先日は男子シングルのグランプリファイナル進出ボーダーラインについて確認しました。
今回の記事では、女子シングルのグランプリファイナル進出ボーダーラインを探っていきます。
男子の記事はこちら👇
グランプリファイナル出場資格
グランプリシリーズは全6大会開催され、各選手は最大2大会まで出場が可能。
各大会男女シングルは1位~8位、ペア、アイスダンスは1位~6位までの選手に順位ポイントが付与され、獲得合計ポイントの上位6名、6組がグランプリファイナルに進出できる。
順位ポイントが同点の場合のタイブレークも設定されており、出場した2大会における最高順位が高い選手がより上位に、獲得順位も同じである場合は、2大会の合計スコアが高い選手がより上位となる。これ以降も細かい基準が設定されているが、ここまでのタイブレークで順位が決まらないパターンを私は見たことがない。
タイブレークの具体例を示すと、1位と4位を獲得した選手と、2位と3位を獲得した選手はともに順位ポイントは24ポイントですが、最高順位が高い1位と4位を獲得した選手がより上位になるということ。また、2位と3位を獲得した選手が複数人いた場合は、2大会の合計スコアが高い選手がより上位となる。
各大会における順位ポイントは以下のとおり。
各6大会の順位 | 男女シングル | ペア/アイスダンス |
---|---|---|
1位 | 15ポイント | 15ポイント |
2位 | 13ポイント | 13ポイント |
3位 | 11ポイント | 11ポイント |
4位 | 9ポイント | 9ポイント |
5位 | 7ポイント | 7ポイント |
6位 | 5ポイント | 5ポイント |
7位 | 4ポイント | – |
8位 | 3ポイント | – |
グランプリファイナル進出ボーダー
続いで、女子シングルにおけるグランプリファイナル進出ラインのボーダーを見ていきましょう。過去10シーズンにおけるギリギリで進出を果たした6位ライン、ギリギリ進出を逃した7位ラインをまとめてみました。
ボーダーライン(シリーズ6位)
年 | 順位 | 氏名 | 所属国 | 獲得順位ポイント | 最高順位 | 合計スコア |
---|---|---|---|---|---|---|
2013 | 6 | Elena RADIONOVA | RUS | 24 | 2 | 375.76 |
2014 | 6 | Ashley WAGNER | USA | 24 | 2 | 363.74 |
2015 | 6 | Ashley WAGNER | USA | 24 | 1 | 134.44 |
2016 | 6 | Satoko MIYAHARA | JPN | 24 | 2 | 390.08 |
2017 | 6 | Wakaba HIGUCHI | JPN | 24 | 2 | 419.69 |
2018 | 6 | Sofia SAMODUROVA | RUS | 24 | 2 | 396.71 |
2019 | 6 | Bradie TENNELL | USA | 22 | 2 | 427.45 |
2020 | – | 開催中止 | – | – | – | – |
2021 | 6 | Alena KOSTORNAIA | RUS | 24 | 2 | 436.39 |
2022 | 6 | Rinka WATANABE | JPN | 22 | 1 | 385.66 |
2015年については、グランプリシリーズフランス大会において、大会開催期間中にテロが発生し、SPの競技が終わった時点で大会中止となりました。そのため、この年についてはタイブレークにおける合計スコアがSPのスコアのみを使用しています。
ここ10年で最もボーダーラインが高かったのは、2015年です。アメリカのアシュリー・ワグナー選手がボーダーラインとなっており、獲得順位ポイントは24ポイント、最高順位は1位となっています。この年はグランプリシリーズ全戦優勝者が異なっており、グランプリファイナル進出者6人が全員グランプリシリーズ優勝者でした。
最もボーダーラインとして多いのは24ポイントです。2015年は最高順位が1位の24ポイント(1位-4位)でしたが、それ以外は最高順位が2位の24ポイント(2位-3位)となっています。男子は22ポイントがボーダーとなっていたことが多かったのに対して、女子はボーダーラインがやや高めです。これは、男子が4回転ジャンプ等大技に取り組むことが多く、成否によって順位の上下が激しかったのに対して、女子は5種類の3回転ジャンプをまとめることが主流だったからでしょう。
ボーダーラインが最も落ちたのは22ポイントです。2019年の最高順位2位の22ポイント(2位-4位)が最もボーダーラインが落ちた年ですが、この年はアレクサンドラ・トゥルソワ、アンナ・シェルバコワ、アリョーナ・コストルナヤのいわゆる「トシコ」がシニアデビューした年です。全員が異なる大会にアサインし、全員が2連勝を果たした結果、他の選手は順位ポイントを稼ぐことができずボーダーラインが落ちました。こんなとんでもないことは、なかなか起きないので24ポイント(2位-3位)がボーダーと考えて良いです。
ボーダーライン下(シリーズ7位)
年 | 順位 | 氏名 | 所属国 | 獲得順位ポイント | 最高順位 | 合計スコア |
---|---|---|---|---|---|---|
2013 | 7 | Akiko SUZUKI | JPN | 24 | 2 | 373.07 |
2014 | 7 | Rika HONGO | JPN | 22 | 1 | 349.47 |
2015 | 7 | Rika HONGO | JPN | 20 | 2 | 129.24 |
2016 | 7 | Ashley WAGNER | USA | 20 | 1 | 377.82 |
2017 | 7 | Satoko MIYAHARA | JPN | 22 | 1 | 405.83 |
2018 | 7 | Mai MIHARA | JPN | 22 | 2 | 407.01 |
2019 | 7 | Satoko MIYAHARA | JPN | 22 | 2 | 403.6 |
2020 | – | 開催中止 | ||||
2021 | 7 | Young YOU | KOR | 22 | 3 | 420.57 |
2022 | 7 | Rion SUMIYOSHI | JPN | 22 | 3 | 387.46 |
続いて、進出ボーダーラインに僅か及ばなかったシリーズ7位を見ていきます。
最も高い順位ポイントを獲得しているのが2013年の鈴木明子選手の24ポイントです。同年6位だったエレーナ・ラジオノワ選手も24ポイントで最高順位も2位と鈴木選手と並んでいましたが、合計スコアのわずかな差でラジオノワ選手が6位、鈴木選手が7位となりました。ちなみにですが、8位のカロリーナ・コストナー選手も同じく最高順位2位の24ポイントと並んでおり、合計スコアで決着がつきました。
7位ラインのスコアとして最も多いのが22ポイント、次に20ポイントです。6位のボーダーラインと同様に、7位のボーダーライン下についても、男子よりも女子の方が順位ポイントが高いです。
先の6位ラインと合わせてまとめると、女子シングルは大体以下のようなボーダーラインとなっていると思われます。
- 確定ライン:26ポイント(最高順位1位)以上
- 当確ライン:24ポイント(最高順位1位)、26ポイント(最高順位2位)
- ボーダーライン:24ポイント(最高順位2位)
- 厳しい:22ポイント以下
各シーズングランプリシリーズ結果
2022~23シーズン
順位 | 氏名 | 所属国 | 獲得順位ポイント | 最高順位 | 合計スコア |
---|---|---|---|---|---|
1 | Mai MIHARA | JPN | 30 | 1 | 421.57 |
2 | Loena HENDRICKX | BEL | 28 | 1 | 420.25 |
3 | Kaori SAKAMOTO | JPN | 28 | 1 | 419.48 |
4 | Yelim KIM | KOR | 28 | 1 | 399.25 |
5 | Isabeau LEVITO | USA | 26 | 2 | 422.40 |
6 | Rinka WATANABE | JPN | 22 | 1 | 385.66 |
7 | Rion SUMIYOSHI | JPN | 22 | 3 | 387.46 |
8 | Young YOU | KOR | 20 | 3 | 381.51 |
9 | Haein LEE | KOR | 18 | 4 | 372.99 |
2022~23シーズンは女子シングルにしては珍しく、6位ボーダーラインが22ポイントまで下がってきました。
とはいえ、22ポイント(1位-5位)なので、24ポイント(2位-3位)の1つ下と考えると、大きくボーダーラインが下がったわけではないと言えそうです。
2021~22シーズン
順位 | 氏名 | 所属国 | 獲得順位ポイント | 最高順位 | 合計スコア |
---|---|---|---|---|---|
1 | Kamila VALIEVA | RUS | 30 | 1 | 537.79 |
2 | Anna SHCHERBAKOVA | RUS | 30 | 1 | 466.47 |
3 | Elizaveta TUKTAMYSHEVA | RUS | 26 | 2 | 462.11 |
4 | Kaori SAKAMOTO | JPN | 24 | 1 | 439.27 |
5 | Maiia KHROMYKH | RUS | 24 | 2 | 446.04 |
6 | Alena KOSTORNAIA | RUS | 24 | 2 | 436.39 |
7 | Young YOU | KOR | 22 | 3 | 420.57 |
8 | Loena HENDRICKX | BEL | 18 | 3 | 422.74 |
9 | Mai MIHARA | JPN | 18 | 4 | 424.96 |
トゥルソワ、シェルバコワ、コストルナヤのトシコに加えて、エリザベータ・トゥクタミシェワ、カミラ・ワリエワ、マイア・フロミフ、ダリア・ウサチョワがグランプリシリーズにエントリーしていた狂気のシーズン。トゥルソワとウサチョワが怪我の影響で1戦のみの出場でしたが、もし出場できていたらボーダーラインはさらに上がっていたかもしれません。
ところで、6位ボーダーラインのコストルナヤの合計スコアが436点というのがもうやばいですね。2戦平均が約220点です。本当に狂気でした。
2019~20シーズン
順位 | 氏名 | 所属国 | 獲得順位ポイント | 最高順位 | 合計スコア |
---|---|---|---|---|---|
1 | Alena KOSTORNAIA | RUS | 30 | 1 | 476.00 |
2 | Alexandra TRUSOVA | RUS | 30 | 1 | 475.49 |
3 | Anna SHCHERBAKOVA | RUS | 30 | 1 | 453.80 |
4 | Rika KIHIRA | JPN | 26 | 2 | 462.17 |
5 | Alina ZAGITOVA | RUS | 24 | 2 | 434.05 |
6 | Bradie TENNELL | USA | 22 | 2 | 427.45 |
7 | Satoko MIYAHARA | JPN | 22 | 2 | 403.60 |
8 | Mariah BELL | USA | 22 | 3 | 418.56 |
9 | Elizaveta TUKTAMYSHEVA | RUS | 22 | 3 | 415.07 |
2019~20シーズンは、トゥルソワ、シェルバコワ、コストルナヤのトシコが2戦2勝を果たした、いわゆる”All Down✓”のシーズン。
シリーズ4位以下の選手は最大26ポイントしか取れていないため、多くの選手がポイントを稼げず、6位ボーダーラインがここ10年で最も下がった年になりました。
2018~19シーズン
順位 | 氏名 | 所属国 | 獲得順位ポイント | 最高順位 | 合計スコア |
---|---|---|---|---|---|
1 | Alina ZAGITOVA | RUS | 30 | 1 | 438.24 |
2 | Rika KIHIRA | JPN | 30 | 1 | 430.23 |
3 | Satoko MIYAHARA | JPN | 28 | 1 | 439.18 |
4 | Elizaveta TUKTAMYSHEVA | RUS | 26 | 1 | 422.34 |
5 | Kaori SAKAMOTO | JPN | 24 | 2 | 411.32 |
6 | Sofia SAMODUROVA | RUS | 24 | 2 | 396.71 |
7 | Mai MIHARA | JPN | 22 | 2 | 407.01 |
8 | Stanislava KONSTANTINOVA | RUS | 20 | 2 | 387.24 |
9 | Evgenia MEDVEDEVA | RUS | 20 | 3 | 390.72 |
2018~19シーズンは、ザギトワ・紀平が2連勝。宮原・トゥクタミシェワが1勝のシーズン。
優勝者が4人で、最高順位2位の24ポイントが6位ボーダーラインという、最も女子シングルの展開でよくみられるパターンとなりました。
2017~18シーズン
順位 | 氏名 | 所属国 | 獲得順位ポイント | 最高順位 | 合計スコア |
---|---|---|---|---|---|
1 | Evgenia MEDVEDEVA | RUS | 30 | 1 | 455.60 |
2 | Alina ZAGITOVA | RUS | 30 | 1 | 427.68 |
3 | Kaetlyn OSMOND | CAN | 26 | 1 | 419.68 |
4 | Carolina KOSTNER | ITA | 26 | 2 | 428.22 |
5 | Maria SOTSKOVA | RUS | 26 | 2 | 401.30 |
6 | Wakaba HIGUCHI | JPN | 24 | 2 | 419.69 |
7 | Satoko MIYAHARA | JPN | 22 | 1 | 405.83 |
8 | Kaori SAKAMOTO | JPN | 20 | 2 | 404.59 |
9 | Polina TSURSKAYA | RUS | 20 | 3 | 405.75 |
2016~17シーズン
順位 | 氏名 | 所属国 | 獲得順位ポイント | 最高順位 | 合計スコア |
---|---|---|---|---|---|
1 | Evgenia MEDVEDEVA | RUS | 30 | 1 | 442.19 |
2 | Anna POGORILAYA | RUS | 30 | 1 | 426.07 |
3 | Elena RADIONOVA | RUS | 28 | 1 | 401.50 |
4 | Kaetlyn OSMOND | CAN | 26 | 2 | 402.45 |
5 | Maria SOTSKOVA | RUS | 24 | 2 | 396.23 |
6 | Satoko MIYAHARA | JPN | 24 | 2 | 390.08 |
7 | Ashley WAGNER | USA | 20 | 1 | 377.82 |
8 | Elizaveta TUKTAMYSHEVA | RUS | 20 | 3 | 380.56 |
9 | Mai MIHARA | JPN | 20 | 3 | 380.20 |
2015~16シーズン
順位 | 氏名 | 所属国 | 獲得順位ポイント | 最高順位 | 合計スコア |
---|---|---|---|---|---|
1 | Gracie GOLD | USA | 28 | 1 | 138.71 |
2 | Evgenia MEDVEDEVA | RUS | 28 | 1 | 137.95 |
3 | Satoko MIYAHARA | JPN | 26 | 1 | 134.65 |
4 | Mao ASADA | JPN | 26 | 1 | 134.23 |
5 | Elena RADIONOVA | RUS | 26 | 1 | 130.3 |
6 | Ashley WAGNER | USA | 24 | 1 | 134.44 |
7 | Rika HONGO | JPN | 20 | 2 | 129.24 |
8 | Elizaveta TUKTAMYSHEVA | RUS | 20 | 2 | 111.58 |
9 | Courtney HICKS | USA | 18 | 2 | 127.98 |
2015~16シーズンはめったに見ることができない、グランプリシリーズ全6戦優勝者が異なり、6戦の優勝者全員がグランプリファイナルに進出してきた年です。まさに頂上決戦というような大会になりました。
2014~15シーズン
順位 | 氏名 | 所属国 | 獲得順位ポイント | 最高順位 | 合計スコア |
---|---|---|---|---|---|
1 | Elena RADIONOVA | RUS | 30 | 1 | 399.39 |
2 | Elizaveta TUKTAMYSHEVA | RUS | 28 | 1 | 386.22 |
3 | Anna POGORILAYA | RUS | 28 | 1 | 365.24 |
4 | Gracie GOLD | USA | 26 | 1 | 370.54 |
5 | Julia LIPNITSKAIA | RUS | 26 | 2 | 358.75 |
6 | Ashley WAGNER | USA | 24 | 2 | 363.74 |
7 | Rika HONGO | JPN | 22 | 1 | 349.47 |
8 | Satoko MIYAHARA | JPN | 22 | 3 | 360.77 |
9 | Kanako MURAKAMI | JPN | 20 | 3 | 342.48 |
2013~14シーズン
順位 | 氏名 | 所属国 | 獲得順位ポイント | 最高順位 | 合計スコア |
---|---|---|---|---|---|
1 | Mao ASADA | JPN | 30 | 1 | 412.14 |
2 | Julia LIPNITSKAIA | RUS | 30 | 1 | 389.03 |
3 | Ashley WAGNER | USA | 28 | 1 | 388.18 |
4 | Anna POGORILAYA | RUS | 26 | 1 | 363.31 |
5 | Adelina SOTNIKOVA | RUS | 26 | 2 | 364.51 |
6 | Elena RADIONOVA | RUS | 24 | 2 | 375.76 |
7 | Akiko SUZUKI | JPN | 24 | 2 | 373.07 |
8 | Carolina KOSTNER | ITA | 24 | 2 | 363.52 |
9 | Gracie GOLD | USA | 20 | 3 | 364.46 |
2013~14シーズンは有力選手が2戦まとめて結果を出したため、かなりボーダーラインが上がりました。
6位ラジオノワ選手、7位鈴木選手、8位コストナー選手の3人が順位ポイントで並び、最高順位でも並んだ結果、2戦の合計スコアで決着をつけることになりました。
まとめ
この記事では、女子シングルにおけるグランプリファイナル進出ボーダーラインを探ってきました。
進出ボーダーラインは24ポイント(最高順位2位)あたりになるものと思われます。
2023~24シーズンはシーズン4戦まで終了し、残りは2戦です。過去4戦の優勝者が全員異なっており、2015~16シーズンのようなシリーズ6戦の優勝者が全員異なるパターンになる可能性があります。そうなると、自然とボーダーラインは上がってきます。
第5戦の結果次第、特に坂本選手の結果次第ではありますが、第4戦中国大会で優勝した吉田選手の24ポイントがちょうどボーダーラインになるのではないでしょうか。
- 確定ライン:26ポイント(最高順位1位)以上
- 当確ライン:24ポイント(最高順位1位)、26ポイント(最高順位2位)
- ボーダーライン:24ポイント(最高順位2位)
- 厳しい:22ポイント以下
コメント