NHK杯の観戦者は誰か【論文紹介】

目次

論文概要

概要

  • 著者:井上 尊寛、竹内 洋輔、荒井 弘和
  • タイトル:フィギュアスケート観戦者に関する研究 : NHK杯の観戦者に着目して
  • 雑誌等:法政大学スポーツ健康学研究,5巻,27-31頁。
  • 発行年:2014年
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どのように調査しているのか?

2013年NHK杯の観戦者を分析対象。

2013年NHK杯というと、ソチオリンピックシーズン。浅田真央さん高橋大輔さんがアベック優勝した時ですね。懐かしい。

600人近くの観戦者にアンケートを配布して調査したとのことなので、この記事見ている人の中にもアンケート回答した人がいるんじゃないでしょうか。

明らかになったこと

誰がフィギュアスケートを見に来ているのか?

  • 観戦者の性別は女性が圧倒的に多い(女性が86.2%)
  • 観戦者の年齢として最も多いのが40代、次に50代。これら年齢層で半数以上を占めている。
  • 友人と来ている人(41.5%)が最も多く、次に家族と来ている人(32.9%)、一人で来ている人(27.1%)がいるが、差は大きく開いていない。
  • フィギュアスケートの競技歴がない人が圧倒的に多い(93.3%)
  • 応援している選手がいる人が圧倒的に多い(88.6%)。
  • 平均の応援歴は8.9年

つまり、NHK杯のフィギュアスケート観戦者層として最も多い層は、フィギュアスケートをやったことがない40代女性であり、長年応援している選手を応援するために友達とフィギュアスケート観戦に来ているということになります。

フィギュアスケートの何を重視しているのか?

ジャンプやスピンといった技術的要素よりも、音楽との調和、振り付けといった表現的要素を観客はより重要視している。

他に観戦している大会は何か?

  • 国際大会(ジャパンオープン、国別対抗戦、四大陸選手権等)に観戦している人が多い。
  • 国内大会は、全日本選手権以外の競技会を観戦している人が極端に少ない。

論文を考察してみる

納得感のある項目:性別・年齢

性別・年齢辺りは非常に納得感がある結果でした。

とくに、フィギュアスケートの観戦者層が40~50代女性というのがすごく納得感があります。だって、観戦に行ったら、その辺りの観戦者層の人ばっかじゃないですか?

20台以下は約1割。男性も約1割ということで、その辺りの層が少ないのもわかります。会場で目立ちますもんね。

著者らは全日本ノービスの観戦者層も調査しており、その時は観戦者層が男性:女性=4:6としていてほんまかいなと思いましたが、全日本ノービスの方は「出場者の関係者」の観戦者層であり、今回は「フィギュアスケートファンの観戦者層」と考えると納得感があります。

議論の余地がある項目:応援年数

応援年数という項目は、やや議論の余地がありそうだなと思いました。

先ほども述べましたが、調査を行った2013年NHK杯にはスター選手とも言うべき浅田真央さん、高橋大輔さんが出場していました。当然両選手のファンが多いことは容易に想像できます。

応援年数で中央値になっている7~8年と回答した人は、2005~6年頃から応援を始めていることになるので、時期的に浅田・高橋両選手が台頭した時期と重なっています。そう考えると、ここの応援年数は単純に浅田・高橋両選手の応援歴という話なのでは??という気がします。

当時と現在で状況が変わっていると思われる項目:大会観戦歴

競技会の観戦歴はおそらく当時と現在では大きく状況が変わっていそうだな~という気がします。

私は2012~13年辺りから国内ブロック大会の観戦をしていましたが、当時は「これ入っていいの?」というくらい関係者ばかりだった記憶があります。

今回の論文では調査対象にすらなっていませんが、サマーカップの観客数だけでも当時と今では全く違います。2013年のサマーカップ(当時はまだげんさんが付いていない!)現地観戦しましたが、フィギュアスケートファンと思われる人は十数人だったような…。その後、コロナ前あたりから「観戦に来たけど席がない!」という状況に変わりました。ここ10年でローカル大会の観戦者数がかなり増えたというのが実感としてあります。

おそらく、今調査してみると、全日本選手権以外の国内大会の観戦歴もかなり増えているのではないでしょうか?

フィギュアスケート観戦者を増やすには?

最近、三浦佳生選手が「ズバリお客さんが減っている!」とインタビューで語っていました。

確かにその指摘はあながち間違いではなく、2023年7月のドリームオンアイスは衝撃的なくらいの空席が目立ちました。(この時は色々な要因が重なったことが要因と思われますが…)

今回紹介した論文は、フィギュアスケート観戦者を増やすにはどうすべきか示唆に富んでいます。明確に少ない観戦者層である20代以下の観戦者を増やす試みを行う、男性を増やす試みを行う等、観戦者を一部の年齢・性別層に偏らないように何らかの施策を行うことが必要でしょう。

そして、長年応援している選手がいるようなヘビースケオタのみが観戦に来るのではなく、好きな選手はいないけどフィギュアスケートという競技自体が好きな人を増やすこと、ライトなスケオタも観戦に来るようにすること、スケーターの人気に頼るのではなく、文化として人気のあるスポーツにすることが必要ではないか?と思いました。

★関連記事 以下記事では、全日本ノービスの観戦者を分析している論文を紹介しています。

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この記事を書いた人

ただのフィギュアスケートファン。フィギュアスケート現地観戦し始めて10年前後。現在も日本国内の大会・アイスショーに出没しています。
このブログでは現地観戦の感想、日々感じたことをのんびり書いています。

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