2023年7月19日に2023~24シーズンの国際大会派遣選手選考基準が公表されました。
この選考基準を見ていきましょう。
派遣選手選考基準
前文
国際競技会派遣選手は、以下の選考基準に従い、強化部において候補を決定し、フィギュア委員会及び理事会、選考委員会の承認を経て確定するものとする。
選考にあたり全日本選手権開催週にグランプリファイナル終了時点までの選考基準上の対象選手を公開する。各選考対象競技会の選考にあたり選考基準上の該当数、および該当項目内の点数・順位を加味し、上記手続きの基に選考を進める。
世界フィギュアスケート選手権
男女シングル・ペア各 3 枠・アイスダンス 1 枠
男女シングル
①全日本選手権大会優勝者を選考する。
②以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して1名選考する。
A) 全日本選手権大会 2位、3位の選手
B) ISU グランプリファイナル出場者上位 2 名
C) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコア上位 3名
③以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して、上記①②で選考された選手を含め、3 名に達するまで選考する。
A) ②の A)B)C)に該当し、②の選考から漏れた選手
B) 全日本選手権大会終了時点での ISU ワールドスタンディング上位 3 名
C) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング上位 3 名
D) 全日本選手権大会までに派遣した国際競技会、および強化部が指定した国内競技会における総合得点の最も高い 2 試合の平均得点の上位 3 名
ペア・アイスダンス
以下のいずれかを満たす組から総合的に判断して選考する。
A) 全日本選手権大会優勝組、2位、3位の組
B) 全日本選手権大会終了時点での ISU ワールドスタンディング最上位組
C) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコアの最上位組
四大陸フィギュアスケート選手権
男女シングル・ペア・アイスダンス 各 3 枠
男女シングル
全日本選手権大会終了時に、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
A) 全日本選手権大会 10 位以内
B) 全日本選手権大会終了時点での ISU ワールドスタンディング上位 6 名
C) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング上位 6 名
D) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコア上位 6 名
E) 全日本選手権大会までに派遣した国際競技会、および強化部が指定した国内競技会における総合得点の最も高い 2 試合の平均得点の上位 6 名
※ 最終選考会である全日本選手権大会への参加は必須である。(補欠の選考はこれに限らない)
ただし、過去に世界選手権大会 3 位以内に入賞した実績のある選手が、けが等のやむを得ない理由で全日本選手権大会へ参加できなかった場合、不参加の理由となったけが等の事情の発生前における同選手の成績を上記選考基準に照らして評価し、四大陸選手権大会時の状態を見通しつつ、選考することがある。
ペア・アイスダンス
国際的な競技力を考慮し総合的に判断して選考する。
※ 最終選考会である全日本選手権大会への参加は必須である。
※ 四大陸選手権出場に必要なミニマムポイントを取得していない組については、全日本選手権予選会時に派遣基準点を満たし、かつ強化部による国際競技力を認めた組をミニマムポイント取得競技会に派遣をする。
世界ジュニアフィギュアスケート選手権
男女シングル 3 枠・ペア 2 枠・アイスダンス 1 枠
男女シングル
①全日本ジュニア選手権大会優勝者を選考する。
②ジュニア対象年齢で派遣希望のある選手の中で、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して、上記①で選考された選手を含め 3 名に達するまで選考する。
A) 全日本ジュニア選手権大会 2 位、3 位の選手
B) ISU ジュニアグランプリファイナル出場者
C) 全日本選手権大会参加者のうち上位 3 名
D) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコア上位 3 名
E) 全日本選手権大会までに派遣した国際競技会、および強化部が指定した国内競技会におけるジュニアカテゴリーの総合得点の最も高い 2 試合の平均得点の上位 3 名
※ 最終選考会である全日本選手権大会への参加は必須である。(補欠の選考はこれに限らない)
ただし、過去に世界ジュニア選手権大会 3 位以内に入賞した実績のある選手が、けが等のやむを得ない理由で全日本選手権大会へ参加できなかった場合、不参加の理由となったけが等の事情の発生前における同選手の成績を上記選考基準に照らして評価し、世界ジュニア選手権大会時の状態を見通しつつ、選考することがある。
※ 候補選手となるには、当該年度のいずれかの競技会にて、当該年度ジュニアショートプログラムのジャンプ課題を実施し、十分な得点を獲得できる実力を示していることが必要である。
ペア・アイスダンス
国際的な競技力を考慮し、総合的に判断して選考する。
※ 最終選考会である全日本ジュニア選手権大会への参加は必須である。
2024ユースオリンピックゲーム
男女シングル各 2 枠
全日本ジュニア選手権終了時に、対象選手の中で、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。
①2023 年ジュニアグランプリの総合得点上位 4 名
②全日本ジュニア選手権上位 4 名
前回からの変更点
前文
今回、派遣選考基準の前文に以下の記載がありました。昨年から追記されたのは太字マーカー箇所です。
国際競技会派遣選手は、以下の選考基準に従い、強化部において候補を決定し、フィギュア委員会及び理事会、選考委員会の承認を経て確定するものとする。
選考にあたり全日本選手権開催週にグランプリファイナル終了時点までの選考基準上の対象選手を公開する。各選考対象競技会の選考にあたり選考基準上の該当数、および該当項目内の点数・順位を加味し、上記手続きの基に選考を進める。
- 各選考対象競技会の選考にあたり選考基準上の該当数、および該当項目内の点数・順位を加味し、上記手続きの基に選考
⇒まあ、これは今までと変わりないでしょう。
- 全日本選手権開催週にグランプリファイナル終了時点までの選考基準上の対象選手を公開
⇒ここが今回変わるポイントになります。この変更について、日本スケート連盟の伊東秀仁副会長は「より(派遣基準を)明確化するため」と話しています。
総合得点の最も高い2 試合の平均得点
世界選手権、四大陸選手権、世界ジュニア選手権の男女シングルにおける選考基準に以下の記載があります。
全日本選手権大会までに派遣した国際競技会、および強化部が指定した国内競技会における総合得点の最も高い 2 試合の平均得点の上位 3 名
世界選手権選考基準より
全日本選手権大会までに派遣した国際競技会、および強化部が指定した国内競技会における総合得点の最も高い 2 試合の平均得点の上位 6 名
四大陸選手権選考基準より
全日本選手権大会までに派遣した国際競技会、および強化部が指定した国内競技会におけるジュニアカテゴリーの総合得点の最も高い 2 試合の平均得点の上位 3 名
世界ジュニア派遣基準より
これらが前回2022~23シーズンどのようになっていたかというと、「総合得点」ではなく「シーズンベストトータルエレメントスコア」となっており、「2試合の平均得点」ではなく1試合の得点順となっていました。
正直なところ、この項目は選考基準の1番最後に出てくる項目であり、そこまで重要視されていないのでは…?という気もします。この変更の意味をまともに考えるのであれば、技術点だけでなく演技構成点も稼げる選手を、一発屋ではなく安定感がある選手を選考したいという意向が見とれます。
四大陸ペア・アイスダンスのミニマムスコア
今回、四大陸選手権のペア・アイスダンスの派遣基準の補足として、以下の文言が新たに追記されています。
四大陸選手権出場に必要なミニマムポイントを取得していない組については、全日本選手権予選会時に派遣基準点を満たし、かつ強化部による国際競技力を認めた組をミニマムポイント取得競技会に派遣をする。
ちなみに、「派遣基準点」とは最終頁の補足事項に「全日本選手権大会・全日本ジュニア選手権大会各予選会前に提示する」と記載があります。
四大陸選手権代表を狙うスケーターにとっては、まずはこの派遣基準点が目標となってくるでしょう。
今まではこれら記載がなく、枠を無駄にしている印象がややあったので、今回の派遣基準点設定は選考基準の明確化という観点から非常に良い対応と思われます。
ユース五輪選考基準の省略
前回2019年(鍵山選手がニット帽を被っていて非常にかわいかった大会です。)では存在していた文言が今回削除されています。
6 月に行われる第 1 次選考会(2019JGP 派遣選考会)を通過した選手
ただ、この変更はさほど大きいものではありません。なぜなら、「ジュニアグランプリの総合得点上位 4 名」が継続して選考基準に入っているため、この基準を満たしている選手は自動的にジュニアグランプリ派遣選考会を通過しているからです。
この変更により影響があるとすれば、島田麻央選手のような現在ジュニアで圧倒的な実力を持つ選手がジュニアグランプリ、全日本ジュニアの両方外した時に選考ができなくなるということですが、あまりその事態は想像できません。
私見
基本的に、どの変更もほとんど影響なさそうだな~と思いました。
ここからは前文で追記された事項(グランプリファイナル終了時点までの選考基準上の対象選手を公開)に関する私見ですが、一言で言うと「やらんよりはやった方が良い!けど、基準明確化のためにやることがそれ?」ということです。
日本スケート連盟の伊東秀仁副会長のコメントである「これまでも基準に照らせば分かることではあるが~」という発言がそのままであり、元々選考基準は事前に公開されているので、誰が選考上のテーブルに上がっているかは調べればわかることではあるんですよね。
まあ、それでも調べるのは面倒なので何も公開しないよりは、公開してくれる方がありがたいというところでしょうか。
おそらく今回の対応は、2023年世界選手権の代表選考で少しトラブルというか色々な意見が出たからでしょう。男子シングルの代表が、宇野昌磨(全日本1位)、山本草太(全日本5位)、友野一希(全日本3位)となり、全日本2位の島田高志郎が世界選手権代表から漏れました。結局のところ2023年世界選手権の代表選考は、どの選考基準をより重視するのかという点で意見が割れたんでしょう。選考基準を見れば、この選考結果になる理由も理解できますが「全日本選手権の銀メダリストを外すのか?」と論争が起きました。
これら経緯を鑑みると、今回のスケート連盟の対応は「それだけ?」というのが個人的な感想です。推測ですが、2023年世界選手権の代表選考で論争になったのは、選ぶ側(スケート連盟)と選ばれる側(選手)の対話不足なのでは?と思っています。
選手の成績を選考基準に照らし合わせた結果、誰が候補選手として上がったのかは調べれば誰でもわかる。そのあと、候補選手の中で誰を代表選手として選考したのか、その理由を説明することで全員が納得できる選考ではなかったとしても、何も説明がないよりも納得感を得ることができるのではないか。(ちなみに私は2022年全日本後に、選手も我々が知りえる選考情報しかもらえていないことを知って驚きました。)
この手順をすっぽぬいて、全日本前に「今、選考のテーブルに乗っているのはこの選手だよ!」と案内しても、結局全日本後に「全日本表彰台でも外すんですか!?」という事態が起きかねないと思うんですよね。まあこの辺りは基準内に明記されるような事項ではないので、対応する予定だよというなら良いんですが…。(むしろそう信じたいところ)
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