2023年全日本選手権観戦記、第2段は過去にないくらい高いレベルでの争いになったペアとアイスダンスです。
アイスダンスは、かなだい(村元・高橋組)の引退により、チームココ(小松原・小松原組)の一強時代かと思われましたが、うたまさ(吉田・森田組)とあずしん(田中・西山組)の今シーズン新規結成した若手ペアが勢いを見せました。
かつて、うたしん(吉田・西山組)としてペアを組んでいた経験があり、2020年のユースオリンピック出場の実績もある2人。解散後、新しいパートナーとの組み合わせで台頭してきました。日本アイスダンスはココ、うたまさ、あずしんの三強時代に突入しつつあります。
ペアは、今シーズン新規結成したゆなすみ(長岡・森口組)のみの出場。怪我の影響でりくりゅう(三浦・木原組)の出場は叶いませんでしたが、ゆなすみはペア結成直後にかかわらず、これから世界で活躍するペアになるのではないか…というワクワク感を持たせてくれるような素晴らしい演技でした。
大会結果
アイスダンス・総合結果
PL | 選手名 | 所属 | RD | FD | Points |
---|---|---|---|---|---|
1 | 小松原美里 小松原尊 | 倉敷FSC 倉敷FSC | 2 | 2 | 178.39 |
2 | 田中梓沙 西山真瑚 | オリエンタルバイオ オリエンタルバイオ | 1 | 3 | 176.43 |
3 | 吉田唄菜 森田真沙也 | 木下アカデミー 木下アカデミー | 3 | 1 | 173.17 |
4 | 佐々木彩乃 池田喜充 | 日本大学 西武東伏見FSC | 4 | 4 | 129.40 |
5 | 木下あかり 田村周彦 | 慶應義塾大学 三田スケートクラブ | 5 | 5 | 124.86 |
6 | 国村柚里 坂部魁士 | 臨海フィギュアSC 大阪経済大学 | 6 | 6 | 107.08 |
アイスダンス・リズムダンス
PL. | 選手名 | 所属 | TSS | TES | PCS | CO | PR | SK | Deduction | StN. |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 田中梓沙 西山真瑚 | オリエンタルバイオ オリエンタルバイオ | 71.08 | 41.14 | 29.94 | 7.61 | 7.61 | 7.29 | 0.00 | #3 |
2 | 小松原美里 小松原尊 | 倉敷FSC 倉敷FSC | 70.89 | 40.97 | 29.92 | 7.57 | 7.68 | 7.25 | 0.00 | #2 |
3 | 吉田唄菜 森田真沙也 | 木下アカデミー 木下アカデミー | 64.00 | 35.06 | 29.94 | 7.54 | 7.54 | 7.43 | 1.00 | #5 |
4 | 佐々木彩 池田喜充 | 日本大学 西武東伏見FSC | 51.47 | 29.62 | 21.85 | 5.57 | 5.43 | 5.43 | 0.00 | #4 |
5 | 木下あか 田村周彦 | 慶應義塾大学 三田スケートクラブ | 47.30 | 27.82 | 19.48 | 5.04 | 5.07 | 4.54 | 0.00 | #6 |
6 | 国村柚里 坂部魁士 | 臨海フィギュアSC 大阪経済大学 | 40.71 | 23.14 | 17.57 | 4.43 | 4.39 | 4.39 | 0.00 | #1 |
アイスダンス・フリーダンス
PL. | 選手名 | 所属 | TSS | TES | PCS | CO | PR | SK | Deduction | StN. |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 吉田唄菜 森田真沙也 | 木下アカデミ 木下アカデミー | 109.17 | 63.03 | 46.14 | 7.71 | 7.75 | 7.61 | 0.00 | #4 |
2 | 小松原美里 小松原尊 | 倉敷FSC 倉敷FSC | 107.50 | 62.44 | 45.06 | 7.50 | 7.71 | 7.32 | 0.00 | #5 |
3 | 田中梓沙 西山真瑚 | オリエンタルバイオ オリエンタルバイオ | 105.35 | 58.77 | 46.58 | 7.82 | 7.79 | 7.68 | 0.00 | #6 |
4 | 佐々木彩乃 池田喜充 | 日本大学 西武東伏見FSC | 77.93 | 44.35 | 34.58 | 5.79 | 5.75 | 5.75 | 1.00 | #3 |
5 | 木下あかり 田村周彦 | 慶應義塾大学 三田スケートクラブ | 77.56 | 47.62 | 29.94 | 5.18 | 5.04 | 4.75 | 0.00 | #2 |
6 | 国村柚里 坂部魁士 | 臨海フィギュアSC 大阪経済大学 | 66.37 | 40.21 | 26.16 | 4.36 | 4.36 | 4.36 | 0.00 | #1 |
ペア・総合結果
PL | 選手名 | 所属 | SP | FS | Points |
---|---|---|---|---|---|
1 | 長岡柚奈 森口澄士 | 木下アカデミー 木下アカデミー | 1 | 1 | 173.64 |
ペア・ショートプログラム
PL. | 選手名 | 所属 | TSS | TES | PCS | CO | PR | SK | Deduction | StN. |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 長岡柚奈 森口澄士 | 木下アカデミー 木下アカデミー | 56.07 | 31.16 | 24.91 | 6.29 | 6.11 | 6.32 | 0.00 | #1 |
ペア・フリースケーティング
PL. | 選手名 | 所属 | TSS | TES | PCS | CO | PR | SK | Deduction | StN. |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 長岡柚 森口澄士 | 木下アカデミー 木下アカデミー | 117.57 | 65.31 | 52.26 | 6.50 | 6.43 | 6.64 | 0.00 | #1 |
感想
小松原/小松原組
チームココは、リズムダンス、フリーダンス共に2位に終わりながらも、総合で1位に輝きました。スコアだけを見ると若手に劣っているように見えますが、演技はまさにベテランの安定感。見ていて心から安心できる演技でした。
今シーズンは、全日本選手権の予選会でうたまさ、あずしんペアに後れを取るなど悔しい結果もありましたが、日本のアイスダンスを10年近く引っ張ってきたプライドが見える良い演技でした。
世界選手権の代表枠は1枠。従来の選考基準に則れば代表入りは確実化と思われましたが、ここにきて選考基準がひっくり返されています。動揺することなく、2人が目標とする演技ができることを祈っています。
田中/西山組
あずしんは、リズムダンスでマリオ、フリーダンスでジゼルという全く異なる世界観を見事に表現。リズムダンス1位、フリーダンス3位で総合2位に。特にフリーダンスのPCSで1位となったのは驚かされました。フリーダンスの演技直後は、「これ逃げ切り優勝では…」という会場のざわめきもありました。
田中選手がシングルからアイスダンスに転向した今シーズン、その適応力と能力の高さには目を見張るものがありました。シングル時代から上手すぎたので、ある程度予想はしていましたが、ここまでとは…。
田中選手がメダリストオンアイスの練習で手を怪我してしまったのが心配です。手術も上手くいって、四大陸選手権に向けて早く良くなってほしいと思います。
吉田/森田組
うたまさは、リズムダンスでのツイズル中に転倒して3位スタート。しかし、フリーダンスでは不死鳥をテーマにした圧巻の演技で1位を獲得し、総合3位に。リズムダンスの転倒がなければ、もしかしたら結果は違っていたかもしれません。
あずしん組の時と同様に、「これ、ここから大逆転あるのか…?」というわくわく感がありました。特に吉田選手の技術の高さは目を引きましたね。やっぱり唄菜がナンバーワン!
このペアはスピードが本当にすごいです。2014年ソチオリンピックで銅メダルを獲得したイリカツ(エレーナ・イリニフ、ニキータ・カツァラポフ組)を彷彿させるスピードでした。
長岡/森口組
今シーズンペアを結成したばかり。森口選手はペアスケーターとしても活動していましたが、長岡選手はペア競技に取り組み始めてまだ数か月。NHK杯にも地元枠で出場しましたが、まだまだこれからという内容でした。
そのNHK杯から1か月。この短期間で見違えるほど全要素レベルアップした姿を見せてくれ、ただただ驚愕しました。NHK杯では総合135.39。今大会は総合173.64。わずか1か月で約40点も得点を上げてきました。
2人ともシングルスケーターとしても競技に出場している(いた)ので、ジャンプは問題ありませんが、ペアならではのリフトやスロージャンプも今大会ではしっかりハマっていました。NHK杯では2人のシングルスケーターが一緒に滑っているという印象でしたが、今大会ではまさしくペアスケーターの演技になっていました。
試合が違えばジャッジも違うので単純比較はできませんが、2023年世界選手権に当てはめると、ショートプログラム17位、フリースケーティング12位、総合14位相当になります。とくにフリーは10位のペアで119点なので、世界のトップ10がもう目の前にあります。本当にこれからが楽しみなペアです。