ステップシークエンスとは何か?
ステップシークエンスの定義
複数の難しいターンやステップを組み合わせて、氷上で移動を伴いながら実行する一連の要素のこと。
音楽に合わせて実行され、プログラムの見せ場として用いられることも多いです。
ステップシークエンスは、要素がいかに難しいかということを評価する「レベル」、要素がいかに質が高いかということを評価する「GOE」の2つの観点からジャッジされています。
- ターン:ツイズル、ブラケット、ループ、カウンター、ロッカー。
- ステップ:チョクトウ
ステップシークエンスの表記
プロトコルでは、ステップシークエンスは「StSq」と記載されます。「StSq4」はステップシークエンスレベル4、「StSq2」はステップシークエンスレベル2です。
略記号 | ステップ・シークエンスのレベル |
---|---|
4 | レベル4 |
3 | レベル3 |
2 | レベル2 |
1 | レベル1 |
B | レベルベーシック |
ステップシークエンスの基礎点
以下表に基づいて、ステップシークエンスのレベルに応じて基礎点が与えられ、GOEの評価によって加点もしくは減点がなされます。最高評価はレベル4かつGOE+5なので、レベル4の基礎点3.9点にGOE+5の+1.95点を加算した、5.85点がステップシークエンスで獲得できる最高点数になります。
GOE-5 | GOE-4 | GOE-3 | GOE-2 | GOE-1 | 基礎点 | GOE+1 | GOE+2 | GOE+3 | GOE+4 | GOE+5 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
StSqB | -0.75 | -0.60 | -0.45 | -0.30 | -0.15 | 1.50 | +0.15 | +0.30 | +0.45 | +0.60 | +0.75 |
StSq1 | -0.90 | -0.72 | -0.54 | -0.36 | -0.18 | 1.80 | +0.18 | +0.36 | +0.54 | +0.72 | +0.90 |
StSq2 | -1.30 | -1.04 | -0.78 | -0.52 | -0.26 | 2.60 | +0.26 | +0.52 | +0.78 | +1.04 | +1.30 |
StSq3 | -1.65 | -1.32 | -0.99 | -0.66 | -0.33 | 3.30 | +0.33 | +0.66 | +0.99 | +1.32 | +1.65 |
StSq4 | -1.95 | -1.56 | -1.17 | -0.78 | -0.39 | 3.90 | +0.39 | +0.78 | +1.17 | +1.56 | +1.95 |
ステップシークエンスのレベル判定
難しいターン・ステップの数
ステップシークエンスのレベル判定は、難しいターンおよびステップの数が大きく影響を持ちます。
難しいターンおよびステップとは、ツイズル、ブラケット、ループ、カウンター、ロッカー、チョクトウのこと。
以下表に記載の数の難しいターンおよびステップを実施することが、該当するレベル認定の必須事項となります。例えば、ステップシークエンスでレベル4を獲得したいときは、難しいターンおよびステップの数を11個以上入れる必要があります。
一方で、レベル判定に影響する難しいターンおよびステップの数として数えられるのは、各種類2回までとなっています。難しいターンおよびステップは6種類しかないため、最大12回(@6種類×2回)までしかレベル判定に数えられません。また、ターンやステップはクリーンなエッジで実施する必要があり、そうでない場合は実施したものとして数えられません。
そのため、例えばステップシークエンスでレベル4を狙って難しいターンおよびステップを12個入れていたとしても、エッジの処理が甘くターンやステップを実施したとして数えられなかったものが2個以上あった場合は、レベルは最大でも3の評価となります。
レベル | レベル判定の定義 | 難しいターンおよびステップの数 |
---|---|---|
レベル4 | 複雑 | 11個以上 |
レベル3 | 多様 | 9個以上 |
レベル2 | やや多様 | 7個以上 |
レベル1 | 最低限に多様 | 5個以上 |
レベルB | 最低限に多様でない | 4個未満 |
両方向への回転
ステップシークエンス全体のうち、最低1/3を右回転、最低1/3を左回転しながらステップシークエンスを実施する必要があります。
ここでの回転は1回転以上の回転とされており、半回転して向きを変えることは回転に含まれないとされています。
身体の動き
ステップシークエンスの1/3 以上で、両腕、頭、胴体、ヒップ、両脚の動きをはっきりと使う必要があります。
そして、これらの動きが体幹のバランスに影響を及ぼしていることが求められています。体幹のバランスに影響を与えるということは、身体全体のバランス、スケート靴のブレードに乗るバランスに影響を与えることとされています。この解釈が適切かどうかはわかりませんが、私は「バランスを崩して転んでしまいそうになるような動き」と勝手に解釈してます。
クラスター
クラスターとは、難しいターン(ツイズル、ブラケット、ループ、カウンター、ロッカー)3つの連続した組み合わせのこと。ステップシークエンスでは、右足・左足それぞれ1回ずつクラスターを実施する必要があります。
クラスターで使用する難しいターンの組み合わせとして、繰り返して使用しても良いのは1種類のみとされています。難しターンは5種類しかありませんので、クラスターを各足1回ずつ計2回実施する必要があるということは、難しいターンは全種類実施した上で、いずれかの難しいターンをもう1つ繰り返しで実施せよということになります。
また、クラスターの実行中に、スリー・ターン、チェンジ・エッジ、ジャンプ/ホップ、足換えを行うことはできませんし、ステップを踏んでいない方の足が氷につくこともできません。片足だけが氷についた状態で3つの連続した難しいターン(=クラスター)を実施する必要があります。
各足ともに最初に試みられたクラスターのみしか認められません。例えば右足のクラスターで失敗したから、もう1回右足のクラスターをやる!ということはできないわけです。
ステップシークエンスのレベル判定まとめ
ステップシークエンスのレベル判定は、先に確認した難しいターン・ステップの数、両方向への回転、身体の動き、クラスターの4要素を十分に満たす必要があります。レベル4を獲得することがいかに難しいかということがわかります。
- 難しいターン・ステップの数
- 両方向への回転
- 身体の動き
- クラスター
ステップシークエンスの出来栄え判定
出来栄えの評価であるGOEは-5~+5の11項目で評価されます。GOEの評価を行う時、まずはプラスとなる要素を考慮した上で起点となるGOEを決定します。その上で、マイナスとなる要素を考慮して起点としたGOEから減点を行い、結果として残ったGOEが最終評価となります。
GOEプラス採点の要素
以下で示すGOEプラス採点ガイドラインが基準となり、一般的には1項目満たせば+1、2項目満たせば+2…、5項目以上満たせば+5と評価することが推奨されています。ただし、GOE+4以上となるには、ガイドラインのうち★をつけている3項目すべてを満たしている必要があります。
- エッジが深く,明確なステップおよびターン,全身のコントロール★
- 要素が音楽に合っている★
- エネルギー,流れ,出来栄えが十分で,開始から終了まで無駄な力がまったくない★
- フリー・フットの変化など身体の動きが創造的
- 氷面を十分にカバーしている,あるいは,パターンが興味深い.
- ステップシークエンス中の加減速が十分
GOEマイナス採点の要素
GOEプラス採点分を加算し起点となるGOEを決定したあと、GOEマイナス要素を反映させていきます。プラス要素とマイナス要素を相殺させる方法により採点を行うため、目に見えるミスがあったとしてもGOEはプラス評価となることが十分に起こりえます。
例えば、2023年全日本選手権の男子シングル フリースケーティングにおいて、鍵山優真選手はステップシークエンスの途中で躓きました。しかし、結果としてはジャッジ9人中6人がGOE+3、2人が+2、1人が+1の評価を行い、マイナス評価は1人もいませんでした。これは、プラスの要素としてGOE+4~5であり、マイナス要素としてGOE-1~-3した結果として、最終的な評価としてはプラスになったと考えられます。
マイナスとなる要素 | GOE評価 |
---|---|
1回転を超える表内ジャンプが含まれている | -1 |
転倒 | -5 |
音楽に合っていない | -2~-4 |
つまづき | -1~-3 |
ステップやターンの質が拙劣 | -1~-3 |
姿勢が拙劣 | -1~-3 |
流れやエネルギーがない | -1~-3 |
パターンが小さい | -1~-3 |
ステップシークエンスの出来栄え判定まとめ
ステップシークエンスの出来栄え、GOEの判定では、音楽に合っているか、明確なステップやターンが出来ているかといった基準からGOEをプラスしたあと、転倒やつまづきといったミスによるGOEマイナスを行います。
まとめ
ステップシークエンスはレベル判定および出来栄えの判定で採点が行われます。とくに私たち一般人が見ていて判断に苦しむ点は、レベル判定、とくに難しいターンとステップがどのように実施されて、認定されるか否かという点でしょう。
この点については、MFアカデミーのヘッドコーチでもある中庭先生が以下動画で解説をしてくださっているので、見てみると非常に勉強になるのでおすすめです。