浅田真央アイスショーBEYOND紹介④【演目】

目次

はじめに

この記事では、浅田真央さんが座長を務めるアイスショーBEYONDの演目紹介を行います。

BEYONDでは15個のプログラムを演じるため、3回に分けて演目紹介を行っています。今回は2回目の6~10個目のプログラムです。

演目紹介

6.シェヘラザード(2011~12SP)

出演スケーター:浅田、柴田

前半のハイライト。

Say Hey KidとPick Yourself Upのムーディーな雰囲気が終わり「あれ、次のプログラムは?」と思ったタイミングで暗闇の中から光を浴びて浅田真央が登場します。リンク内大型モニターではなく、観客席よりの端から登場するため、「そっちか!」と不意を打たれたような気持ちになります。

リンク端から登場するため、座っている席によっては何が起きているかわからない状況になってしまうのが残念ですが、先日観戦した名古屋公演では浅田真央登場シーンを見ることができない座席だった代わりに、浅田真央が登場する影を見ることができました。曲調と相まってとても神秘的な雰囲気が印象に残っています。

このプログラムはシェヘラザード、千夜一夜物語のバレエ演目「ゾベイダと金の奴隷の踊り」を、氷上で浅田真央さん、柴田嶺さんの2人が再現するものです。気になった方は調べて見ていただきたいのですが、衣装は完全に再現されたものになっていますし、所々印象的な振り付けはバレエから持ってきて採用したものであることがわかります。

「ゾベイダと金の奴隷の踊り」は、シャハリヤール王が狩りに出るため城を留守にすることになり、浅田さん演じる王の寵姫ゾベイダ達は男奴隷を開放します。そして、ゾベイダは柴田さん演じる金の奴隷の逢瀬を重ねることになります。

つまり、浅田さんと柴田さんで演じるのは、王不在のひと時に重ねた身分違いの恋です。このプログラムはあくまでも浅田さん演じるゾベイダが主導となって演技を行っているのはそのためだと思われます。王の寵姫と単なる奴隷、身分が最上位と最下層くらい違うので、どうしても柴田さん演じる金の奴隷は少し遠慮がちになりますし、浅田さん演じるゾベイダが少し偉そう(?)なのも実際彼女が身分が高い女性であるからこそではないでしょうか。

バレエ演目時の官能的な雰囲気を残しつつも、健康的な官能さが感じられます。この点がバレエ演目との一番の違いでしょうか。加えて、氷上だからできるステップシークエンスの迫力がすごいです。

プログラムの良さはさることながら、バレエ演目を氷上で再現するという点においても、浅田・柴田ペアのシェヘラザードは日本の過去のアイスショーでも例を見ない類い稀なるプログラムであるといえるでしょう。

ちなみに、浅田・柴田組のプログラムでは、ゾベイダと金の奴隷の逢瀬のみの表現で終わりましたが、この後の「ゾベイダと金の奴隷の踊り」ストーリーとしては、悲劇的な結末となります。

王の留守は実は、不貞を疑ってあえて城を開けて調査を行ったというもの。現代でもよくありますよね(あってたまるか)。夫もしくは妻の不貞を疑って仕事に行くと伝えておきながら実は有給を取っており、自らが不在の間一体何をしているのか?を調査する、ということでしょう。

そして、これまた現代でも同じ(?)ように、ゾベイダも不貞を働いていたというわけです。王は怒り「金の奴隷」を含む男奴隷を皆殺しにとするが、ショックを受けたゾベイダも短剣で自らの命を絶ちました。

7.カルメン(2005~6SP、2006~7EX)

出演スケーター:小林、今原、山本、中村、エルニ、小山、今井

BEYONDキャストの7人で演技する演目となりますが、それぞれに合ったカルメンの曲が割り当てられています。

トップバッターである小林レオニーさんの大迫力・圧のある序曲。黒い衣装がとても似合う。立川千秋楽公演では最後吠えてたのかな?すごく気合が入っているのを感じました。

今原さんは茶目っ気あるアラゴネーズ。私は【強い→弱い】の連続が好きなので、決めポーズの強い動き、少し力を抜いた動きの流れがお気に入りです。

山本くん、中村くん、エルニの3人で演じる闘牛士。立川千秋楽公演では、残念ながら中村くんは怪我の影響でここには出てきませんでした…。が、山本くん、エルニで見事のカバー!

山本くん、中村くんが最初ソロで演技する際に手を叩くんですが、その音が聞こえるのがとても好きです。「あ、私は今キャストが音を発した時に聞こえるくらい近くにいるんだ」と思えるからです。ちなみに、結構大きめの会場、東和薬品RACTABドームで観戦していたときのこの音は聞こえてきました。おそらく、彼らもこの音を届けるべく意識していたのでしょう。

小山さんの誘惑するかのようなハバネラ。彼女はBEYONDを通して最もファンが増えたスケーターの一人ではないでしょうか?彼女の上半身の動きの柔らかいこと柔らかいこと、とても素晴らしい演技でした。浅田真央さんに「新しいジャンルに挑戦したら?」と言われて、ハバネラを演技することになったそうな。その助言は大当たりだったでしょう。彼女の新しい表現を開きました。

今井さんはタンバリンを持った可憐なジプシーソング。私の中では、今井さんにタンバリンを持たせた人には国民栄誉賞を贈るべきだという話でもちきりです。彼女はこういったチャーミングで可憐で少しいたずらっ子のような雰囲気が非常によく似合います。

今井さんの演技でもタンバリンの音が聞こえると、先の手を叩く音が聞こえるのと同じように毎回うれしくなっていました。

次々と曲が変わり、演技者が変わり、まるでカルメンの玉手箱(?)。フィギュアスケートになじみのない方でも、「この曲聞いたことある!」と思う曲が1曲はあるのではと思います。

ちなみに、浅田さんがそれぞれ似合うと思ったカルメンの楽曲を選んだとかなんとか。楽曲選定が完璧すぎます。彼女が最も持っていた才能は、もしかするとフィギュアスケートを演技する才能ではなく、プロデュース能力なのかもしれません。

8.バラード第一番(2010~11EX)

出演スケーター:浅田

浅田真央座長がかつての自らのエキシビションナンバーを再現します。BEYOND公演スタートしたばかりの頃は最後のポーズがかつて演技していた頃と同じ、手を前に広げるポーズ(いわゆるすしざんまいポーズ)でしたが、途中からは頭を抱えるようなポーズへと変わっています。

このプログラムはかつて演技していた頃、「バレリーナが1人で練習している」姿を表現していると言っていた記憶があります。転じて、今回このプログラムで表現するテーマは「孤独」だと浅田真央さんは話しています。最後のポーズ変更は、「孤独」というテーマをより表現するために変更したのでは?と考えています。

「孤独」と聞くと負のイメージが付きまといますが、このプログラムでは「1人っきり」というより、「自分自身と向き合っている」という印象を受けます。他のプログラムとは違い、バラード第一番では観客を見ていないのです。観客席の方向を見ていたとしても、それは鏡に映る自らの姿を見ているだけで、観客席を見ているわけではない。

浅田真央が1人黙々とフィギュアスケートに向き合い、練習する姿をこっそり窓から覗き込んで見ているような気持ちになるのです。彼女もあくまでも自分だけだと思っているから、観客席に過剰なアピールをするわけでもなくただただ自分自身と向き合っているように感じます。

ちなみに、このプログラムの最後のステップは、ラフマニノフの鐘のステップと同じです。鐘を滑った翌シーズンのエキシビションとして披露したバラード第一番において、全く同じステップを曲調に合わせて演じ分けるということをいとも簡単に行ってしまいました。

9.幻想即興曲(2007~8FS)

出演スケーター:全員

私は、BEYONDの演目の中で一番好きなプログラムです。

冒頭はPerfumeのような雰囲気の映像から始まります。全く異なるペース、動きで場内の大型モニターが白い光で縁取られていく。この映像もお気に入りです。

このプログラムはSeishiro氏に振り付けを依頼したとのこと。彼はダンスの振付師である一方、氷上での振り付けは経験がないとのことでしたが、彼の起用は大成功だったといえるでしょう。今までのフィギュアスケートのプログラムでは全く見られないような独創的なプログラムとなりました。

幻想即興曲は、全キャストメンバーによる演技となります。一番好きな点はスケート靴がリンクの氷を削る音までも表現に落とし込んでいる点です。ターンを描いて「しゅっ」と響く音を含めてこのプログラムとなっています。また、メンバー全員が動きを揃える振り付け、あえて振り付けを揃えない振り付けのコントラストが素晴らしいです。

このプログラムで表現しているものは「無機物」でないか?と私は常々思っていました。生命体らしさが全く感じられず、色々な物質をすべて除いていた結果残ったものなのではないか?と。一方で、浅田さんはこのプログラムで表現しているテーマを「愛」だと語り、邪念を除いた真っ白の世界ー天上界ーで演技していると話していました。

後半部分については、私のイメージしていた通りだったんですが、「愛」という点についてはあまりイメージができていませんでした。不要なもの、邪念をすべて取り除いていた結果、最後に残ったものが「愛」だったということでしょうか。

10.タンゴ byシュニトケ(2010~11SP)

出演スケーター:エルニ、中村、山本、田村

今までなかったことにされてきたシュニトケタンゴがついに思い出されたという点だけでも感動的。浅田さんのコメントからしても、あまり良い印象は持っていなかったような感じですね。彼女が現役時代にこのプログラムを滑っていたときは、そもそも曲が規定時間をオーバーしており、早送りして時間内に収めたという経緯がありました(今となっては信じられない!と言われそうな本当の出来事)。

結果として、シュニトケタンゴが持つ重厚感の表現よりも、曲に遅れないように動くことに注力してしまい、せかせかした印象のみが残ってしまいました。そのシュニトケタンゴが男性メンバー4人のメドレー形式でつなぐプログラムへと生まれ変わりました。

このプログラムで最も良い表現をしていると私が感じるのは中村優さんです。彼はクールで表に感情を出さない印象がありますが、内に秘めた強い思いを感じる表現が曲の持つ暗さや重厚感と非常にあっています。

浅田真央さんへ。これでシュニトケタンゴへの負のイメージがなくなったと思うので、もう一度このプログラムを演じて完成させてください。シュニトケタンゴは今の彼女であれば、完璧に演じきれると思います。(もともと早送りが原因だっただけで、当時も十分素晴らしいプログラムでしたし。)

おわりに

今回はBEYONDの演目紹介+感想の第二弾でした。BEYONDの関係記事はこちらです👇

★BEYONDがどんなアイスショーなのか解説しています。

 ★BEYONDの演目について解説しています

★BEYONDがなぜ成功したのか考察を行っています。

★立川千秋楽公演の現地観戦記録です。

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この記事を書いた人

ただのフィギュアスケートファン。フィギュアスケート現地観戦し始めて10年前後。現在も日本国内の大会・アイスショーに出没しています。
このブログでは現地観戦の感想、日々感じたことをのんびり書いています。

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