浅田真央アイスショーEverlasting33全プログラム鑑賞記①

2024年6月に15公演行われた浅田真央さんのアイスショー「Everlasting33」に行ってきました!!

現地で見てきた記憶をアーカイブ配信で補正しながら、全プログラムの感想をまとめてみました。今回は全2回のうち1回目です。

2回目はこちら

現地観戦記はこちら。

目次

全プログラム感想

Dance of Curse

「Everlasting33」の冒頭を飾るのは、アニメ「天空のエスカフローネ」より「Dance of Curse」。スケーター11人全員での群舞です。

ステージの幕が上がった瞬間、まず目を引くのは西洋彫刻のように美しく並んだスケーターたち。その衣装がまた素晴らしい!シルクのような生地に金色が施された衣装は、まるで美術館で展示されているかのようで見惚れてしまいました。ぜひとも衣装展を開催してほしいところです。

今回のリンクは劇場型ということもあり、通常のリンクの半分以下しかないんですよ。現地で見て一番驚いたのがリンクの小ささでした。それにもかかわらず、全11人のスケーターが登場し、スピード感を失わずに演技しているのが驚異的でした。舞台や劇場にないスケートの大きな魅力が、リンクを滑るスピード感、そしてジャンプ等の要素による迫力感だと考えています。舞台や劇場の良さとスケートの良さを良いとこ取りしたような演技でした。

過去2作品「浅田真央サンクスツアー」や「BEYOND」は、華やかな楽曲で観客を引き込むスタートでしたが、それらとは一線を画す荘厳な楽曲でスタートしているのが印象的でした。もちろん観客を楽しませるという気持ちもあるんでしょうが、それだけでなくこれまで以上に演技の世界観に引き込みたいというアイスショーの方向性が感じられました。

アルビノーニのアダージョ

2曲目は「アルビノーニのアダージョ」。年長組3人(浅田真央さん、柴田嶺さん、田村岳斗さん)による演技で、まさに酸いも甘いも知っている大人の魅力が溢れていました。

振り付けを担当したSeishiro先生によると、このプログラムのテーマは「愛」だそうです。しかし、一見するといわゆるハッピーな恋愛を演じているようには全く見えません。もっと言えば、演技からは人間味を感じることができませんでした。むしろ、「愛」の苦しみや悲しみといった、ハッピーではない感情が具現化されて漂っているように感じました。こうした意味での「愛」の表現と考えれば納得できます。

ところで、この3人は前作「BEYOND」でロートバルト、オディール、王子を演じたメンバーです。「BEYOND」の延長戦で、白鳥の湖のキャラクターたちの「愛」の苦しみや悲しみの感情を表現しているのかな?と思いながら観ていました。重厚感のあるメロディーに合わせた演技で、深みのある動きがとても印象的でした。

眠れる森の美女

続いて、「眠れる森の美女」ここから前半はバレエ演目のオンパレードとなります。年長組に続いて若手組の登場で、一気にステージが華やかな印象に変わります。群舞を経て最初のソロ演技へ。

真央さんの過去作「浅田真央サンクスツアー」、「BEYOND」と大きく異なるのが、真央さん以外の出演スケーター個人にもスポットライトが大きく当たるようになっていること。全出演スケーターにソロ演技があります。

ソロ演技のトップバッターは小山渚紗さんの「オーロラ姫」。「BEYOND」でも思ったけど、彼女の背中から肩、手にかけての使い方が本当に美しい!華がある華麗な演技を見せてくれました。優雅さと気品に満ちていて、まさにおとぎ話のプリンセスのようで、彼女がリンクを滑るたびに、舞台が一気に明るくなるような感覚がありました。

コッペリア

「コッペリア」は今原実丘さんのソロ演技。

お花が入ったバスケットを持っての演技で、無邪気で楽しげな雰囲気が感じられます。彼女のキャラクターがよく表現されたプログラムでした。コッペリアの世界観と今原さんの雰囲気の親和性がとても高い。動きは軽やかで、見ていて自然と笑顔になってしまうような演技でした。

特に印象的だったのは、彼女の柔らかい表情と繊細な手の動きです。プログラム全体を通じて華やかな雰囲気があり、私だけでなく全観客が引き込まれていました。

薔薇の精

マルティネス・エルニストさん、通称エルニのソロ演技は「薔薇の精」。

彼の芸術性の高さには驚かされます。薔薇の精から闘牛士にまで完璧になりきれるんですから。本当に薔薇の精のような優雅な動きで、ジャンプも3回転サルコウを戻してきていて驚かされました。

繊細かつしなやかな動きは本当に美しく、おそらく男性でこのプログラムを演じきれるスケーターは彼の他にいないでしょう。そして今回の「Everlasting33」のキーワードの1つでもある「薔薇」を表現するというこのプログラムは「Everlasting33」に決して欠かせないプログラムとなりました。

エスメラルダ

小林レオニー百音さんのソロ演技は「エスメラルダ」

「BEYOND」のカルメンでも感じたことですが、こういう強くて妖しい曲調を表現させたらレオニーさんの右に出る者はいないですね。タンバリンの音がいいアクセントになっていて、最後の不敵な笑みには鳥肌が立ちました。パワーが際立っていて、圧倒されるような演技でした。

海外でのアイスショーが決まっていたにもかかわらず、「Everlasting33」に出演するために日本に帰ってきてくれたレオニーさん。彼女の演技をこうして再び見ることが出来て本当に嬉しかったです。

海賊

今回の「Everlasting33」で最も攻めた衣装だったで賞こと、「海賊」は山本恭廉さんのソロ演技。

上半身裸に布を巻きつけたようなかなり攻めた衣装です。しかし、上半身を露出することで彼の筋肉の美しさが際立っていました。筋肉も含めて「海賊」の衣装だったんでしょう。

素晴らしいのは衣装だけではなく、演技も同じです。山本さんの「海賊」は、軽やかなのに雄大で力強さがあるという本来同居しないであろう魅力が同居していました。彼はフィギュアスケーターではなく、バレエダンサーになっていても成功していたでしょう。まるでバレエの舞台をそのまま氷上に再現したかのようです。演技が終わると同時に一際大きな拍手喝采が巻き起こりました。

ジゼル

今井遥さんのソロ演技は「ジゼル」。

今井遥×ジゼルなんて似合わないはずがありません。さすがにジゼルは現役時代にもやっていましたね。やっていなかったら、訴えるところでした(何を?)。

今井さんも30歳になりましたが、儚げな美少女の名を欲しいままにしてきた彼女にジゼルはぴったりです。可憐な演技にジゼルの世界観に引き込まれました。そして、彼女のもう1つの魅力である爆走スケートはこの狭いリンクでも健在でした。ただでさえリンクが小さく、ステージから落ちるとそこはオーケストラ。怖くないのか?と思いますが、この度胸もまた彼女の魅力でしょう。まさに女子の三浦佳生。

ドン・キホーテ

中村優さんと松田悠良さんのペア演技は「ドン・キホーテ」。中村さん、松田さんとソロ演技をした後、ペア演技となります。

現役時代からの活躍をよく知る2人ですが、スケーターとしての成長が見える素晴らしいパフォーマンスでした。中村さんはクールな印象が強かったですが、一段と磨かれたかっこよさを見せ、松田さんの演技からは彼女の自信とスケートを演じる楽しさが感じられます。松田さんの扇子使いの上手さに見惚れていました。

2人ともジャンパーなので、ドン・キホーテの音楽に合わせたジャンプでプログラムが全体的に締まります。やはり、ジャンプはプログラムの良さを際立たせる最高の飾りなんですよ。おそらく、「Everlasting33」で最もジャンプが跳ばれるプログラムではないでしょうか?

タイスの瞑想曲

浅田真央さんと柴田嶺さんのペア演技は「タイスの瞑想曲」。またの名を「恐怖の瞑想曲」。これを言うのは私だけですが。

なぜ「恐怖の瞑想曲」なのか?それは今回、劇場型ということで使用されたエアリアルの影響です。何かあったらどうしようと心臓が持ちません。

演技冒頭、暗闇から朧気に照らされた照明が映し出すのはエアリアルに乗った浅田さんと柴田さん、高さ4~5mの高さから演技開始となります。あえて劇場でアイスショーを行うことの意味がここにあります(ありまぁす!)。

エアリアルに吊るされた布の美しさも相まって、この世のものとは思えない神秘的な美しさでした。冒頭に天から舞い降りて、そして最後に天に浮かび上がっていく姿はまるで天使のように見えました。

「BEYOND」で「真央ちゃんをリフトするということは国の宝をリフトすること」と言っていた柴田さん、「国の宝」を自分の腕の力だけで地上4mまで命綱なしで持ち上げることになりましたが、一体何を思っていたのかどこかで語ってほしいところです。

ウェストサイドストーリー

ここでアイスショーの印象がガラッと変わります。若手組で演じる群舞のウェストサイドストーリー。まるでミュージカルをスケートリンクで見ているような感覚がありました。

群舞と一言で言っても、個の良さを活かした群舞、個としての存在感を敢えて消して集団としてのまとまりの良さを活かす群舞の2つがあります。今回の「Everlasting33」では、意図的に個を消した後者の群舞を意識していたと先日のインスタライブで語られていました。ウェストサイドストーリーは今回唯一の個の良さを活かした群舞でした。「このスケーターらしいよね!」といった雰囲気、振り付けで構成されていました。「敢えて合わせていない」ことがわかる演技でとても良かったです。

中村さん、松田さんがくっつきそうなのを仲間たちが邪魔するようなプログラムとのことですが、このペアはドン・キホーテでも一緒でしたよね??何か意図があるんですか??

トップハット

続くのは、真央さんとゲストダンサーであるHideboH先生のタップダンスでのコラボ!アリーナ席1階に登場した2人がタップダンスを披露しました。

真央さんのプロ意識が光るパフォーマンスで、プロのHideboH先生との息の合ったタップダンスに魅了されました。本業のフィギュアスケートを高いレベルで保ちつつ、全く新しいジャンルとしてタップダンスを会場で披露できるレベルまで仕上げてくるのは本当にさすがとしか言いようがありません。

Fly me to the moon

HideboH先生のタップダンスでのソロ演技です。

最高峰のタップダンス技術にひたすら痺れていました。タップダンスの音の表現、ダンスの表現いずれも最高で、視覚聴覚の両方で楽しめました。Fly me to the moonは曲としてもすごく好きなんですが、この曲が持つ少し抜けていて、それでいて悲しげな雰囲気を見事にタップダンスで表現されていました。

全くスケート要素はなかったんですが、アイスショーの中盤で全くスケートに関わりのないタップダンスを挟むことで良いアクセントになりましたし、観客席の目の前で演技してくれるので、最高の技術を目の前で見ることが出来ます。私は今回残念ながら遠くからタップダンスを眺めることになりましたが、次があればぜひ目の前でHideboH先生のタップダンスを堪能したいです。

Rock Around the Clock

再び真央さんとHideboH先生のタップダンスでのコラボ。

お立ち台を滑らせてリンクの中に二人を連れていき、スケートとタップダンスのコラボレーションは新鮮でした。スケートとタップダンスって合うんですね。新しい発見でした。そして、サポートの女性メンバーの衣装も最高にかわいかったです。やはり衣装展をですね…。

雨に唄えば

エルニと山本さんのペア演技。

それぞれ赤と青のレインコートを身に纏って黄色い傘を持っての演技は、まるで舞台ミュージカルを見ているようでした。雨の中、はしゃぎながら歌いながらのような演技。「Everlasting33」は、前半こそバレエでしたが、中盤はミュージカルなんですよね。爽やかで楽しい演技に引き付けられました。

「Everlasting33」きっての演技派スケーターである2人。演目もさることながら、ここでこの2人充てるも絶妙で素晴らしかったです。

キャバレー

若手女性陣4人での演技は「キャバレー」。

本来、大人っぽい演技ということになるんでしょうが、大人っぽいというよりは、かわいくて清潔感がある色気が感じられました。これがこの4人の「キャバレー」の一番の魅力でしょうね。タイムラインでは、「こんなキャバレーなら毎日通いたい!」との声が多数寄せられました。開店希望します。

ゴッドファーザー

田村岳斗さんのソロ演技は「ゴッドファーザー」。

このチームのスケーターでは最年長なので、ある意味本当にゴッドファーザーみたいなもんでしょうか。キャバレーが終わる直前にステージ端に座っていて、このキャバレーのオーナーなんですか??と思いながら見ていました。演出といい、この流れでゴッドファーザーを演じてギャグっぽくならないのは、彼くらいでしょう。彼の渋さと風格が際立っていて、まさにゴッドファーザーの世界観がぴったり合っています。

彼の存在が「Everlasting33」の良いアクセントになっています。カレーの隠し味にチョコレートを入れる感覚に近いです。「カレーにチョコ!?」と思うんですが、入れてみると意外とおいしくなるんですよ。前作「BEYOND」で田村さんが出演スケーターとして発表された時はどんなアイスショーになるんだと思いましたが、今では彼がいない「BEYOND」・「Everlasting33」は考えられないくらいほどです。

Kiss the rain

浅田真央さんのソロ演技派「Kiss the rain」。

今はもう会うことができない大切な人への想いを込めたプログラム。余談ですが、彼女が現役引退を決めて作ったエキシビションプログラムである「愛は翼に乗って」以来の彼女個人での新プログラムでしょうか。2017年以来、7年ぶりの新プログラムです。長かった。

優しいピアノの音色、そして背景に映る天国への階段に見立てた映像を見て、このプログラムが今は亡き彼女の母・匡子さんを想ったプログラムであることを即座に理解しました。

田村さんが最後に落としていった薔薇を持って演技する真央さん、匡子さんも好きだったという薔薇を贈るそんなプログラムでした。「Everlasting33」のテーマでもある「永遠の愛」を母・匡子さんに向けて滑る姿に、私だけでなく多くの観客が涙していました。

以前、真央さんがInstagramで今後滑ってほしい曲のアンケートをしていましたが、そのアンケートで2票だけ入っていた曲がこの「Kiss the rain」とのこと。本当にアンケートで投票された曲をすべて聞いて選んだんですね。その2票を投じた人がいたからこそ、このプログラムに私たちも出会うことが出来ました。心からありがとうございます。

死の舞踏

若手組7人での演技。

1つ前の「Kiss the rain」で故人への「永遠の愛」を表現したの後に、なんで「死の舞踏」やねん。と言いたくなるような流れですが、そんな気持ちも「死の舞踏」の演技を観ているうちに失せてしまいます。なぜなら、「死の舞踏」がにわかに信じられないくらい素晴らしいプログラムだからです。今回の「Everlasting33」で1つお気に入りのプログラムを選ぶとしたら、私は迷わずこの「死の舞踏」を選びます。

やはりと言うか、振り付けはSeishiro先生です。「死の舞踏」は私の中の群舞のイメージを完全に覆してくれました。群舞と言えば、全スケーターが乱れることなく同じ動きを行い、その一体感を表現しているというイメージを長年持っていました。一方で「死の舞踏」では、全く同じ動きを行う箇所もありますが、「敢えて外して」異なる動きをしている箇所が多く見られます。一体感を表現するために全員が同じ動きをする必要は全くなく、リンク上にいる全員を俯瞰して見て一体感が出ていればそれで問題ないという新しい発見でした。

そして振り付けそのものも非常に興味深いです。普通の振付師であれば動きを入れたくなる箇所で敢えて止まる、動きを少なくすることで、「死の舞踏」に合う良い意味での気持ち悪さが感じられます。また、集合して、バラバラになって、集合して…と繰り返すさまは、ゲームのボスキャラで小さいコウモリが集まって巨大なコウモリに変身する様子のように感じました。ものすごくわかりやすく説明すると、複数のスライムが集まってキングスライムになって、また分かれてスライムに戻ってを繰り返しているような感じです。1つの生命体が現れてバラバラになり、また1つに戻り…を繰り返します。

この神プログラムをここでお蔵入りにするのは非常に勿体ないです。「死の舞踏」のマスターピースとも言うべきこのプログラムは、またどこかで再演されることを切に願います。

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この記事を書いた人

ただのフィギュアスケートファン。フィギュアスケート現地観戦し始めて10年前後。現在も日本国内の大会・アイスショーに出没しています。
このブログでは現地観戦の感想、日々感じたことをのんびり書いています。

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