全日本選手権優勝の坂本選手が自動的に決定

2枠目は、千葉選手(1/3)、吉田選手(2/3)、住吉選手(1/3)、渡辺選手(1/3)、松生選手(1/3)が候補になりました。しかし、住吉選手、渡辺選手、松生選手は基準内順位で吉田選手に劣っているため、候補からは外れます。千葉選手と吉田選手の勝負となり、最終的には全日本選手権準優勝の千葉選手が2枠目となりました。

2枠目選考について、竹内強化部長は「全日本で競技力を示した」ため千葉選手を選考したと説明しています。

3枠目は、吉田選手(5/6)、住吉選手(3/6)、渡辺選手(4/6)、松生選手(1/6)、三原選手(1/6)が候補となりますが、WSを除いて全項目がトップの成績である吉田選手が3枠目となりました。

3枠目選考について、竹内強化部長は「得点の平均点など競技力が非常に高い」ため吉田選手を選考したと説明しています。吉田選手は総合得点平均点が203.57点と3枠目争いの選手の中で唯一200点を越えています。続くのが住吉選手の193.99点、渡辺選手の192.65点です。グランプリファイナル銅メダルではなく、この点が評価されての代表入りとなりました。

個人的には、2枠目で選考された千葉選手と3枠目で選考された吉田選手の順番は逆だと思っていたので意外でした。グランプリファイナル銅メダル、今シーズン全体の競技力の高さから吉田選手が2枠目に入り、全日本選手権銀メダルから吉田選手が3枠目という予想でした。男子シングルの昨シーズン、今シーズンの選考では、シーズン全体の競技力を重要視した選考をしていたため、女子シングルではやや異なる方法で選考しているような印象を受けました。

ペア

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選考基準該当ペア
全日本選手権優勝、2位、3位長岡柚奈 / 森口 澄士
WS最上位組三浦璃来 / 木原龍一
SB最上位組三浦璃来 / 木原龍一
世界選手権(ペア)候補選手

過去に世界選手権3位以内の選手として特例適用で三浦・木原組が1枠目に選出。2枠目に、全日本選手権優勝の長岡・森口組が入りました(同組はミニマムスコアの取得が条件)。ペアは3枠出場枠があり、尚且つ組数も少ないのでそこまで議論なく、この結論に落ち着いたものと思われます。

アイスダンス

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選考基準該当組
全日本選手権優勝、2位、3位小松原美里 / 小松原尊
田中梓沙 / 西山真瑚
吉田唄菜 / 森田真沙也  
WS最上位組小松原美里 / 小松原尊
SB最上位組小松原美里 / 小松原尊
世界選手権(アイスダンス)候補選手

アイスダンスは前代未聞の「保留」となりました。

選考基準に基づくと、小松原組が全項目でトップの成績であり順当に代表選出されるかと思いましたが、今回の全日本選手権で表彰台に上った3組の実力がかなり拮抗しているため、新しい選考方法が1月の理事会で提案されるということになりました。

確かに、選考基準にあるWS、SBはこれまで国際大会に出場経験が豊富な小松原組が有利であり、ペア結成1年目の田中・西山組、吉田・森田組は基準を満たすにやや不利となります。こうした事情を加味すると、現行の選考基準は今の日本のアイスダンスの現状に合っていない。特に全日本選手権で表彰台に上った3組の実力が拮抗していたので、より結果を残せる可能性があるペアを選出するために「保留」扱いにしたのだと思います。

個人的には、すでに決まっている基準をすべての選考会が終わってからひっくり返すことはいかがなものかと思います。田中・西山組、吉田・森田組の仕上がりの良さは早い段階からわかっていましたし、NHK杯も地元枠を使って両ペアを出場させることもできた。それをせずに「最終代表選考会」が終了してから、新たな選考方法を提案するというのは選手に対して不誠実でないかと。あまり後味が悪い結果にならないことを祈りたいところですが…。

各選手の競技力が拮抗しているなか、リズムダンス、フリーダンス、最終結果でトップだった組がそれぞれ異なるという結果になりました。選考委員会で議論を重ねたうえ、現状の選考基準では保留とし、1月24日の(連盟)理事会で新たな選考方法について提案・審議を行うことになりました。

ワールドフィギュアスケートWebより

四大陸選手権

男子シングル

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選考基準該当選手
全日本選手権10位以内宇野昌磨鍵山優真山本草太、三浦佳生、佐藤駿、友野一希、壷井達也、吉岡希、三宅星南、本田ルーカス剛史
WS上位6名宇野昌磨、三浦佳生、友野一希、佐藤駿、鍵山優真、山本草太
SWR上位6名鍵山優真、三浦佳生、宇野昌磨佐藤駿、山本草太、友野一希
SB上位6名宇野昌磨鍵山優真、三浦佳生、佐藤駿、友野一希、山本草太
総合得点平均上位6名宇野昌磨鍵山優真、佐藤駿、三浦佳生、友野一希、山本草太
四大陸選手権(男子シングル)候補選手

全日本選手権優勝の宇野選手は、世界選手権に選考された場合は、四大陸選手権に派遣希望しないとしていました。そのため、宇野選手は選考対象から外れています。

1枠目に、WS以外の全項目で選考基準内トップである鍵山選手が選考されます。世界選手権代表と四大陸選手権代表を完全に分けるということは、オリンピックシーズンで四大陸選手権とオリンピックの間隔が狭い時以外はほとんど行われません。今回のケースでも、鍵山選手は昨シーズン怪我による欠場の影響で国際大会には出場しておらず、世界ランキング、ワールドスタンディングを少しでも上げる必要があるという状況から選考したと竹内強化部長が説明しています。世界選手権で最善の結果を残すために、四大陸選手権に派遣するということですね。

2枠目に、世界選手権3枠目争いに惜しくも敗れた山本選手が選考されました。全日本選手権以外の選考基準では、山本選手を上回る選手が三浦選手、佐藤選手、友野選手(SWRを除く)といますが、ここでは全日本選手権で山本選手が示した競技力が評価されたものと思われます。

三浦選手は山本選手と世界選手権、四大陸選手権の代表を分け合う形となりました。三浦選手が四大陸選手権代表から外れた理由としては、今回の選考は非常に接戦であり、オリンピックに向けてそれぞれの選手を強化していくという観点から、四大陸選手権には三浦選手を派遣しなかったとしています。この辺りは三浦選手が昨シーズン四大陸選手権優勝というタイトル、ポイントを既に有しているという事情も大きかったと思います。鍵山選手と三浦選手の違いはここですね。

3枠目争いとなったのが、佐藤選手、友野選手となります。佐藤選手が選考基準におけるWS以外の全項目で友野選手を上回っており、3枠目に選考されました。

補欠に友野選手、壷井選手、吉岡選手が入りました。

女子シングル

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選考基準該当選手
全日本選手権10位以内坂本花織千葉百音 島田麻央上薗恋奈三原舞依、渡辺倫果、吉田陽菜 、山下真瑚、青木祐奈、住吉りをん  
WS上位6名坂本花織三原舞依、渡辺倫果、吉田陽菜、千葉百音、住吉りをん
SWR上位6名坂本花織、吉田陽菜、渡辺倫果、住吉りをん、千葉百音、松生理乃
SB上位6名坂本花織、吉田陽菜、渡辺倫果、松生理乃、住吉りをん、樋口新葉
総合得点平均上位6名坂本花織、吉田陽菜、住吉りをん、渡辺倫果、青木祐奈、樋口新葉
四大陸選手権(女子シングル)候補選手

全日本選手権優勝の坂本選手は、世界選手権に選考された場合は、四大陸選手権に派遣希望しないとしていました。そのため、坂本選手は選考対象から外れています。また、ジュニアの島田選手、上薗選手も同様に除外。山下選手はシニア年齢ですが、ミニマムスコア獲得が間に合わないため選考対象外となりました。残るメンバー千葉選手、三原選手、渡辺選手、吉田選手、青木選手、住吉選手、松生選手、樋口選手で3枠を争うことになりました。

1枠目に千葉選手、2枠目に三原選手、3枠目に渡辺選手、補欠は吉田選手、青木選手、住吉選手が入りました。

結果的に、対象外の選手を除外した上で全日本選手権の上位から選考したという感じになりましたね。

個人的には、世界選手権を見据えて千葉選手、吉田選手が派遣され、最後の1枠を三原選手、渡辺選手で争うことになるのではと思っていたのでやや意外でした。男子シングルの選考理由でも竹内強化部長が説明していた通り、多くの選手をチャンピオンシップに派遣したい、ただ直近で国際大会の経験が不足している世界選手権代表は四大陸選手権に出場させておきたいというところで、妥協点として1名のみ世界選手権代表と重複させたというところでしょうか。

ペア

四大陸選手権にペア代表は「国際的な競技力を考慮し総合的に判断して選考する」とされており、明確な基準は設定されていません。

選考されたのは、三原・木原組のみです。全日本選手権優勝の長岡・森口組はミニマムスコア取得が間に合わないため選考対象外となりました。

アイスダンス

四大陸選手権にアイスダンス代表は「国際的な競技力を考慮し総合的に判断して選考する」とされており、明確な基準は設定されていません。

全日本選手権の上位1~3位である小松原・小松原組、田中・西山組、吉田・森田組の3組が順当に選考されています。

世界ジュニア選手権

男子シングル

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選考基準該当選手選出選手
1枠目全日本ジュニア選手権優勝者中村俊介中村俊介
2枠目
3枠目
全日本ジュニア選手権2位、3位中田璃士周藤集中田璃士
垣内珀琉
JGPF出場中田璃士
全日本選手権上位3位中村俊介中田璃士垣内珀琉、蛯原大弥
SB上位3名中田璃士中村俊介、蛯原大弥、垣内珀琉
総合得点平均上位3名中田璃士中村俊介垣内珀琉、蛯原大弥
世界ジュニア選手権(男子シングル)候補選手

1枠目は、全日本ジュニア選手権優勝の中村選手が決定済み。

2枠目は、ジュニアグランプリファイナル金メダリストであり、中村選手を除くと全選考基準の基準内順位がトップである中田選手が順当に入ります。

3枠目は、周藤選手が全日本選手権公式練習中の怪我により、世界ジュニア選手権に間に合わないため選考外。垣内選手、蛯原選手での争いとなりますが、全日本選手権の成績から垣内選手が入りました。

補欠に、垣内選手、田内選手が入っています。

女子シングル

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選考基準該当選手選出選手
1枠目全日本ジュニア選手権優勝者島田麻央島田麻央
2枠目
3枠目
全日本ジュニア選手権2位、3位櫛田育良、上薗恋奈上薗恋奈
櫛田育良
全日本選手権上位3位島田麻央上薗恋奈、吉田陽菜、横井きな結
JGPF出場島田麻央、上薗恋奈
SB上位3名島田麻央、吉田陽菜、松生理乃、上薗恋奈
総合得点平均上位3名島田麻央、上薗恋奈、髙木謠、櫛田育良
世界ジュニア選手権(女子シングル)候補選手

おそらく、吉田選手は世界選手権代表入りにより、世界ジュニア選手権代表選考からは外れています。

1枠目は、全日本ジュニア選手権優勝の島田選手が決定済み。

2枠目は、シーズン通して島田選手に次ぐ成績を見せた上薗選手が順当に入りました。

3枠目はかなり判断が分かれたことでしょう。竹内強化部長も「非常に議論がなされた」と認めています。全日本ジュニア選手権の成績を重視するなら櫛田選手。しかし、全日本選手権ではショートプログラム落ちしています。全日本選手権の成績を重視するなら横井選手。しかし、国際大会での実績がありません。総合得点平均を重視するなら髙木選手。しかし、髙木選手も全日本選手権で23位と実力を発揮できませんでした。国際大会、全日本ジュニア選手権、全日本選手権と安定した成績を残したのは柴山選手。しかし、決定力にやや欠ける印象がありました。

最終的には、全日本ジュニア選手権2位の成績を評価して櫛田選手が3枠目として選考されました。補欠が髙木選手、柴山選手です。

ペア

世界ジュニア選手権ペア代表は「国際的な競技力を考慮し総合的に判断して選考する」とされており、明確な基準は設定されていません。

全日本ジュニア選手権出場も清水・本田組1組のみであり、ミニマムスコア取得が条件ではありますが、同組が順当に選考されています。

アイスダンス

世界ジュニア選手権アイスダンス代表は「国際的な競技力を考慮し総合的に判断して選考する」とされており、明確な基準は設定されていません。

全日本ジュニア選手権優勝の岸本・田村組が代表に選考、同2位の山下・永田組が補欠となりました。

選考基準運用の考察

世界選手権の代表選考について、選考基準自体は大きく変わっていませんが、運用方法が2022~23シーズンから変わってきたように感じています。

2021~22シーズンまでは、最終代表選考会である全日本選手権の成績を最重要視しているように見えました。しかし、2022~23シーズン以降、シーズン全体を通して高い競技力を示すことが出来ているかどうかが最も問われているように見えます。

グランプリシリーズで振るわなくても全日本選手権で表彰台に乗ればOKではなく、グランプリシリーズで結果を残した上で全日本選手権でも良い成績が求められているようです。どの試合でも結果を残さなければならないという厳しさがあります。しかし、逆に考えれば、グランプリシリーズで優れた成績を残し続ければ、全日本で少し外したとしても救済されるようになってきています。

こういった運用方法の変更を考える際に忘れてはならないのが、実際に選考を行う日本スケート連盟の中にも人がいるという点です。私たちは「日本スケート連盟」と、同連盟を1つの生命体のように考えがちです。しかし、同連盟による選手選考も、「強化部において候補を決定し、フィギュア委員会及び理事会、選考委員会の承認を経て確定する」とされており、多くの委員会が関わり、その中には委員会を運営するを行う「人」がいます。

人が変われば、運用も変わるということは当然のことです。これは完全なる推測ですが、北京オリンピックがあった2021~22シーズンが終了後、選考に関連する委員会の構成員が変わっているのではないでしょうか。過去の代表選考における状況、選考時に行われた議論、選考結果、競技会での成績と言った事項は引き継がれているでしょうが、それらを踏まえてより「競技力」が高い選手を選考するにはどうすべきか議論を重ねた結果として、現在の運用になったということでしょう。

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この記事を書いた人

ただのフィギュアスケートファン。フィギュアスケート現地観戦し始めて10年前後。現在も日本国内の大会・アイスショーに出没しています。
このブログでは現地観戦の感想、日々感じたことをのんびり書いています。

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