村元哉中・高橋大輔組が現役引退を発表
2023年5月1日、アイスダンスの“かなだい”こと村元哉中選手・高橋大輔組が、公式Instagramで現役引退を発表しました。コロナ禍の2020~21シーズンにペアを結成し、全日本選手権優勝、四大陸選手権銀メダル、先日行われた世界選手権では日本勢過去最高タイの11位に入りました。
公式インスタグラムで以下のとおり語っています。
世界選手権や国別対抗戦での2人の様子から、「現役引退かもしれない…」「けど、来年もう一度世界のトップ10に挑戦してくれるはず…!」と私自身気持ちがずっと揺れ動いていました。今回現役引退の発表を受けて、自分自身の気持ちを整理するという意味でも、かなだい組のこれまでの軌跡を振り返ってみようと思います。
かなだい組の軌跡
かなだい結成前史
高橋選手は男子シングルの選手として、世界選手権優勝、バンクーバーオリンピック銅メダルを獲得し、日本の男子シングルの歴史を作りました。2014年ソチオリンピックに男子シングルの選手として出場し、6位で競技を終えたあと地元開催となった2014年埼玉世界選手権を欠場して一度現役を引退しました。その後、2018~19シーズンに男子シングルの選手として現役復帰し、翌2019~20シーズンまで男子シングルの選手として活動しました。
村本選手は2013~2014シーズンまで女子シングルの選手として活躍。2011年の全日本選手権では、SP6位、FSでは最終グループで演技しました(最終順位10位)。2014~15シーズンにアイスダンスに転向。2014~15シーズンは野口博一選手とペアを結成して全日本3位。2015~16シーズンからはクリス・リード選手とペアを結成して、全日本選手権優勝、四大陸銅メダル、世界選手権11位という結果を残し、日本のアイスダンスの歴史を作りました。一方で、2018年8月にクリス・リード選手とのペアを解消して、新しいパートナーを探していました。
男子シングル、アイスダンスの歴史を作った両選手は、2019年9月に2020~21シーズンからアイスダンスのペアを結成することを発表しました。
2020~21シーズン:結成
2020年NHK杯でデビューを果たしたかなだい組、私は当時会場で2人の演技を見ていましたが、「思っていたよりもアイスダンスになっている!」「けど、まだ2人で1つではなく、2人でプログラム滑ってる!」というのが印象に残っていました。あとは、アイスダンスに転向したばかりでどうしても不安定感が出るリフトを「がんばれ…」と思いながら見ていたことを思い出します。
一方で、北京オリンピックシーズンまであと1シーズンしかなく、さすがに北京オリンピックには間に合わないのではないか?と当時は思っていました。
2021~22シーズン:飛躍
結成2シーズン目、かなだい組は昨シーズンからは別人になった演技を披露します。NHK杯6位、CSワルシャワ大会2位と連続で日本勢トップとなり、オリンピック代表争いを行っていた小松原美里・小松原尊組を上回る活躍を見せました。
RDの「ソーラン節」では高橋選手はノースリーブ衣装となるのですが、腕の筋肉が昨シーズンから明らかに発達したことがわかります。また、FD「ラ・バヤデール」は昨シーズンからの継続プログラムだったので、かなだいペアがこの1年でいかに成長したのかが一目瞭然となっていました。
惜しむらくは北京オリンピック代表最終選考会であった2021年全日本選手権RDでの転倒でしょう。RD2位、FDは1位となり猛追しましたが、優勝した小松原組もまたFDで最高の演技を披露して捕らえることはできませんでした。結果として、北京オリンピック代表こそ逃しましたが、四大陸選手権日本勢過去最高の銀メダルを獲得し、かなだいとしては世界選手権に初出場し16位となりました。
北京オリンピック代表こそ逃しましたが、2021~22シーズンはかなだいがアイスダンサーとして成長した素晴らしいシーズンとなりました。
2022~23シーズン:完遂
2022~23シーズン、かなだい組はFDに「オペラ座の怪人」を選びました。「オペラ座の怪人」は高橋選手が2006~07シーズンにFSで使用していた曲であり、「オペラ座の怪人」を使用して2007年世界選手権で日本男子初の銀メダルを獲得しました。
このシーズン、かなだい組は日本勢の中で一歩抜きんでた演技を見せ続けました。全日本選手権初優勝、そして世界選手権では日本勢過去最高タイの11位に入りました。FDは10位であり、2人が目標としていた世界のトップ10にあと一歩まで迫りました。私は会場で2人の演技を見ていましたが、FD演技後には誇張表現ではなくさいたまスーパーアリーナが揺れていました。高橋選手がシングル時代に演じていた「オペラ座の怪人」を、アイスダンスとして演じてプログラムを完遂させました。
そして、かなだいペアの現役最後の競技会となった国別対抗戦は、2007年世界選手権と同じ東京体育館で開催されました。16年前と同じ会場で、16年前と同じ「オペラ座の怪人」を演じ完璧な演技を披露しました。
世界選手権、国別対抗戦と”歌子泣かない神話”は崩れ、両大会で高橋選手のシングル時代のコーチである長光歌子コーチは感動の涙を流しました。
最後に~これからの活躍を願って~
既にアイスダンスで実績があり、年齢的に次に組むパートナーが最後のパートナーとなる可能性が高かったにもかかわらず、全くのアイスダンス初心者である高橋選手をパートナーに選んだ村元選手の勇気、34歳という年齢で未知の世界だったアイスダンスへの転向を決めた高橋選手の勇気、2人のスケーターが勇気を持ってペア結成に踏み出した結果、”かなだい”という素晴らしいアイスダンサーが誕生しました。
かなだい組の活躍は「新しい挑戦を始める時に年齢は関係ない」「何歳でも新しく始められる」ということを教えてくれました。
2人が歴史の扉を開きかけたアイスダンス世界選手権トップ10という夢は、近い将来この2人の後輩達がきっと達成してくれるでしょう。
これからの2人の活躍を祈って。本当にお疲れさまでした。
コメント