フィギュアスケートに関する論文紹介シリーズです。
今回は、フィギュアスケートのジャンプ、とくにアクセルジャンプに着目した研究論文を見つけてきたので、その内容を紹介したいと思います。
目次
論文概要
論文タイトル等
- タイトル:Biomechanics of the Axel Paulsen Figure Skating Jump
- 著者:A. Mazurkiewicz, D. Iwańska, C. Urbanik
- 発行日:2018-06-01
- リンク:こちら
目的~何を明らかにするのか~
- 3D運動学解析を活用して、シングルアクセル(1A)、ダブルアクセル(2A)、およびトリプルアクセル(3A)の間の技術的な違いを明らかにすること。
- トリプルアクセルを成功するための最も重要な要因を明らかにすること。
実験方法
- ポーランドのエリート男子ジュニアスケーター1人による実験。
- 通常のウォームアップの後、スケーターは氷上で、1A、2A、3Aを各6回ずつ跳んだ。
- 各6回、計18回のジャンプはすべて回転不足なく着氷に成功した。
- 各ジャンプ(1A、2A、3A)のうち、最も質の良いジャンプを分析対象とした。
- ジャンプは高性能カメラによって動画として撮影され、分析システムによりスケーターの重心を計算し、各ジャンプの運動学データを作成。
結果
1A・2A・3Aの違いは何か?
- ジャンプでより多くの回転を行う予定の場合、より高くジャンプしている。
- 1Aよりも2A、2Aよりも3Aの方が高くジャンプを跳んでいる。
- 1Aを跳ぶときは、2Aと3Aよりも19%以上低い高さでジャンプを跳んでいた。
3A成功の鍵(山)は何か?
- 3Aを跳ぶときは、ジャンプ前の準備動作が非常に重要である。
- ジャンプ直前に、軸足(左回りの選手は左足)の足首をしっかりと曲げることで、ジャンプの力を増やすことができる。
- 離陸時の上体の角度・速度がジャンプ成否に影響を及ぼす。3Aの場合は1A・2Aよりも上体をリンクに対して直角に踏み切ることで回転を回りきるための十分な時間と高さを確保することができる。
議論と考察
- ジャンプ時の体の動きをデータとして測定して、回転数に応じて何が異なるのか、またジャンプ成否の鍵になるのは何かを明らかにするという面白い研究。
- 結論として出てきた事項としては、より多くの回転を行う場合、より高くジャンプしているという点は、なんとなく感覚的にわかっていたことがデータとしても実証できたという印象。
- 3A成功の鍵(山)として示されていた事項は興味深い内容だった。
- 膝ではなく、足首をしっかり曲げることが重要だということ、リンクに対して上体を直角に踏み切ることが重要だということ、この2点は意外に感じた。
- 言われてみれば、3Aの安定感がえげつないエリザベータ・トゥクタミシェワ選手、ソフィア・アカチエワ選手らは踏切時に上体をかなりまっすぐ直角に保っている印象。
- 一方で、バンクーバー五輪前後の浅田真央さんは、上体をかなり倒して跳んでいた。
- 人によってジャンプフォームが異なるので、今回の実験対象は1人だったが、多数の実験対象者を集めた上でどのような結果になるのか見てみたいところ。
- ところで、ポーランドで3A跳べるジュニア選手ってかなり対象者が誰なんか絞れませんかね?
余談ですが、先行研究として「ミーシンによると~」と言及してて「おや」と思ったら、アレクセイ・ミーシンコーチの研究でした。さすがです。
過去に紹介したフィギュアスケート論文は以下の通りです👇
フィギュアスケート観戦者の特性【論文紹介】 | ひろちのフィギュアスケート雑記
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