ジュニアグランプリシリーズの制度・仕組みについて解説

ジュニアグランプリシリーズとは、世界各地持ち回りで開催されるジュニアレベルの全7大会シリーズの国際大会のこと。各選手2大会まで出場することができ、シリーズ成績上位者がジュニアグランプリファイナルに進出できます。

ジュニア選手にとってはトップ選手への登竜門となるジュニアグランプリシリーズ、今シーズンも開催が迫っています。このジュニアグランプリシリーズは、シニアのグランプリシリーズとも異なる制度で運用していることもあり、ややわかりにくい点があるので、情報を整理してまとめてみました。

目次

開催地

ジュニアグランプリシリーズはシリーズ7大会が、毎シーズン異なる地域にて開催されます。このシリーズはシニアのグランプリシリーズとは別で開催されます。シリーズ成績上位者が進出するジュニアグランプリファイナルについては、シニアのグランプリファイナルと同時開催となります。

シニアのグランプリシリーズと異なる点としては、大会数がシニアは6大会であるのに対してジュニアは7大会となること。また、開催地が固定されておらず、毎シーズン開催地が変更となることです。開催地は比較的フィギュアスケートが盛んでない国が選ばれることが多い印象です。

直近5年(2020年はコロナ中止のため除外)のジュニアグランプリシリーズ開催地を以下にまとめました。ポーランドが5年のうち4年、オーストリア、アルメニア、フランスが5年のうち3年と数多く開催していることがわかります。

スクロールできます
2023年2022年2021年2019年2018年
タイ
オーストリア
トルコ
日本
ハンガリー
ポーランド
アルメニア〇※中止
フランス
チェコ
ラトビア
スロバキア
イタリア
スロベニア
ロシア
アメリカ
クロアチア
リトアニア
カナダ
直近5年間ジュニアグランプリシリーズ開催地

出場選手の決定方法

国別出場枠の決定

直近(昨シーズンの)世界ジュニア選手権の結果により、国別の出場枠が決定します。国別の出場枠にかかわらず、各大会の開催国については、男女シングル・アイスダンスについては最大3名、ペアについては制限なく(!)選手を出場させることができます。

翌年の世界ジュニア代表枠は出場選手2人の順位合計、もしくは1人の順位によって決まりますが、ジュニアグランプリシリーズについては、国別の最上位者の順位によって決まります。

例えば、2023年世界ジュニア選手権の女子シングルでは、1位島田麻央(日本)、2位ジア・シン(韓国)、3位中井亜美(日本)、4位ヨジェ・キム(韓国)、5位ミンソル・クォン(韓国)、6位シャンイー・アン(中国)となっています。ここにおいて国別最上位1~3位は1位島田、2位ジア、6位シャンイーとなりますので、日本・韓国・中国が14枠(7試合×2枠)獲得となります。6位と7位であれば翌年の世界ジュニア代表枠3枠獲得となりますが、ジュニアグランプリシリーズの場合は最大枠獲得できるとは限らないわけです。1人でもより高い順位を獲得することが重要となります。

また、国別の最上位者の順位によって決定するため、フィギュアスケートの非強豪国が最大枠14枠獲得することもかなりの頻度で起きています。出場枠を使いきれない場合、放棄された出場枠は次の国別最上位者上位4位、5位、6位の国…へと順番に枠が回っていきます。

男女シングル

条件出場枠
直近世界ジュニア選手権における
国別最上位者上位1~3位の所属国
14枠(7試合×2枠)
直近世界ジュニア選手権における
国別最上位者上位4~6位の所属国
7枠(7試合×1枠)
直近世界ジュニア選手権における
国別最上位者上位7~10位の所属国
6枠(6試合×1枠)
直近世界ジュニア選手権における
フリースケーティング進出者の所属国
5枠(5試合×1枠)
直近世界ジュニア選手権における
ショートプログラム25~30位の選手の所属国
4枠(4試合×1枠)
直近世界ジュニア選手権における
ショートプログラム31位以下の選手の所属国
3枠(3試合×1枠)
直近世界ジュニアに出場しなかった国2枠(2試合×1枠)
男女シングルにおけるジュニアグランプリシリーズ出場枠決定方式

ペア

条件出場枠
直近世界ジュニア選手権における
国別最上位者上位1~4位の所属国
12枠(4試合×3枠)
直近世界ジュニア選手権における
フリースケーティング進出者の所属国
8枠(4試合×2枠)
直近世界ジュニア選手権における
ショートプログラム参加者の所属国
4枠(4試合×1枠)
上記以外3枠(3試合×1枠)
ペアにおけるジュニアグランプリシリーズ出場枠決定方式

アイスダンス

条件出場枠
直近世界ジュニア選手権における
国別最上位者上位1~3位の所属国
14枠(7試合×2枠)
直近世界ジュニア選手権における
国別最上位者上位4~6位の所属国
7枠(7試合×1枠)
直近世界ジュニア選手権における
国別最上位者上位7~10位の所属国
6枠(6試合×1枠)
直近世界ジュニア選手権における
フリーダンス進出者の所属国
5枠(5試合×1枠)
直近世界ジュニア選手権における
リズムダンス21~25位の選手の所属国
4枠(4試合×1枠)
直近世界ジュニア選手権における
リズムダンス26位以下の選手の所属国
3枠(3試合×1枠)
直近世界ジュニアに出場しなかった国2枠(2試合×1枠)
アイスダンスにおけるジュニアグランプリシリーズ出場枠決定方式

派遣選手の決定

国別で与えられた枠に応じて、各国で派遣選手を決定してエントリーします。

事前に出場選手、補欠選手を登録し、最終のエントリー期日まで出場選手と補欠選手を入れ替えることが可能ですが、出場選手、補欠選手のいずれにも登録されていない選手を後から登録することはできません。

国別に与えられた枠を、各国の判断において派遣選手を決定するという制度はジュニアグランプリシリーズ独自の制度です。シニアのグランプリシリーズでは、選手個人の実績等により主催者から招待されるという形式ですが、ジュニアグランプリシリーズでは、国別枠に応じて各国が選手をエントリーするという形式となっています。

シニアであれば、ある程度実績がある選手がわかるので選手個人を招待するという方式を取っていますが、ジュニアはどのような選手なのかわからないため各国に出場枠を与え、各国で派遣選手を決定させるという方式を取っているものと思われます。

日本における派遣選手の決定

日本の派遣選手決定方法

毎年6月頃にジュニアグランプリ派遣選考会(外部非公開)を実施しており、その結果をもって派遣選手を決定しています。派遣選手は正メンバーとサブメンバーの2種類があり、正メンバーでもジュニアグランプリ2戦の派遣が事前に確定している選手、1戦の派遣のみが確定しており、2戦目に派遣されるかどうかは1戦目の演技次第の2パターンがあります。サブメンバーは基本的に補欠扱いとなりますが、1戦の派遣のみが確定している正メンバーの1戦目結果が芳しくない場合サブメンバーに枠が回ってきます。

かつて、ジュニアグランプリ2戦の派遣が事前に確定している正メンバーは、昨シーズンの世界ジュニア選手権メダリストのみとされていましたが、今シーズンは既に2戦派遣が確定している正メンバーが数名おり、日本スケート連盟内のジュニアグランプリ派遣選手決定運用方針に変更があったことが示唆されます。

1戦の派遣のみが確定している正メンバーについては、1戦目の順位とスコアを見て2戦目派遣有無が判断されます。過去の日本スケート連盟の国際大会派遣選考基準には、「1戦目4位以上の選手を2戦目に派遣する」旨の記載がありましたが、近年はその記載が削除されています。最近は1戦目4位以下の選手でも2戦目派遣されることがあり、例えば昨シーズン(2022~23シーズン)の周藤集選手は1戦目6位でしたが、2戦目の派遣がありました。機械的に1戦目の順位だけで2戦目有無を決定するのではなく、ある程度柔軟に対応しているようです。

ちなみに、1戦目4位という順位は、ジュニアグランプリファイナル進出の可能性がギリギリ残る順位です。5位以下でも2戦目派遣されることはありますが、4位以上で2戦目派遣がないことは日本では基本的にないため、日本選手にとっては表彰台の3位、もしくは2戦目派遣の基準となる4位が最初の目標となってきます。

正メンバーについては、少なくとも強化指定B選手に指定されているので、誰が正メンバーなのか予測することが容易です。一方で、サブメンバーは強化指定を受けていません。そのため、日本のジュニアグランプリエントリーメンバーのうち、強化指定を受けていない選手がサブメンバーとなります。

余談ですが、2017~18シーズンのロシア女子は、アレクサンドラ・トゥルソワ、アリョーナ・コストルナヤらがジュニアデビューのシーズンだったため、有力選手の大渋滞となりました。結果として、1戦目優勝者以外は2戦目派遣がないという鬼畜っぷり。1戦目2位だったアナスタシア・グリャコワは2戦目派遣をもらえませんでした。

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正メンバー(2戦派遣確定)正メンバー(1戦派遣確定)サブメンバー
派遣試合数2戦1戦確定。2戦目は1戦目の結果次第。正メンバーの結果次第。
強化指定強化指定B(最低でも)強化指定B(最低でも)強化指定なし
日本のジュニアグランプリ派遣選手区分

2023~24シーズン 日本代表派遣選手

2023年9月23日追記箇所

シリーズが進むにつれて、日本代表派遣選手の選考基準(具体的には2戦目の派遣選考基準)が見えてきたので、この記事でまとめています!

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2023~24シーズンのジュニアグランプリシリーズ日本代表派遣予定選手は、Twitter(X)の日本スケート連盟アカウントにて公表されています。ここで2戦派遣予定となっている選手が、2戦派遣が確定している正メンバー、1戦しか記載がない選手が1戦派遣のみが確定している正メンバーと思われます。そして、日本スケート連盟の投稿に記載がなく、ISUが発表しているジュニアグランプリシリーズのエントリーに名前がある選手がサブメンバーであると推測できます。

男子は2戦派遣確定している正メンバーが3人、1戦派遣確定している正メンバーが4人、サブメンバーが1人となっています。ここまで見て思ったんですが、今シーズンの日本男子のジュニアグランプリシリーズ派遣枠は15枠(通常の14枠+開催国枠1枠)となっているので、ほとんどの選手が2戦派遣してもらえそうな雰囲気があります。サブメンバーと思われる三島選手も1戦は枠が回ってきそうです。三島選手に2戦目が回ってくるかどうかは、三島選手と1戦派遣が確定している正メンバーの演技次第というところでしょうか。

第1戦の周藤選手、第2戦の西野選手の結果を見て良い方、両選手ともに良くなければサブメンバー三島選手を第4戦に派遣、第5戦は周藤選手、西野選手、三島選手のうち選ばれなかった選手、第3戦に出場した蛯原選手から派遣選手が決定され…といった流れで派遣選手が決定していくものと思われます。

  • 中田 璃士
  • 垣内 珀琉
  • 中村 俊介

女子は2戦派遣確定している正メンバーが4人、1戦派遣確定している正メンバーが3人、サブメンバーが2人となっています。奥野選手は昨年の全日本ジュニア選手権6位の成績で強化指定B選手となっていますが、ジュニアグランプリシリーズ第4戦まで正エントリーとなっていないことからサブメンバーであると推測されます。

女子も男子と同様に、今シーズンのジュニアグランプリシリーズ派遣枠は15枠あり、そのうち11枠は既に埋まっています。第1戦の高木選手、第2戦の村上選手の結果を見て良い方、両選手ともに良くなければサブメンバーのどちらかを第4戦にエントリー、第5戦は高木選手、村上選手のいずれか第4戦にエントリーされなかった方、もしくはサブメンバー…といった形で出場選手が決定していくものと思われます。男子よりも人数の余裕がないため、サブメンバーのうち1人は少なくとも1戦派遣がありそうですが、もう1人は正メンバーの結果次第となります。

  • 島田 麻央
  • 中井 亜美
  • 柴山 歩
  • 上薗 恋奈

ファイナル進出条件

出場資格

シニアのグランプリシリーズと同様に、各大会の順位によって順位点が与えられ、2大会の順位点合計によって競います2大会の順位点合計が同じ場合は、1大会の順位点がより高い選手(1位15ptと3位11ptなら、1位15ptを取った選手が上位)。それでも同じ場合は、出場2大会の合計スコアが高い選手と順位が決まっていきます。

過去は上位8選手がファイナル進出となっていましたが、約10年前から上位6選手がファイナル進出となっています。以上で述べた出場資格によって順位を決めていき、上位6選手がジュニアグランプリファイナル進出です。

ファイナル出場資格
  1. 2大会の順位点合計がより高い選手
  2. 1で順位点合計が同じ選手が複数いる場合は、1大会の順位点がより高い選手
  3. 1、2で同じ選手が複数いる場合は、2大会の合計スコアがより高い選手

※これ以降も細かい基準がたくさんあるが、基本的にここまででファイナル進出者の結果が出る。

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順位男女シングルペアアイスダンス
1位15pt15pt15pt
2位13pt13pt13pt
3位11pt11pt11pt
4位9pt9pt9pt
5位7pt7pt7pt
6位5pt5pt5pt
7位4pt4pt4pt
8位3pt3pt3pt
9位2pt
10位1pt
ジュニアグランプリシリーズにおける順位点

ファイナル進出ボーダーライン

シニアのグランプリシリーズは6大会であるのに対して、ジュニアグランプリシリーズ(男女シングル、アイスダンス)は7大会のため、シニアよりもより高い順位点がファイナル進出ラインとなります。一方で、ペアについては4大会のためシニアよりも低い順位点がファイナル進出ラインとなります。

男女シングルとアイスダンスについては、24pt(2位-3位)、26pt(2位-2位)あたり、ペアは20pt(3位-4位)、22pt(3位-3位)あたりがファイナル進出ボーダーラインとなっています。男女シングルとアイスダンスについては、2位以上を獲得すること、ペアについては3位以上を獲得することが鍵となります。

男子シングル女子シングルアイスダンスペア
2022年22pt
(13pt,419.73)
24pt
(13pt,376.00)
24pt
(13pt,304.77)
20pt
(11pt,273.44)
2019年26pt
(15pt,436.81)
24pt
(13pt,395.26)
26pt
(13pt,318.41)
20pt
(11pt,309.85)
2018年24pt
(13pt,433.40)
26pt
(13pt,379.39)
26pt
(13pt,318.82)
16pt
(11pt,297.49)
2017年22pt
(13pt,418.27)
24pt
(13pt,366.27)
26pt
(15pt,291.95)
22pt
(13pt,320.07)
2016年24pt
(15pt,433.74)
26pt
(13pt,362.86)
26pt
(13pt,299.52)
22pt
(11pt,301.01)
直近5年間のジュニアグランプリ シリーズ6位の順位点(カッコ内は2戦のうちより高い順位点、2大会の合計スコア)

※2020年はコロナ禍による開催中止。2021年はコロナ禍による出場選手の制限等により、ファイナル進出要件がイレギュラーとなったので除外しています。

まとめ

この記事ではジュニアグランプリシリーズの制度や仕組みについてまとめてきました。概要をまとめると以下の通りです👇

  • ジュニアグランプリシリーズはシリーズ全7大会が開催される。
  • 順位点の上位6選手がジュニアグランプリファイナルに進出する。
  • 開催地は毎シーズン異なっている。
  • 直近世界ジュニアの結果により国ごとの派遣枠が与えられ、各国で派遣選手を決定する。
  • 日本では、選考会を実施して派遣選手を決定している。

今年もジュニアグランプリシリーズが始まります。すべての選手にとって納得いく演技ができるよう祈っています。

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この記事を書いた人

ただのフィギュアスケートファン。フィギュアスケート現地観戦し始めて10年前後。現在も日本国内の大会・アイスショーに出没しています。
このブログでは現地観戦の感想、日々感じたことをのんびり書いています。

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