フィギュアスケート観戦をもっと楽しむために欠かせないのが「採点ルール」の理解です。
今回は、その中でも特に重要な演技構成点(PCS: Program Components Score)を取り上げます。
PCSは「表現力の点数」と説明されることが多いですが、実際にはプログラムの構成・表現・スケーティング技術といった幅広い要素を含む複雑な評価項目です。この記事では、PCSの採点方法や評価項目、観戦の際に注目すべきポイントをわかりやすく整理しました。
演技構成点(PCS)とは?
PCS(Program Components Score)は、以下の3つの項目から構成されています。
- Composition(CO):プログラム構成の完成度
- Presentation(PR):表現・演技の完成度
- Skating Skills(SK):スケーティング技術の完成度
ジャッジは各項目について 10.00〜0.00点を0.25点刻みで採点します。
深刻なエラー(転倒や失敗)があると、PCSの上限が制限されます。
PCSの点数計算方法
深刻なエラーによる上限
PCSには「深刻なエラー」があると上限が設定されます。
- エラーなし → 最大 9.75〜10.00
- エラー1回 → 最大 9.50
- エラー複数 → 最大 8.75
深刻なエラーとは「演技が中断するレベルの転倒や失敗」を指します。
加重係数
採点結果はそのままではなく、競技種目ごとに加重係数をかけて計算されます。
種目 | SP/RD | FS/FD |
---|---|---|
男子シングル | ×1.67 | ×3.33 |
女子シングル | ×1.33 | ×2.67 |
ペア | ×1.33 | ×2.67 |
アイスダンス | ×1.33 | ×2.00 |
これにより、同じPCSでも種目によって最終得点が変わります。
PCS早見表
各カテゴリのPCS採点結果に加重係数をかけた結果が以下のとおりです。PCS〇点台なら、〇〇点もらえるはず!という早見表に使ってください。
男子シングル
PCS | ショートプログラム(SP) | フリースケーティング(FS) |
---|---|---|
10.00 | 50.10 | 99.90 |
9.50 | 47.60 | 94.91 |
9.00 | 45.09 | 89.91 |
8.50 | 42.59 | 84.92 |
8.00 | 40.08 | 79.92 |
7.50 | 37.58 | 74.93 |
7.00 | 35.07 | 69.93 |
6.50 | 32.57 | 64.94 |
6.00 | 30.06 | 59.94 |
5.50 | 27.56 | 54.95 |
5.00 | 25.05 | 49.95 |
女子シングル
PCS | ショートプログラム(SP) | フリースケーティング(FS) |
---|---|---|
10.00 | 39.90 | 80.10 |
9.50 | 37.91 | 76.10 |
9.00 | 35.91 | 72.09 |
8.50 | 33.92 | 68.09 |
8.00 | 31.92 | 64.08 |
7.50 | 29.93 | 60.08 |
7.00 | 27.93 | 56.07 |
6.50 | 25.94 | 52.07 |
6.00 | 23.94 | 48.06 |
5.50 | 21.95 | 44.06 |
5.00 | 19.95 | 40.05 |
ペア
PCS | ショートプログラム(SP) | フリースケーティング(FS) |
---|---|---|
10.00 | 39.90 | 80.10 |
9.50 | 37.91 | 76.10 |
9.00 | 35.91 | 72.09 |
8.50 | 33.92 | 68.09 |
8.00 | 31.92 | 64.08 |
7.50 | 29.93 | 60.08 |
7.00 | 27.93 | 56.07 |
6.50 | 25.94 | 52.07 |
6.00 | 23.94 | 48.06 |
5.50 | 21.95 | 44.06 |
5.00 | 19.95 | 40.05 |
アイスダンス
PCS | リズムダンス(RD) | フリーダンス(FD) |
---|---|---|
10.00 | 39.90 | 60.00 |
9.50 | 37.91 | 57.00 |
9.00 | 35.91 | 54.00 |
8.50 | 33.92 | 51.00 |
8.00 | 31.92 | 48.00 |
7.50 | 29.93 | 45.00 |
7.00 | 27.93 | 42.00 |
6.50 | 25.94 | 39.00 |
6.00 | 23.94 | 36.00 |
5.50 | 21.95 | 33.00 |
5.00 | 19.95 | 30.00 |
PCSの評価項目
Composition(CO)|プログラム構成
評価されるポイント
- 音楽に合った振付や構成
- 要素と要素をつなぐ動きの多様性・複雑性
- リンク全体を使った空間の使い方
- プログラム全体の統一感
観戦のヒント
- 「リンクの端から端までしっかり使っているか?」
- 「要素と要素の間に“つなぎ”が入っていて、プログラムが途切れないか?」
- 「音楽に合わせて盛り上がりやクライマックスが見えるか?」
→ 「要素間がスカスカ」「リンクの片側ばかり滑っている」「音楽から振り付けがずれている」とCOは低評価になりがちです。
Presentation(PR)|表現
評価されるポイント
- 音楽やプログラムの雰囲気を全身で表現しているか
- 動きの強弱・アクセントがつけられているか
- 音楽とタイミングが合っているか
- ペアやグループで一体感を持って演技しているか
観戦のヒント
- 「音楽の盛り上がりで、表情や動きに変化があるか?」
- 「観客を引き込む“迫力”や“説得力”を感じるか?」
- 「ペアやアイスダンスで、二人の動きが完全に揃っているか?」
→ 音楽に合っていたとしても、淡々と動いてしまうと点が伸びません。
Skating Skills(SK)|スケーティングスキル
評価されるポイント
- 多様なエッジ(内・外、フォワード・バック)を正確に使えているか
- ステップやターンが多彩で正確かつ滑らかか
- スピードがあり、かつ安定しているか
- 滑りに流れがあり、次の動きにスムーズにつながっているか
観戦のヒント
- 「片足で長く滑れているか?」
- 「スピードがあってもバランスを崩していないか?」
- 「ターンやステップが複雑でも、動きが途切れず流れているか?」
→ 演技後半に疲れでスピードが落ちると低評価に…。
まとめ
PCSは単なる「表現力」ではなく、構成・表現・技術の3つを包括的に評価する得点です。
- CO:プログラム構成
- PR:演技・表現
- SK:スケーティング技術
TES(技術点)と並び、PCSは演技全体の完成度を測る大切な指標。観戦時にPCSを意識することで、採点の背景をより深く理解できるようになります。