【国別対抗戦2025】最終局面に至る出場国争い

2025年4月17日、東京開催の国別対抗戦(ISU World Team Trophy)がいよいよ近づいてきました。 シーズンの“ラストイベント”であり、“国別チーム戦”という特別な舞台。

で、国別対抗戦の結果はもちろんのこと、大きな注目ポイントの一つが「どの国が出場できるのか?」でしょう。

国別対抗戦はグランプリシリーズ、世界選手権等の大会におけるポイント上位6ヵ国が出場することになります。つまり、本記事投稿2025年3月28日現在開催されている世界選手権の結果をもって出場国が決定するというわけですね。出場国争いはクライマックスに入っています。

この記事では、ポイント制度の仕組みから最新ランキング、そしてボーダー争いの内情をお届けします!


目次

国別対抗戦とは?

出場国の構成

  • 6ヵ国が出場、そのうち1枠は開催国(と言いつつ、日本でしか開催されていない)
  • 6ヵ国はグランプリシリーズ、世界選手権等の「ポイントの合計」で上位に入った国が出場できる

各チームの編成

  • 男子シングル 2名
  • 女子シングル 2名
  • ペア 1組
  • アイスダンス 1組

オリンピックの団体戦は全カテゴリ1名/組である一方、国別対抗戦では男女シングルが2名となっています。ペア/アイスダンスよりも男女シングルの方が重要度が高い編成です。これは、国別対抗戦が始まった2009年当時、実態として毎回開催国となる日本がペア/アイスダンスの方が選手層が薄く、男女シングルで有力選手が集中していたことから忖度が働いたのでは?と邪推したりしなかったり。当時そんな噂が流れていたような記憶がぼんやりあります。

いずれにしても、国別対抗戦に出場、そして上位進出するためには、全カテゴリで有力選手を揃えるということが大事なポイントです。

参加資格に必要な条件

  • 国として最低3種目以上でポイントを稼いでいる必要がある
  • ポイント対象は以下の大会:
    • 世界選手権
    • グランプリシリーズとグランプリファイナル
    • 四大陸/ヨーロッパ選手権
    • ※世界ジュニア選手権、ジュニアグランプリ(JGP)も補完的に対象になる場合あり

このルールがあるから、たとえば「男女シングルが強すぎるけど他はゼロ」の国とかは、出場資格すら持てなかったりします。 国としての“総合力”が試される大会です。


出場国決定の仕組み

ポイント加算方法

  • ①グランプリ②世界選手権における男女シングル2名、ペア・アイスダンス1組が獲得するポイントが対象。
  • ①グランプリではシリーズとファイナルのポイントが対象。ポイント獲得者がいない場合は、ジュニアグランプリのポイントも対象になる。
  • ②世界選手権のポイントが対象。ポイント獲得者がいない場合は、四大陸・ヨーロッパ選手権。それでもいなければ世界ジュニア選手権のポイントが対象になる。
  • ①グランプリ、②世界選手権は国ごとで計算するため、同じ選手のポイントでなくてもOK
  • ①グランプリ、②世界選手権におけるポイントの合計得点上位から出場国を決定する。

で、このルールで起こる“落とし穴”が…

落とし穴①世界選手権優先の原則

②世界選手権では、世界選手権のポイントが最優先されます。

つまり、四大陸・ヨーロッパ選手権で優勝(840pt)した選手が、世界選手権で調子を落として10位(465pt)になってしまった場合、世界選手権のポイントが優先されるので、840ptではなく465pt獲得扱いとなってしまいます。

四大陸・ヨーロッパ選手権のポイントを使用できるのは、世界選手権でポイントがない場合のみです。つまり、四大陸・ヨーロッパ選手権で好成績を残した選手は、以下のようなことが起こりえるわけです。

  • 世界選手権でSP落ち(25位以下) → 0点扱い → 四大陸やヨーロッパの好成績がそのまま加点できる
  • 逆にSP24位で「ギリギリでフリー進出」→ 世界選手権のポイント使用のため、獲得ポイントが下がる

つまり、四大陸・ヨーロッパ選手権で好成績を残した後、世界選手権に出たはいいけど、微妙な成績だと国別対抗戦の出場争いでは足を引っ張る可能性もあるということ。

落とし穴②ジュニア大会の扱い

①グランプリ、②世界選手権共に、ジュニア大会であるジュニアグランプリ、世界ジュニアは優先順位が最も低くなります。

つまり、世界選手権24位(106pt)の選手と世界ジュニア1位(500pt)の選手がいる場合、世界選手権のポイントが優先されるため106ptが優先されます。

国別対抗戦はシニア選手が出場する大会なので、ジュニアよりもシニアの大会のポイントを優先しますよという扱いはなんとなく理解できるところかと思います。

一方で、①グランプリ、②世界選手権共にポイントが獲得できず、ジュニアグランプリや世界ジュニアのポイントを使用する場合、当該ジュニア選手がシニア年齢を満たしているかどうかは問われていません。つまり、シニア大会に出場することが出来ないジュニア選手のポイントも加算することが出来るというわけです。

順位別ポイント一覧表(どの大会で何点入る?)

出場条件で最も重要な「ポイント」について、実際に何点もらえるのかまとめておきます。

世界選手権・四大陸/ヨーロッパ・世界ジュニア

順位世界選手権四大陸/ヨーロッパ選手権世界ジュニア選手権
1位1200 pt840 pt500 pt
2位1080 pt756 pt450 pt
3位972 pt680 pt405 pt
4位875 pt612 pt365 pt
5位787 pt551 pt328 pt
6位709 pt496 pt295 pt
7位638 pt446 pt266 pt
8位574 pt402 pt239 pt
9位517 pt362 pt215 pt
10位465 pt325 pt194 pt
11位418 pt293 pt174 pt
12位377 pt264 pt157 pt
13位339 pt237 pt141 pt
14位305 pt214 pt127 pt
15位275 pt192 pt114 pt
16位247 pt173 pt103 pt
17位222 pt156 pt93 pt
18位200 pt140 pt83 pt
19位180 pt126 pt75 pt
20位162 pt113 pt68 pt
21位146 pt102 pt61 pt
22位131 pt92 pt55 pt
23位118 pt83 pt49 pt
24位106 pt74 pt44 pt

優先順位:世界選手権>四大陸/ヨーロッパ選手権>世界ジュニア選手権

グランプリシリーズ・ジュニアグランプリ

順位グランプリシリーズグランプリファイナルジュニアグランプリシリーズ
1位400 pt800 pt250 pt
2位360 pt720 pt225 pt
3位324 pt648 pt203 pt
4位291 pt583 pt182 pt
5位262 pt525 pt164 pt
6位236 pt472 pt148 pt
7位212 pt133 pt
8位191 pt120 pt

優先順位:グランプリシリーズ=グランプリファイナル>ジュニアグランプリシリーズ

※なぜかジュニアグランプリファイナルはなし

この辺りを把握しておくと、「この選手があと何点取れればOKか」っていう計算もしやすくなってきます。

最新ランキングで見る出場枠争いの構図

ここからは、実際にどの国が出場に近づいているのか?を、最新のポイント集計をもとに見ていきます。世界選手権のペア終了時点のポイントです。

まず、現時点でポイント的に“当確ライン”にいるのはこの3ヵ国です:

順位国名合計ポイント
1位日本8421pt
2位アメリカ8195pt
3位イタリア6663pt

アメリカと日本は超強力。国別対抗戦でも優勝争いでしょう。イタリアはペア・アイスダンスの2種目でポイントが高く、3位は問題なく確保しそうです。

…となると、残り3枠をめぐっての争いが注目ポイントになります。

候補は以下の4ヵ国:

順位国名合計ポイント
4位カナダ4772pt
5位ジョージア4527pt
6位フランス4283pt
7位韓国4053pt

この4ヵ国が、残る“出場3枠”をかけて、世界選手権の結果で決着をつける構図になっています。

ここから、8位以下は1000点以上差があり、逆転は厳しい状況です。

次は、この“ラスト枠争い”の詳細を国ごとに分析していきましょう!

ボーダー争いの国別詳細分析

出場枠争いのカギを握る4ヵ国を、それぞれチェックしていきます。


カナダ

カナダオリンピック団体戦優勝経験もある強豪国。全種目に出場選手が揃っていて、バランスも比較的良好。

特にアイスダンスにはギレス/ポワリエ組という大きな加点要素を残していて、ここは強みでしょう。

男女シングルはやや不安要素でしたが、女子シングルではマデリン・シーザスが11位と何とか粘りました。四大陸選手権12位で264ptでしたが、世界選手権11位で418ptとポイント増につなげました。

国別対抗戦の代表争いをしている国の中では、選手層も含めてやや抜けている印象もあり、ある程度世界選手権で外す選手が出てきたとしても問題なく通過するでしょう。

種目GP世界選手権合計
男子シングル377pt589pt966pt
女子シングル453pt743pt1196pt
ペア400pt787pt1187pt
アイスダンス583pt840pt1423pt
合計4772pt

ジョージア

ジョージア国別対抗戦初出場がかかっています。

全カテゴリで選手がいるものの、男子シングルは選手がニカ・エガゼ1名しかいません。また、女子シングルはシニア選手がアナスタシア・グバノワ1名なので、ジュニア選手のインガ・グルゲニゼのポイントを使用しています。

男子シングルのエガゼはヨーロッパ選手権4位で612ptを暫定的に獲得。世界選手権ではSP6位につけています。このまま終了すると709pt獲得になりますが、どこまで粘れるでしょうか。

女子シングルは、アナスタシア・グバノワがまさかのショート落ち。世界選手権でポイントを獲得できないので、ヨーロッパ選手権2位の756ptを使用できることになりました。良いのか悪いのか。また、グルゲニゼの世界ジュニア6位の295ptで女子シングルのポイントは最終確定。世界選手権フリーで演技する選手がいないのに、なぜか女子シングルの世界選手権等の獲得ポイントはアメリカ、日本に次ぐ3位です。

ペアのメテルキナ/ベルラワ組が世界トップクラス。世界選手権4位(875pt)とポイントを稼ぎました。

6~7位争いをずっと繰り広げてきましたが、ここにきて5位浮上。6位のフランスは男子シングルで大きくポイントを伸ばして交されるでしょうが、7位の韓国とは約500点差をつけました。男子シングルのエガゼが大遭難しない限りは国別対抗戦初出場は確実でしょう。

種目GP世界選手権合計
男子シングル292pt612pt904pt
女子シングル355pt1051pt1406pt
ペア648pt875pt1523pt
アイスダンス292pt402pt694pt
合計4527pt

フランス

フランス国別対抗戦の常連国

フランスの強みは、なんと言っても男子シングルのアダム・シャオ・イム・ファケビン・エイモズ。世界選手権のメダル候補2人が揃っています。エイモズはヨーロッパ選手権22位と92pだったので、世界選手権フリー進出した時点でポイント加算できることは確実。

一方、ペアでは世界選手権21位と146ptと取りこぼしました。

また、女子シングルでは、リー・セルナがヨーロッパ選手権11位で世界選手権出場がないため293ptで確定。ロリーヌ・シルドはヨーロッパ選手権10位で325ptでしたが、世界選手権15位のため275ptになりました。

女子シングルとペアの取りこぼしを、男子シングルとアイスダンスでどこまで補うことが出来るかどうかが鍵になります。

種目GP世界選手権合計
男子シングル872pt772pt1644pt
女子シングル461pt568pt1029pt
ペア236pt146pt382pt
アイスダンス472pt756pt1228pt
合計4283pt

韓国

韓国2023年大会で国別対抗戦初出場

韓国といえば、女子シングルの強さ男子シングルチャ・ジュンファン。ペアはいないものの、そのほかのカテゴリは選手が揃っています。

韓国の男女シングルは、グランプリシリーズでやや不振だったこともあり、6位争いをする国に対して実力ほど差をつけることが出来ませんでした。そして世界選手権でもSP終了時点でやや苦しんでいる印象があります。

女子シングルのキム・チェヨンは四大陸選手権優勝で暫定840ptでしたが、世界選手権10位となり465ptに。同イ・へインは四大陸選手権8位で暫定402pt。世界選手権9位で517ptとポイントを伸ばしてきましたが、チェヨンの取りこぼしをカバーするまでは至りませんでした。この結果でジョージアの方が韓国よりも女子シングルでポイントを稼いでいるという謎現象が起きています。

男子シングルのチャ・ジュンファンは四大陸選手権2位で暫定756ptを持っているものの、世界選手権SP10位とやや出遅れ。ここも四大陸選手権のポイントから減点になる可能性があります。一方で、キム・ヒョンギョムは世界選手権SPで25位以下となったのでポイントが入らず、四大陸選手権7位の446ptを使用できることになるのは不幸中の幸いでしょうか。

ペアは完全に0点、アイスダンスは6位争いをする国と差をつけることが出来ないため、男子シングルのチャ・ジュンファンの出来が全ての鍵を握っています。

種目GP世界選手権合計
男子シングル574pt1202pt1776pt
女子シングル586pt982pt1568pt
ペア0pt0pt0pt
アイスダンス213pt496pt709pt
合計4053pt

おわりに

出場国の枠は実質残り3つ
カナダ、ジョージア、フランス、韓国——ここから3国が出場し、1国が落ちることになります。

どの国もあと少しで通過ラインに届く位置にいて、その差は、1つのジャンプやスピンで埋まってしまう程度のものと思われます。

だからこそ、世界選手権は個人戦でありながら、チーム戦に向けた“最終選考”としても大事な舞台になります。

何気ない順位や得点が、最終的に出場可否に関わってくるかもしれない。ファンとしては、そこも含めて世界選手権を見ていきたいと思います。

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この記事を書いた人

ただのフィギュアスケートファン。フィギュアスケート現地観戦し始めて10年前後。現在も日本国内の大会・アイスショーに出没しています。
このブログでは現地観戦の感想、日々感じたことをのんびり書いています。

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