皆さん、こんにちは。
2023年全日本選手権が終了しました。
今回も現地観戦してきたので、各カテゴリに分けて観戦記を記します。初回は女子シングルです。
大会結果
総合結果
PL | 選手名 | 所属 | SP | FS | Points |
---|---|---|---|---|---|
1. | 坂本花織 | シスメックス | 1 | 1 | 233.12 |
2. | 千葉百音 | 木下アカデミー | 3 | 2 | 209.27 |
3. | 島田麻央 | 木下アカデミー | 7 | 3 | 202.18 |
4. | 上薗恋奈 | LYS | 6 | 4 | 200.69 |
5. | 三原舞依 | シスメックス | 4 | 5 | 199.56 |
6. | 渡辺倫果 | TOKIOインカラミ/法政大学 | 8 | 7 | 194.88 |
7. | 吉田陽菜 | 木下アカデミー | 9 | 6 | 194.22 |
8. | 山下真瑚 | 中京大学 | 2 | 12 | 192.15 |
9. | 青木祐奈 | 日本大学 | 11 | 8 | 192.01 |
10. | 住吉りをん | オリエンタルバイオ/明治大学 | 17 | 9 | 185.22 |
11. | 江川マリア | 明治大学 | 13 | 10 | 184.65 |
12. | 樋口新葉 | ノエビア | 15 | 11 | 180.67 |
13. | 河辺愛菜 | 中京大学 | 5 | 18 | 179.71 |
14. | 横井きな結 | 中京大学 | 10 | 16 | 175.80 |
15. | 柴山歩 | 木下アカデミー | 16 | 13 | 175.72 |
16. | 三宅咲綺 | 岡山理科大学 | 14 | 14 | 175.06 |
17. | 松生理乃 | 中京大学 | 12 | 15 | 174.34 |
18. | 清水咲衣 | 木下アカデミー | 18 | 17 | 169.12 |
19. | 村上遥奈 | 木下アカデミー | 23 | 19 | 158.86 |
20. | 鈴木なつ | 関西大学 | 19 | 20 | 155.67 |
21. | 大庭雅 | 東海東京FH | 24 | 21 | 150.03 |
22. | 白岩優奈 | 関西大学 | 22 | 22 | 148.63 |
23. | 髙木謠 | 東京女子学院 | 20 | 23 | 148.39 |
24. | 石田真綾 | 立教大学 | 21 | 24 | 142.88 |
Final not reached | |||||
25. | 櫛田育良 | 木下アカデミー | 25 | – | 50.20 |
26. | 三枝知香子 | 日本大学 | 26 | – | 50.19 |
27. | 荒木菜那 | 中京大学 | 27 | – | 46.45 |
28. | 本田真凜 | JAL | 28 | – | 44.42 |
ショートプログラム
PL. | 選手名 | 所属 | TSS | TES | PCS | CO | PR | SK | Deduction | StN. |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 坂本花織 | シスメックス | 78.78 | 41.77 | 37.01 | 9.14 | 9.36 | 9.32 | 0.00 | #23 |
2 | 山下真瑚 | 中京大学 | 69.92 | 37.57 | 32.35 | 8.11 | 8.14 | 8.07 | 0.00 | #27 |
3 | 千葉百音 | 木下アカデミー | 68.02 | 37.28 | 30.74 | 7.82 | 7.75 | 7.54 | 0.00 | #17 |
4 | 三原舞依 | シスメックス | 67.70 | 35.11 | 32.59 | 8.07 | 8.29 | 8.14 | 0.00 | #20 |
5 | 河辺愛菜 | 中京大学 | 67.25 | 35.38 | 31.87 | 7.96 | 8.04 | 7.96 | 0.00 | #28 |
6 | 上薗恋奈 | LYS | 66.22 | 36.86 | 29.36 | 7.50 | 7.46 | 7.11 | 0.00 | #12 |
7 | 島田麻央 | 木下アカデミー | 65.23 | 35.68 | 30.55 | 7.79 | 7.54 | 7.64 | 1.00 | #21 |
8 | 渡辺倫果 | TOKIOインカラミ/法政大学 | 63.66 | 33.54 | 30.12 | 7.43 | 7.68 | 7.54 | 0.00 | #19 |
9 | 吉田陽菜 | 木下アカデミー | 62.73 | 32.47 | 31.26 | 7.93 | 7.82 | 7.75 | 1.00 | #24 |
10 | 横井きな結 | 中京大学 | 62.49 | 34.85 | 27.64 | 6.89 | 6.93 | 6.96 | 0.00 | #16 |
11 | 青木祐奈 | 日本大学 | 61.44 | 30.42 | 31.02 | 7.75 | 7.75 | 7.82 | 0.00 | #18 |
12 | 松生理乃 | 中京大学 | 58.97 | 28.14 | 31.83 | 8.04 | 7.86 | 8.04 | 1.00 | #26 |
13 | 江川マリア | 明治大学 | 58.55 | 30.80 | 27.75 | 6.93 | 6.93 | 7.00 | 0.00 | #14 |
14 | 三宅咲綺 | 岡山理科大学 | 58.23 | 30.63 | 28.60 | 7.04 | 7.14 | 7.32 | 1.00 | #13 |
15 | 樋口新葉 | ノエビア | 57.97 | 27.61 | 31.36 | 7.79 | 7.75 | 8.04 | 1.00 | #25 |
16 | 柴山歩 | 木下アカデミー | 57.43 | 29.93 | 27.50 | 7.04 | 6.89 | 6.75 | 0.00 | #10 |
17 | 住吉りをん | オリエンタルバイオ/明治大学 | 56.70 | 26.63 | 30.07 | 7.61 | 7.43 | 7.57 | 0.00 | #22 |
18 | 清水咲衣 | 木下アカデミー | 56.24 | 30.39 | 25.85 | 6.39 | 6.54 | 6.50 | 0.00 | #2 |
19 | 鈴木なつ | 関西大学 | 56.00 | 30.02 | 25.98 | 6.46 | 6.50 | 6.57 | 0.00 | #4 |
20 | 髙木謠 | 東京女子学院 | 55.09 | 27.60 | 27.49 | 6.89 | 6.82 | 6.96 | 0.00 | #3 |
21 | 石田真綾 | 立教大学 | 54.12 | 29.04 | 25.08 | 6.32 | 6.21 | 6.32 | 0.00 | #9 |
22 | 白岩優奈 | 関西大学 | 53.42 | 26.16 | 27.26 | 6.79 | 6.82 | 6.89 | 0.00 | #7 |
23 | 村上遥奈 | 木下アカデミー | 53.13 | 29.53 | 24.60 | 6.21 | 6.04 | 6.25 | 1.00 | #1 |
24 | 大庭雅 | 東海東京FH | 50.80 | 26.29 | 25.51 | 6.43 | 6.46 | 6.29 | 1.00 | #6 |
25 | 櫛田育良 | 木下アカデミー | 50.20 | 25.38 | 26.82 | 6.75 | 6.71 | 6.71 | 2.00 | #15 |
26 | 三枝知香子 | 日本大学 | 50.19 | 26.44 | 23.75 | 5.93 | 6.04 | 5.89 | 0.00 | #5 |
27 | 荒木菜那 | 中京大学 | 46.45 | 23.65 | 24.80 | 6.21 | 6.14 | 6.29 | 2.00 | #11 |
28 | 本田真凜 | JAL | 44.42 | 19.09 | 25.33 | 6.25 | 6.50 | 6.29 | 0.00 | #8 |
フリースケーティング
PL. | 選手名 | 所属 | TSS | TES | PCS | CO | PR | SK | Deduction | StN. |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 坂本花織 | シスメックス | 154.34 | 77.28 | 77.06 | 9.54 | 9.71 | 9.61 | 0.00 | #24 |
2 | 千葉百音 | 木下アカデミー | 141.25 | 74.50 | 66.75 | 8.43 | 8.43 | 8.14 | 0.00 | #22 |
3 | 島田麻央 | 木下アカデミー | 136.95 | 76.24 | 61.71 | 7.71 | 7.54 | 7.86 | 1.00 | #18 |
4 | 上薗恋奈 | LYS | 134.47 | 72.95 | 61.52 | 7.79 | 7.71 | 7.54 | 0.00 | #19 |
5 | 三原舞依 | シスメックス | 131.86 | 67.22 | 64.64 | 8.11 | 8.21 | 7.89 | 0.00 | #21 |
6 | 吉田陽菜 | 木下アカデミー | 131.49 | 68.85 | 62.64 | 7.93 | 7.82 | 7.71 | 0.00 | #16 |
7 | 渡辺倫果 | TOKIOインカラミ/法政大学 | 131.22 | 70.32 | 61.90 | 7.71 | 7.68 | 7.79 | 1.00 | #17 |
8 | 青木祐奈 | 日本大学 | 130.57 | 64.60 | 65.97 | 8.14 | 8.43 | 8.14 | 0.00 | #14 |
9 | 住吉りをん | オリエンタルバイオ/明治大学 | 128.52 | 66.96 | 62.56 | 7.93 | 7.71 | 7.79 | 1.00 | #8 |
10 | 江川マリア | 明治大学 | 126.10 | 66.40 | 59.70 | 7.43 | 7.54 | 7.39 | 0.00 | #12 |
11 | 樋口新葉 | ノエビア | 122.70 | 61.27 | 62.43 | 7.71 | 7.71 | 7.96 | 1.00 | #10 |
12 | 山下真瑚 | 中京大学 | 122.23 | 59.08 | 64.15 | 7.96 | 7.93 | 8.14 | 1.00 | #23 |
13 | 柴山歩 | 木下アカデミー | 118.29 | 63.09 | 55.20 | 7.07 | 6.89 | 6.71 | 0.00 | #9 |
14 | 三宅咲綺 | 岡山理科大学 | 116.83 | 59.13 | 57.70 | 7.11 | 7.25 | 7.25 | 0.00 | #11 |
15 | 松生理乃 | 中京大学 | 115.37 | 52.96 | 63.41 | 7.93 | 7.89 | 7.93 | 1.00 | #13 |
16 | 横井きな結 | 中京大学 | 113.31 | 58.28 | 55.03 | 6.86 | 6.82 | 6.93 | 0.00 | #15 |
17 | 清水咲衣 | 木下アカデミー | 112.88 | 59.47 | 53.41 | 6.68 | 6.68 | 6.64 | 0.00 | #7 |
18 | 河辺愛菜 | 中京大学 | 112.46 | 50.27 | 62.19 | 7.68 | 7.75 | 7.86 | 0.00 | #20 |
19 | 村上遥奈 | 木下アカデミー | 105.73 | 56.33 | 49.40 | 6.25 | 6.04 | 6.21 | 0.00 | #2 |
20 | 鈴木なつ | 関西大学 | 99.67 | 48.92 | 50.75 | 6.29 | 6.36 | 6.36 | 0.00 | #6 |
21 | 大庭雅 | 東海東京FH | 99.23 | 48.54 | 51.69 | 6.43 | 6.54 | 6.39 | 1.00 | #1 |
22 | 白岩優奈 | 関西大学 | 95.21 | 42.14 | 54.07 | 6.61 | 6.71 | 6.93 | 1.00 | #3 |
23 | 髙木謠 | 東京女子学院 | 93.30 | 44.47 | 50.83 | 6.36 | 6.11 | 6.57 | 2.00 | #5 |
24 | 石田真綾 | 立教大学 | 88.76 | 42.40 | 48.36 | 6.00 | 5.86 | 6.25 | 2.00 | #4 |
感想
坂本花織
公式練習を通して見ていて、第一に思った感想が「噛み合っていない」でした。
曲かけ練習でもらしくないミスを連発しており、グランプリファイナルの疲れもあって今大会合わせきれなかったのかな…と思いながら見ていました。見ている方は、実力的には抜け出ているし、仮にここで外しても世界選手権代表には確実に選出されるし、もっと気楽にやれば良いのではと考えがちですが、実力が抜けているからこその苦しみがあったんでしょう。それでも、3F+3Tにミスが出た場合は、3Lo+3Loリカバリーを試みるなど、必死にもがこうとしているように伝わってきました。
こうした不安は何処へやら。競技が始まってみると、全く危なげない演技でショートプログラム、フリースケーティングともにノーミスで全く非の打ち所がない演技を披露。フリースケーティングで完璧な演技を行う坂本選手の演技を現地で見ながら、「これが日本の年末の風物詩だなあ」という謎の感想を抱いていました。だって全日本選手権3連覇、その3回ともに総合230オーバー完璧な演技ですよ。もはや、坂本選手のノーミス神演技は年末の風物詩です。
ウルトラCのジャンプがなかったとしても、高い点数を出せればそれで良いのです。難しいジャンプ跳んだ人が勝つスポーツではなく、高い点数を出した選手が勝つスポーツなのだから。彼女はウルトラCこそありませんが、完成度の高さで多くの点数を稼いでいます。
本当にお見事でした。
千葉百音
シーズン前半は本来の演技ができておらず、今シーズンは木下アカデミーに移籍してきたばかりでまだ厳しいのかな…と思って見ていました。スポーツ喘息を発症していたようですね。原因がわからず体が思うように動かないのは気持ちの面でもしんどいと思うので、原因が特定でき治療ができているようで良かったです。
今大会では、シーズン前半の不調を完全に払拭するような素晴らしい演技を見せてくれました。
個人的にはショートプログラムの「黒い瞳」では、最後のジャンプ3Lzの直前に絶対手拍子が起きると思っていたので、そこでリズム崩さずに行ってくれ~と思っていました。そんな心配は何処へやら、問題なく成功させてくれて一安心しました。
ショートプログラムも素晴らしかったんですが、何と言ってもフリースケーティング「海の上のピアニスト」がすごかったです。最後のジャンプである3Lzを決めた瞬間、観客席から沸き上がった歓声、そして最後のスピンに入るところから拍手が鳴りやむことなくどんどん大きくなっていきました。あの瞬間は本当に素敵な瞬間でした。こういう瞬間に立ち会うことができ、現地観戦して本当に良かったなと思いました。
ところで、濱田美栄コーチ(以下、美栄ちゃん)の叫び声とジャンプが本当に際立っていました。私の席は美栄ちゃんがいる場所からそれなりに離れていたのですが、3S着氷後に「キエエエエエエエエ!」という叫び声が聞こえてきましたし、喜びのジャンプの揺れが私の席まで届いていました。数年単位で指導している選手、千葉選手のようにまだ半年程度しか指導していない選手、誰に対しても同じように愛情と熱量を持って指導するコーチなんだなと気づかされました。
島田麻央
今大会は悔しい大会となりました。
練習からあまり調子は良くなさそうでしたが、その流れで本番も普段なら絶対しないようなミスが出てしまったという感じでした。
ショートプログラムでは、ついに3A投入。3Aこそ成功させるも後半の3Lz+3Tが3Lzで転倒。彼女の実力からすれば、3Lz+3Tは目を瞑っていても跳べるでしょう。転倒後は少し心ここにあらずな演技に見えました。それでも、ずっと練習してきたことを体は覚えていて演技としてはまとめました。
フリースケーティングでも3Aに成功したものの、4Tで転倒。後半の3Loが1Loにパンクするミスがありました。1Loのミスはジュニアグランプリファイナルに続いてのミスとなってしまいました。3Aと4T2本そろえることはかなり難しいので、4Tのミスは許容範囲内としても3Loは成功させたかったところだと思います。
本人は、全日本の緊張感、独特の空気感に今年も勝てなかったと悔しがりますが、それでも2年連続の銅メダリスト。ショートプログラム、フリースケーティング2本ともに彼女本来の出来でなくとも、全日本選手権銅メダルを取れるということが、彼女の実力の高さを物語っています。今回の課題をユース五輪、世界ジュニア選手権、そして来年の全日本選手権で活かしてくれることを期待します。
上薗恋奈
今大会を沸かせた選手の一人です。
練習から好調っぷりが伝わってきましたが、フリースケーティング最終グループで演技することになっても、全く物怖じすることなく堂々としていたのが非常に印象的でした。今年の3月までランドセルを持って小学校に通っていたとはとても思えません。
コーチでもある樋口美穂子さん(以下、美穂子ちゃん)振り付けのプログラムは、10年未来のプログラムと言ってもいいかもしれません。それくらい、時代の先を行き過ぎている名プログラムです。そして、そのプログラムを完璧に演じきることが出来ているということが上薗選手の能力の高さを物語っています。
とくにフリースケーティングでは、普段演技しているジュニア用プログラムでは見ることが出来ないステップシークエンスを楽しみにしていました。そして、期待を全く裏切らない非常に面白いステップシークエンスを見せてくれました。
動画で見ていると、細かい音の取り方や独創的な振り付けを堪能することが出来るのですが、現地だともう少しスピードが出て演技できるとより迫力が出るのかなとは思いました。とはいえ、まだ13歳。そんなことは私が言わなくてもこれからどんどん進化していってくれるでしょう。本当にこれからが楽しみになりました。
ドラカーリス🔥🔥🔥🔥🔥
三原舞依
今シーズンは怪我の影響で調整がかなり遅れていました。グランプリシリーズ中国大会は欠場、NHK杯こそ出場しましたが、全く本来の調子ではありませんでした。NHK杯でも現地観戦しましたが、彼女本来のスピードが出ておらず、スピン・ジャンプの回転速度も落ちているように感じました。ここから1か月で全日本はさすがに厳しい…というのが正直な感想でした。公式練習でも、NHK杯よりは戻してきたものの、まだ彼女本来のスケートの良さは戻っておらず、世界選手権、四大陸選手権の代表争いは難しいように感じていました。
それだけに、本番ではショートプログラム、フリースケーティングの2本ですべてのジャンプを着氷してきたことは非常に驚きました。回転不足は複数ありましたが、最小限に抑えました。彼女の意地と根性を感じる素晴らしい演技でした。今の彼女の状態で出来る最高の演技だったと思います。特にフリースケーティング「ジュピター」は本当に素晴らしかったです。最終盤”I vow to thee, my country”で実施したコレオシークエンスでのスピード感あるスパイラル、ステップシークエンスにとても感動しました。
NHK杯から全日本への1か月でここまで戻るのであれば、全日本から四大陸への1か月でもさらに戻して良い演技をしてくれると信じています。
渡辺倫果
渡辺選手も今シーズンはかなり調整が遅れている印象でした。プログラムも昨シーズンは彼女に非常に合っていたのに対して、今シーズンはかなり難解なプログラムを採用していました。渡辺選手自身もプログラムの解釈に苦しんでいるように見え、余計に今シーズンの調整の遅れを際立たせていました。
しかし、グランプリシリーズ中国大会で復調した演技を披露し、全日本では今シーズン回避していた3Aまでも戻してきました。公式練習でも何度も3Aを試みて、着氷はやや堪えながらも成功させている姿も見られました。シーズン序盤にはここまで合わせてくる姿を全く想像できなかっただけに、非常に驚かされました。フリースケーティングでは、3Aこそ転倒したものの、それ以外はまとまった演技を見せてくれました。
ところで、彼女のフリースケーティングはPerfume→Novemberとつないでいます。Perfumeはアンナ・シェルバコワ2019~20SP、Novemberはアリョーナ・コストルナヤ2018~20SP。こんなんトゥトベリーゼに捧ぐやんけとシーズン当初は思っていましたが、少しずつ彼女の色が出てきたプログラムでした。
山下真瑚
今大会荒らしてくれましたね。このまま競技終わったら、代表選考どうなるの…?というワクワク感がありました。
彼女は良い意味で周りから影響されないように見えますが、ショートプログラム、フリースケーティングともにマイペースを貫き続けていたようでした。緊張感が高い全日本では、彼女のマイペースさが良い方向に働きました。フリースケーティングでは、転倒や回転不足があり点数は伸びきりませんでしたが、来シーズン全日本の表彰台争いに入ってくれるのではないかと期待が持てる演技でした。
全日本8位なので、来シーズンは強化A選手になるものと思われます。久しぶりに強化選手に復帰します。今シーズン後半の国際B級大会への派遣もあるでしょう。
ところで、私は彼女の今シーズンのフリースケーティングがかなりお気に入りです。ステップシークエンスからフィニッシュに向けてのお祭りのような雰囲気の高まりがとても良いです。
青木祐奈
今大会は、大学4年生である彼女の今後を決める大会でした。
NHK杯出場後、全日本選手権での結果が来シーズンにつながる結果だったら、競技続行したいと語っており、私としても良い結果でまとめてくれ~と祈りながらの現地観戦でした。何なら、今大会だけでも引退回避加点(なんやそれ)を許可します!と言いたいくらい。
しかし、今大会の彼女は引退回避加点なんて必要ないほどに素晴らしかった。ノービス時代から武器としていた3Lz+3Loを1本も決めることが出来なかったことは悔しかったと思いますが、それ以外は本当に素晴らしい演技でした。フリースケーティングでは、PCSが全体3位。優勝した坂本選手、2位の千葉選手に次ぐ非常に高い評価を得ることが出来ました。何よりもスケーティングの美しさが目を引きました。
四大陸選手権代表入りを果たした渡辺選手とは約3点差ということもあり、悔しさは残ったかもしれません。しかし、総合9位であり来シーズンも強化選手入りはほぼ確実です。あとは彼女がどのような決断を下すかというところです。私たちはスケーターがリンクにいる時しか見ることが出来ませんが、スケーターの人生はリンクから下りた後も続いていきます。そう考えると、大学4年という区切りで引退して次の人生をスタートするという選択も悪くはないと思います。
私は来シーズンも彼女の演技を観たいとは思いますが、彼女がどんな決断をしてもこれからを応援したいと思います。
住吉りをん
彼女もシーズン冒頭の国内戦、グランプリシリーズと比べるとやや調子を落としている印象がありました。とくに公式練習を見ていると、今シーズンは不発になることがなかった4Tに苦しんでいるように見えました。
競技本番もショートプログラムは全日本の緊張感に飲まれてしまった印象でした。2Aのパンク、3F+3Tも両ジャンプともに着氷が乱れました。ここまでは昨シーズンの全日本とほぼ同じ展開でした。フリースケーティングで意地を見せたのが昨シーズンとは異なる点で、ここがこの1年の成長だったと言えるでしょう。
4Tでかなり痛そうな転倒した後、心配しましたが、しっかり演技をまとめ切りました。4Tと最後の3Fの2本はほとんど点数になっていません。実質ジャンプ5本でTES66.96点稼ぎました。すべてまとめれば、TES80は余裕で越えてきます。悔しさは残ってしまったかもしれませんが、彼女のポテンシャルが本格的に開花するまで応援し続けたいと思います。
全然関係ないですが、次回長野で全日本があった時は、りをん会として鰻屋さんの住吉に行きたいです。
江川マリア
昨シーズンの全日本でもトップ10入りする実力がありましたが、実力を発揮することが出来ませんでした。
今大会でも、ショートプログラムではミスが出て出遅れ。全日本選手権への相性の悪さを嘆いていましたが、フリースケーティングはシルクドソレイユの”O”で非常に素晴らしい演技でした。とくに中盤の2A+3T+2Tはジャンプで曲を表現していました。終盤のステップシークエンスは羽ばたこうとする鳥のように、非常に伸びやかでした。そして演技直後に大きくガッツポーズ。見ているこちらまで嬉しくなりました。
11位に入ったので、おそらく来シーズンは強化B選手に入ることが出来ます。NHK杯の地元枠選考会にも招集されるはずなので、少しずつですが世界への道が見えてきています。この流れを掴んで、これから世界に羽ばたいていってほしいと思います。
河辺愛菜
美穂子ちゃんのところに移籍して2シーズン目。美栄ちゃんのところにいた時も魅力的なスケーターでしたが、さらに魅力的なスケーターになりました。
同門の上薗選手と同じように、美穂子ちゃんが作る10年未来のプログラムを完璧に演じきっています。SPのHaunted (Dillistone) / Lick it、FSのボレロともにオンリーワンのプログラムとなっています。彼女は非常にスピードがあるので現地で見ていると非常に映えますし、おしゃれな振り付けが非常に合っています。
ショートプログラムではとても良かっただけに、フリースケーティングで緊張感に飲まれてしまったのが残念でした。個人的にはこのボレロは名作だと思っているので、来シーズン継続してでも完成させてほしいです。13位なので全日本の成績で来シーズンの強化選手入りを決めることが出来ませんでした。何とかグランプリシリーズの招待があることを祈るばかりです。今シーズンと同じであれば、グランプリシリーズにアサインされれば強化選手入りができるので。
大庭雅
12回目の全日本。女子シングルの最年長選手であり、最年少の上薗選手が生まれた半年後には全日本に初出場していました。私は彼女が初めて出場した2010年全日本選手権の演技を観て彼女のファンになりました。あの頃の彼女も良いスケーターでしたが、13年経ってさらに魅力的なスケーターになりました。
ショートプログラム「情熱大陸」、フリースケーティング「Aesthetic」ともに素晴らしいプログラムですが、とくに情熱大陸がお気に入りです。このプログラムはとにかく踊り続ける「New雅」。にもかかわらず、これ彼女の得意路線だっけ?と思うくらいとても彼女に合っています。私は神プロを「スケーターの新しい魅力を引き出している。にもかかわらず、とてもスケーターに合っているプログラム」と定義しています。この定義に従えば、大庭選手の情熱大陸はまさしく「神プロ」です。
プロトコルを見ていて気が付いたんですが、情熱大陸は中盤にスピン3連続なんですね。スピンの間で行う繋ぎが非常に濃厚で踊り続けていたので全く気が付きませんでした。
フリースケーティング「Aesthetic」も観客に訴えかけてくるものがありました。冒頭から3S+3T,3Lo+3Loと高難度ジャンプを連発。とくに、彼女の代名詞だったセカンド3Lo挑戦は激熱でした。彼女の演技直後は私だけでなく、多くの観客が涙していました。
彼女の演技がとても魅力的なのは、おそらく彼女自身がスケートを楽しんでいる、全日本という舞台で演技していることを楽しんでいることが伝わってくるからなんでしょうね。