木下トロフィー2023感想【男女ジュニアFS】

いつまで木下トロフィーの話をしているんだというツッコミが聞こえてきそうですが、木下トロフィーの感想最終回です!

目次

男子シングル

競技結果

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PL.選手名所属TSSTESPCSCOPRSKDeductionStN.
1中村 俊介木下アカデミー124.2659.6264.646.506.336.580.00#9
2高橋 星名木下アカデミー117.2863.0755.215.425.585.581.00#8
3森本 涼雅木下アカデミー109.3658.4751.895.085.005.501.00#6
4蛯原 大弥明治神宮外苑FSC107.7455.4653.285.335.255.421.00#7
5花井 広人邦和みなとスケート部104.6057.5848.024.754.754.921.00#5
6佐藤 和那邦和みなとスケート部86.5244.9643.564.424.084.582.00#3
7石原 弘斗京都宇治FSC80.0738.1741.904.174.084.330.00#2
8磯和 大智京都宇治FSC80.0137.6244.394.424.334.582.00#1
9磯和 大雅京都宇治FSC70.1128.0943.024.254.254.421.00#4
男子ジュニアフリースケーティング結果

感想

中村 俊介

プログラム:ナザレの子

ジャンプ:4T+3T,4Tq,3Aso,3Lo//3F!,1A+1Eu+3S,3Lz!+2T

(おそらく)初めて4回転2本の構成にしてきました。4T2本、3A2本とジュニアではかなり挑戦的なジャンプ構成となっています。今回はミスが相次ぎましたが、初めてなのでこんなものでしょう。ジュニアグランプリシリーズまでに上げれれば問題ありません。

ところで、彼もジョージアのクビテラシビリと同様に4Tと4Sの見分けがつきにくいですね。冒頭2本の4Tは一瞬4Sかも?とも感じて頭がバグりました。

私は難易度落としてでもノーミス信者なので、この構成でお願いしますシリーズを久しぶりにしたいと思います。まずは4Tと3A1本ずつ、3Lzと3Fを2本ずつという構成です。

4T,3A,3Lz+3T,3Lo//3F+1Eu+3S,3Lz+2T,3F

最後のスピンに入る直前に曲が止まってしまう不運なアクシデントがありました。このアクシデントについて、キスアンドクライで以下のやりとりがありました。

中村選手「どうせ(音楽)切れるなら2本目のスピン終わった後の方が良かった~」

佐藤コーチ「そんなこと言わないの!」

高橋 星名

プログラム:レ・ミゼラブル

ジャンプ:3A+2T,3Lz!+2T+2A+SEQ,3A<fall,3Lo//3S+3T,3Lz!,3F

なぜジュニアグランプリシリーズ選考漏れたんですか。

そう言いたくなるような演技。

男子ジュニア1年目でここまで出来るのは驚異的です。欠点が何一つとしてない。トータルパッケージとして優れているスケーターです。演技でも魅せられるスケーターですが、ジュニアデビューなので演じやすいレ・ミゼラブルは非常に良い選択でした。ジャンプ自体はそこまで回転が流れるわけではないのですが、フリーレッグの処理とジャンプ着氷後の手がすごく奇麗で目を引きます。

ジュニアグランプリへの参加がないのはとても残念ですが、ここまで出来るのであれば普通に全日本ジュニアメダル候補に入ってきそうです。

ところで、まだ「こども!」というような見た目なので、この見た目で3A跳んでると頭がバグります。

森本 涼雅

プログラム:LONE RANGER

ジャンプ:4T<fall,3Lz+3T,3F!+2T,3Lo//3Lz+2A+2T+SEQ,3F!,3S,3Lz,3F

昨シーズンはジュニアグランプリシリーズで表彰台に上りましたが、今シーズンは選考から漏れてしまいました。

ショートプログラムでも思いましたが、調子自体は全然悪くなさそうですよね。ショートプログラムで3A、フリースケーティングで4Tを跳んで両方ともに転倒と回転不足判定でしたが、ジャンプ自体は軸もきれいで3Aも4Tも跳べる選手のジャンプという印象でした。また、3Lz以下のジャンプは安定して質の良いジャンプを跳んでいました。

本人は「スピードが出なかったからPCSが~」とキスアンドクライで話していました。全日本ジュニアで勝負するであろうスケーター達には確かにPCSで遅れをとっているので、その点をどのようにして強化するかというところでしょうか。

女子シングル

競技結果

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PL.選手名所属TSSTESPCSCOPRSKDeductionStN.
1島田 麻央木下アカデミー124.1268.1856.947.087.087.171.00#11
2上薗 恋奈LYS121.6565.3756.287.087.086.920.00#8
3中井 亜美TOKIOインカラミ117.2663.5454.726.836.836.831.00#4
4柴山 歩木下アカデミー111.3055.6855.627.086.926.830.00#9
5髙木 謠東京女子学院111.0961.9149.185.926.176.330.00#5
6河野 莉々愛木下アカデミー109.3461.9447.405.926.005.830.00#7
7村上 遥奈木下アカデミー109.2559.4049.856.256.256.170.00#6
8金沢 純禾木下アカデミー106.2262.3743.855.425.505.500.00#2
9櫛田 育良木下アカデミー100.9747.2354.746.837.006.671.00#10
10山田 恵木下アカデミー97.8158.2139.604.834.835.170.00#1
11今関 友梨香MFアカデミー81.9938.8145.185.675.505.752.00#3
女子ジュニアフリースケーティング結果

河野選手はノービスA2年目、金沢選手はノービスA1年目の選手です。ノービスの選手が出られるジュニアのクラスの大会って日本ではあまり見たことがありませんでした(単純に今までは出ようとしていなかっただけの可能性もありますが)。2人ともTES(技術点)60点オーバーという素晴らしい演技でした。

感想

島田 麻央

プログラム:ベネディクトス

ジャンプ:3Aq手,4T<<fall,3Lz+3T,3Fq+2A+SEQ//3S+3T+2T,3Lo,3Lz

3A、4Tともに軸が大きく外れるジャンプとなりました。珍しい。3Aの助走がかなり短くなっています。歴代の日本女子だと大庭雅選手に次ぐ3Aの助走の短さだと思います。大庭雅選手の3Aは、どういう原理で跳んでいるのかわからないくらい常識で捉えられないので、大庭選手が比較対象になってくる時点で相当やばい。

ジャンプ構成と順番自体は昨シーズンからそのまま変更ありませんが、3F+2A+SEQは後半でも良いかもしれませんね。昨シーズンはこの場所に入れることにプログラム上の必然性がありましたが、今シーズンのプログラムでは必然性を感じませんでした。

静かに徐々に盛り上がっていくプログラムですが、どちらかと言うと島田選手の過去のプログラムは「強い!」というような印象のプログラムが多かったので、まだ上手くこのプログラムを表現できていないように感じました。まだ本人もどのようにして表現していこうか迷いながら演技しているような印象です

幸か不幸か、ジュニア時代がまだまだ続くことになったので、色んなプログラムに挑戦して自らの引き出しを増やしていってほしいと思います。

上薗 恋奈

プログラム:Pray/Mechanisms

ジャンプ:3Lz+3T+2T,3Lo,2A,2A//3Lz,3F+3T,3S+2T

アンナ・シェルバコワ状態に陥っています。その時々の曲の表現は抜群に上手いのに、なぜその曲とその曲をつなぐのか…と演技の途中に真顔になっちゃうやつです。けど、本人が上手すぎるがゆえに、プログラムとして成立してしまうんですよね。そしてだんだん癖になっていきます。これもアンナ・シェルバコワと同じ。ああ・・・クセになってんだ、謎プロの神振付

PCS(演技構成点)でもすでにかなり高い評価となっています。ミスがあったとはいえ現世界ジュニア女王である島田選手とほぼ互角。すでにジュニアで実績のある中井・柴山・櫛田選手らを上回る評価を得ました。あと少しだけパワーが付けば、本当に手が付けられなくなります。

このプログラムは、冒頭”Zyhys oñoso jehikagon Aeksiot epi”という台詞から始まり、ゲームオブスローンズのサウンドトラック”Pray”を前半に、メカニズムを後半に使用するプログラムです。”Pray”は2019~20シーズンのアレクサンドラ・トゥルソワが、後半に突然メカニズムを入れるプログラムは2022~23シーズンにアデリア・ペトロシアンが滑っていました。「さすがにエテリ・トゥトベリーゼの影響受けすぎでは美穂子ちゃん」と思うのは私だけでしょうか。

曲の編曲はエテリちゃん、ダニイル・グレイヘンガウスがいかにも作りそうなプログラムとなっていますが、随所に散りばめられたコンテンポラリーな振り付けはいかにも美穂子ちゃんのプログラムです。曲の編曲だけエテリが担当して、振り付けは美穂子先生が行ったと考えると納得感のあるプログラムとなっています。

今シーズン間違いなくジュニア界の主役の一人となるであろうことを確信した演技でした。

中井 亜美

プログラム:Only Hope

ジャンプ:3A<,3Lo+2A+SEQ,3Lz+3T,3Lo//3F+1Eu+3S<fall,2A,3Lz

ショートプログラムに続き、明確にイメージチェンジを狙ってきました。ただし、ショートプログラムの”Baby, God Bless You”は曲が盛り上がりを作ってくれるので演技としてわかりやすいですが、フリーの”Only Hope”は全く曲が助けてくれません。

昨シーズンの「ミス・サイゴン」は年相応に表現しやすいように作られたプログラムでしたが、今シーズンの”Only Hope”はやや背伸びしすぎではという印象を持ちました。ショートプログラムではミスが出てもPCS4位、フリースケーティングではまとまった演技をしたもののPCS5位と順位を落としていることが、それを物語っています。

今ではなく3~5年後にもう一度見たいプログラムだな~と思いました。逆に考えれば、この難しいプログラムを演じれるようになれば、2026年のミラノ五輪がかなり見えてきます。彼女は引き上げられたシニア年齢でギリギリミラノに間に合うのです。

技術面については問題なく状態は悪くないので、彼女の場合はショートプログラム・フリースケーティングの新しい挑戦のプログラム2本をいかに演じるかが今シーズンのポイントになってきそうです。

柴山 歩

プログラム:Plan & Elevation: V. The Beech Tree

ジャンプ:2A,3Lz+3T,1Lo,3S//3Lz!,3F+3T,2A+2T+2Loso

これまた難解なプログラムを与えらえた木下アカデミー組の1人。

この新プログラム”Plan & Elevation: V. The Beech Tree”は、昨シーズン(2022~23)の住吉りをん選手のショートプログラム”White Flowers Take Their Bath”と同じMari Samuelsen氏の作品です。これからMari Samuelsen氏の楽曲を使ったプログラムが増えてくるかもしれません。

今大会コレオシークエンスで最も高い評価を受けた選手の1人です。櫛田選手も同率1位なのですが、GOE+1.5の評価を得ました。音の変化に合わせたスパイラルポジションの変化がとても良かったです。

ここ最近の日本女子ジュニアで、一番予想外の方向で成長していると感じるのが彼女です。プログラムが面白すぎるんですよね。普通の選手があまり取り組まないようなプログラムに挑戦し、見事の演じきっているという点がすごく面白い。これだけで他の選手との差別化ができており、彼女の良さ・強みが際立っています。ドン・キホーテを滑っていた頃はジャンパーになっていくものだとばかり思っていました(もちろん今でもジャンパーであることには変わりないのですが)。

もう少し滑り込みが進めば、随所散りばめられた印象的なポージングが自然になってくると思います。今から完成形を見るのが楽しみです。

櫛田 育良

プログラム:The Little Prince

ジャンプ:3Lz!+3T<,3S+3T<,2A,2A//3Lo<<fall,3Lz!q+2T+2Lo,3Fso

冒頭のポーズを見て「I Got Rhythm滑るの?」と思ったのは私だけではないでしょう。冒頭のポーズが浅田真央さんが演じた”I Got Rhythm”(2012~13シーズンSP)とほとんど同じでした。実際は全く異なる楽曲でした。

またまたまたまた難解なプログラムを与えられた木下アカデミー組。ミラノ五輪に出場できる年齢の選手は全員こんな感じですね。今までの彼女のイメージを180度ひっくり返す大人っぽい雰囲気のプログラムを持ってきました。

演技自体は慎重にジャンプに入ることでジャンプのミスが出て、そこで体力消耗してまたスピードが落ちて~と負のスパイラルに陥ってしまいました。これがジュニアグランプリじゃなくて良かった。

ところで、気になったのは演技冒頭にジャッジの方向から視線を逸らす振り付けから始まりますが、ここから演技開始と判断されるんですかね。動きが少ないので演技開始と判断できるかどうか気になりました。ジュニアグランプリシリーズ日本大会で注意して見てきたいと思います。

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この記事を書いた人

ただのフィギュアスケートファン。フィギュアスケート現地観戦し始めて10年前後。現在も日本国内の大会・アイスショーに出没しています。
このブログでは現地観戦の感想、日々感じたことをのんびり書いています。

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