【ミラノ五輪女子フリー展望】中井の「技術」か、坂本の「総合力」か、ペトロシャンの「4回転」か。フリーの予定構成から読み解くメダルの行方

目次

はじめに:大激戦!首位から10点以内に11人

ミラノ五輪女子シングルは、史上最高レベルの大激戦となっています。

1位中井亜美(78.71点)から3位アリサ・リウ(76.59点)までわずか約2点差
そして、首位中井から11位ニーナ・ピンザローネ(68.97点)までも10点離れていません。
とくに70点前後に10人近い選手が固まっている超大激戦となっています。

フリーでは、ジャンプの回転不足等の判定、スピン・ステップのレベル判定で順位が大きく入れ替わる可能性があります。

この記事では、フリーのジャンプ予定構成から、フリーでどこに注目すべきかを考えていきます。


ショート上位3選手の「3つの戦い方」

中井亜美:技術点で圧倒する

選手TES(技術点)PCS(演技構成点)合計
中井亜美45.0233.6978.71
坂本花織40.0837.1577.23
アリサ・リウ41.3435.2576.59

中井の技術点45.02は、全体でダントツトップ。

4回転が跳べないショートプログラムにおいては、トリプルアクセル(3A)の破壊力(基礎点8.00+GOE1.71=9.71点)が非常に大きいです。
ここは3Aを跳べない選手はダブルアクセル(2A)を跳ぶしかないんですね。
この2AでGOE込みほぼ満点の点数を叩き出した坂本選手ですら4.86点(基礎点3.30+1.56)であり、ここで約5点差をつけています。

今大会はジャンプの判定がやや厳しく、ジャンプのミスや指摘がなかったのは、彼女含めて5人のみです(中井、ペトロシャン、グバノワ、サモデルキナ、クラコワ。中井以外はロシア出身4人という…笑)。
クリーンなジャンプ。そして、スピン・ステップはオールレベル4と非常に高い技術点を稼ぎ出しました。

坂本花織:演技構成点が異次元

坂本は、演技構成点では全要素で10点満点中9点台をマーク。
そして、指摘があったジャンプ2本以外は要素の質を評価するGOEが非常に高く、最高評価の+5も散見されます。

これらを可能にするのが、彼女の男子選手並みのスケーティングスキルにあります。

スケーティングスキルが高いから演技構成点も評価される。
そして、そのスケーティングからジャンプ・スピン・ステップの要素を行うため、GOEで非常に高い評価を得られるわけです。

4回転やトリプルアクセルといった高難度ジャンプに注目が集まりがちですが、彼女のスケーティングスキルは4回転ジャンプ並みの破壊力があります。

アリサ・リウ:バランスの良さと自然体メンタル

技術点の中井、演技構成点の坂本と位置付けるのであれば、アリサ・リウはそのバランスが良い選手と言えます。

技術点では中井に及ばないものの坂本を上回り、演技構成点では坂本に及ばないものの中井を上回っています。

彼女の一番の強みは、メンタル面の強さでしょうか。
ショートプログラムを終えたインタビューで「メダルはいらない」と答えたことは非常に印象的でした。
4年に1度のオリンピックの優勝争い。誰もが極限の緊張の中で演技することになるため、オリンピックでは思いもよらないミスが出ることがある。いわゆる「オリンピックには魔物がいる」と言われるわけですね。

ただ、彼女はそもそも優勝したいとも、メダルが取りたいとも思っていない。
もちろん良い演技をしたいという気持ちはあるでしょうが、仮にダメだったとしても「それも私の物語」と開き直れる。
そもそもオリンピックの魔物なんか気にしていないんですよね。
フリーでもいつも通り彼女の実力を発揮してくるでしょう。


フリーのジャンプ構成:誰が何を跳ぶのか

まず、ショートプログラム上位6選手のフリー予定構成を見てみましょう。

ペトロシャン以外は今シーズンの国際大会から、ペトロシャンは今シーズンの状態と公式練習の様子から予定構成を推測しています。

GOEの予測は個人の感覚でざっくり決めました。具体的にはこんな感じで、全ジャンプにこのGOEを適用しました。

  • 坂本 GOE+3.5
  • 中井・リウ・千葉 GOE+2.5
  • ペトロシャン・グバノワ GOE+2.0

中井亜美(SP1位)

要素基礎点予想GOE予想合計
3A8.002.0010.00
3Lo+2T6.201.237.43
3Lz+3T10.101.4811.58
3S4.301.075.37
3Lz+2A+2A SEQ13.751.4815.23
3F5.831.337.16
3Lo+2T6.821.238.05
合計55.009.8264.82

坂本花織(SP2位)

要素基礎点予想GOE予想合計
2A3.301.164.46
3F5.301.857.15
3Lz+2T7.202.079.27
3S4.301.505.80
3F+3T10.451.8512.30
2A+3T+2T9.681.4711.15
3Lo5.391.727.11
合計45.6211.6257.24

アリサ・リウ(SP3位)

要素基礎点予想GOE予想合計
3F5.301.336.63
3Lz+3T10.101.4811.58
3S4.301.075.37
3Lo4.901.236.13
3Lz+2A+2T SEQ11.551.4813.03
3F+2T7.261.338.59
2A3.630.834.46
合計47.048.7555.79

千葉百音(SP4位)

要素基礎点予想GOE予想合計
3F+3T9.501.3310.83
3Lo4.901.236.13
3S4.301.075.37
2A3.300.834.13
3Lz+2A SEQ10.121.4811.60
3Lz+2T+2Lo9.791.4811.27
3F5.831.337.16
合計47.748.7556.49

アデリア・ペトロシャン(SP5位)

要素基礎点予想GOE予想合計
4T+2T10.801.9012.70
4T9.501.9011.40
3S4.300.865.16
3Lo4.900.985.88
3Lz+2A+2A SEQ13.751.1814.93
3F+3T10.451.0611.51
3F5.831.066.89
合計59.538.9468.47

アナスタシア・グバノワ(SP6位)

要素基礎点予想GOE予想合計
3F+3T9.501.0610.56
3Lo4.900.985.88
3Lz5.901.187.08
3S4.300.865.16
3Lz+2A+2T SEQ11.551.1812.73
3F+2T7.261.068.32
2A3.630.664.29
合計47.046.9854.02

ジャンプ基礎点比較:ペトロシャンの「4回転トーループ」

ジャンプ合計の予想を並べてみます。

SP順位選手ジャンプ基礎点予想GOE予想ジャンプ合計
5位ペトロシャン59.538.9468.47
1位中井亜美55.009.8264.82
2位坂本花織45.6211.6257.24
4位千葉百音47.748.7556.49
3位リウ47.048.7555.79
6位グバノワ47.046.9854.02

4回転トーループを2本予定するペトロシャン(基礎点59.53)と、坂本(基礎点45.62)の差は約14点。

「じゃあペトロシャンの圧勝じゃないの?」って思うかもしれませんが、そう単純ではありません。


坂本花織の「GOE+PCS」という武器

基礎点の差は、GOEで埋まる

坂本の大きな武器は、ジャンプの「質の高さ」です。

ジャンプの基礎点の差約14点は、GOEを加味すると約11点差にまで迫ります。

選手基礎点予想GOEジャンプ合計
ペトロシャン59.538.9468.47
坂本花織45.6211.6257.24

今回はジャンプしか確認していませんが、スピン・ステップのGOEでも坂本は非常に高い評価を得ることが予想されます。

PCSの差が決定打になる

ショートプログラムでも坂本とペトロシャンの演技構成点の差は約5点ありました。
この差はフリーで約9点差に広がります。

つまり:

  • ジャンプの差:約11点(ペトロシャン有利)
  • 演技構成点の差:約9点(坂本有利)

実質的な差は、わずか約2点。

坂本・ペトロシャンが共に完璧な演技となった場合、ショートプログラムで約5点のリードがある坂本が有利と言えるでしょう。


中井亜美の「逃げ切り」と、リウ・千葉・グバノワの戦い

中井亜美:最も金メダルに近い位置

中井は、ショートプログラムのリードと、高いジャンプ構成が強みです。
また、演技構成点もペトロシャン以上に高い評価を得ています。

坂本との比較で見ると、

  • ジャンプの差:約7点(中井有利)
  • 演技構成点の差:約7点(坂本有利)

後はスピン・ステップの出来が鍵を握るわけですが、こうなってくるとショートプログラムの1.5点差が効いてきます
仮に双方完璧な演技となった場合、僅差で中井が逃げ切る可能性が高いです。

ただ、フリーになるとトリプルアクセルの成功率がやや下がるので、総合的に見るとどうなるか。

アリサ・リウ:無欲の勝利も

アリサ・リウは、フリーのジャンプ構成はさほど高いわけではありません。
もちろん、優勝争いの選手の中では…という留保が付きますが。

同じく、坂本との比較でみると

  • ジャンプの差:約2点(坂本有利)
  • 演技構成点の差:約4点(坂本有利)

ジャンプ、演技構成点共に坂本が有利であり、ショートプログラムで坂本がリードしていることを考えると、完璧な演技の対決になるとやや分が悪いです。
ただ、先ほども指摘したように彼女があまりに無欲であるがゆえに、普段通り素晴らしい演技を披露して金メダルを搔っ攫う可能性は0ではないと思います。

千葉百音・グバノワ:メダル争いに絡めるか

ここまで名前があがった中井・坂本・リウ・ペトロシャンは完璧な演技だった場合、フリー150点を超える可能性が高いです。この4人を追いかける立場にあるのが、千葉百音(SP4位)、アナスタシア・グバノワ(SP6位そしてスーパースター)でしょうか。

この2名は優勝争いというよりは、メダル争いにどのように絡んでいくかがポイントでしょうか。
全員が完璧な演技と仮定すると先の4人に分がありますが、千葉・グバノワはジャンプの安定感が非常に高く、「オリンピックの魔物」が現れた場合、一気に優勝・メダル争いに入ることになると思います。
(グバノワに安定感があるとコメントする日が来るとは)
(8年前に「私には安定感が必要」だと気が付けて良かったね)

実力的には千葉の方がグバノワよりも上だと思いますが、グバノワのオリンピックの相性の良さは異常です。
北京オリンピックから続いてこれまで6回オリンピックで演技しましたが、全て見た目ノーミスでまとめています。
まさかまさかのメダルで全世界2,000億人いると言われているファンを大号泣の嵐に巻き込むのでしょうか。


まとめ:フリーで見るべきポイント

この戦いの焦点は3つです。

1. ペトロシャンが4回転トーループを成功させられるか
2. 中井亜美がトリプルアクセルを成功させられるか
3. 坂本のGOEとPCSがどこまで伸びるか

これら3つが優勝争いを決定づけることになるでしょう。

願わくば全選手が完璧な演技を披露することを祈っています。

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この記事を書いた人

ただのフィギュアスケートファン。フィギュアスケート現地観戦し始めて10年前後。現在も日本国内の大会・アイスショーに出没しています。
このブログでは現地観戦の感想、日々感じたことをのんびり書いています。

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