織田信成選手の処分について

現役引退後の復帰届提出ができていない状況下で大会出場していた織田信成選手について、日本アンチ・ドーピング規律パネルによる決定が発表されたので内容をまとめています(正式文書はこちら)。

本件の経緯は以下記事にてまとめています。

目次

決定事項

決定事項
  • 日本アンチ・ドーピング規程5.6.1項第1文の違反が認められる。
  • 同第4文に従い、2023年1月国民体育大会の個人成績は失効となる。

日本アンチ・ドーピング規程5.6.1項第1文は、現役復帰6か月前までに復帰届提出が定められています。今回のケースでは復帰届が出されたのは2023年7月なので、本規程の違反が認定されました。そして、6か月前までの復帰届提出に違反して得られた競技結果である2023年1月国体の結果は失効となりました。

JADAの登録検査対象者リストに含まれる国際レベルの競技者又は国内レベルの競技者が引退し、その後競技へ現役復帰しようとする場合には、当該競技者は、その国際競技連盟及びJADAに対し、6ヶ月前に事前の書面による通知をし、検査を受けられるようにするまで、国際競技大会又は国内競技大会において競技してはならないものとする。

日本アンチ・ドーピング規程 5.6.1

本第 5.6.1 項に違反して得られた競技結果は失効するものとする。

日本アンチ・ドーピング規程 5.6.1

決定理由

決定理由
  • 2014年にJADAに引退届提出。復帰届を提出したのは2023年7月29日。国体出場は2023年1月であり、違反は明らか。
  • 現役復帰6か月前の復帰届提出を厳格に適用することが競技者にとって不公平である場合、適用しないことができる(日本アンチ・ドーピング規程5.6.1項第2文)。しかし、今回のケースでは適用とした。
  • 復帰届提出せず出場した大会が「国内競技大会」と知りえなかったと立証できる場合は、競技成績失効が免れる可能性がある(日本アンチ・ドーピング規程5.6.1項第5文)。しかし、立証は困難かつ本人も認めている。
  • 今回の復帰にあたり、織田選手は日本スケート連盟に対して相談を行っていたが、同連盟は織田選手に「復帰届」に関する情報を十分に与えられなかった。そのため、織田選手は「復帰届」提出に気が付くことができなかった。しかし、今回の規則違反を覆すまでの事情とは言えない。

現役復帰6か月前までの復帰届提出について、2つの例外適用があります。

1つ目が、本規定を厳格に適用することが競技者にとって不公平である場合

2つ目が、出場した大会が「復帰届」提出が必要な「国内競技大会」であることを知りえなかったと立証できる場合。

1つ目は、WADA、JADA、国際スケート連盟で競技を行った上で、WADAが決定することになります。しかし、WADAはこの例外適用を行いませんでした。

2つ目は、そもそも立証困難であるということを本人も認めています。

また、日本スケート連盟に事前相談していたものの、「復帰届」提出に関する情報が連盟から選手に対して、十分に与えられなかったという点も考慮すべき事項とされています。しかし、本事情も今回の規則違反を覆すほどの事情ではないと判断されました。

その結果、規程にのっとり、2023年1月に織田選手が出場した国体の競技成績は失効することになりました。

WADA は、該当する国際競技連盟及びJADA と協議の上、6ヶ月前の事前の書面による通知の要件の厳格な適用が競技者にとって不公平である場合には、その通知要件を適用しないことができる。当該決定に対しては、第 13 条に基づき不服申立てを提起することができる。

日本アンチ・ドーピング規程 5.6.1

本第 5.6.1 項に違反して得られた競技結果は失効するものとする。但し、競技者が、これが国際競技大会又は国内競技大会であることを自己が合理的に知ることができなかったことを立証することができた場合には、この限りでない。

日本アンチ・ドーピング規程 5.6.1

私見

今回の決定は、決定受領日から21日以内に不服申立てをすることができます。申立てをしなかった場合は、これで処分確定となります。

日本アンチ・ドーピング規程に照らし合わせて考えていくと、こういう結論にならざるを得ないだろうと思いました。ドーピング対応への責任はあくまでも選手個人にあるという考えから、日本スケート連盟が十分にサポートできなかったという点も規程違反を覆すほどの事情ではないと判断されたものと考えられます。

気になる点として、織田選手の個人成績は失効すると明記されていますが、大阪チームとしての成績がどうなるのか明記されていません。大阪チームは友野一希選手とのタッグで成年男子3位を獲得しましたが、本成績がどのような取り扱いになるのかが今後注視すべきポイントかと思います。

個人成績は失効するが、団体成績は失効しないとなるのか。個人成績が失効するのだから、団体成績も友野選手一人の成績のみで見直されるのか。いずれの取り扱いになるのかは、発表を待ちたいと思います。

いずれにしても、こうした事故が今後起きないよう、再発防止策の徹底を祈るばかりです。

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この記事を書いた人

ただのフィギュアスケートファン。フィギュアスケート現地観戦し始めて10年前後。現在も日本国内の大会・アイスショーに出没しています。
このブログでは現地観戦の感想、日々感じたことをのんびり書いています。

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