フィギュアスケートのルール勉強①【演技構成点】

フィギュアスケートのルールについて勉強していきましょう!

初回は演技構成点(PCS)です。「表現力を評価する演技構成点~」と言われがちですが、実際には簡単に一言で表現することができるようなものではないことがわかると思います。

なお、今回のルールは2023~24シーズンのものとなります。

目次

演技構成点(PCS)とは何か

概要

演技構成点(PCS)はComposition(CO)、Presentation(PR)、Skating Skills(SK)の3項目となっています。

ジャッジは、10.00~0.00の間で、0.25点刻みで採点を行います。

各項目が何を評価しているのかは後述しますが、まずはどのように評価されるのかを見ていきます。

スクロールできます
分類評価の範囲定義エラー
プラチナ10.00傑出エラーなし
ダイヤモンド9.75卓越深刻なエラーなし
ダイヤモンド9.00~9.50卓越深刻なエラーが1つ
ゴールド8.00~8.75非常によい深刻なエラーが複数
ゴールド7.00~7.75よい
グリーン6.00~6.75平均以上
グリーン5.00~5.75平均的
オレンジ4.00~4.75まあまあ
オレンジ3.00~3.75弱い
レッド2.00~2.75劣る
レッド1.00~1.75非常に劣る
レッド0.25~0.75きわめて劣る

深刻なエラー(プログラムが中断する転倒や失敗)有無により、PCSの上限が設定されます。

  • 9.75~ 深刻なエラーなし
  • ~9.50 深刻なエラーが1つ
  • ~8.75 深刻なエラーが複数

深刻なエラーとは、「プログラムが中断してしまった転倒/失敗」のことを指します。

ただし、ジャッジの採点したスコアがそのまま使用されるわけではなく、カテゴリごとに加重係数をかけた上で点数計算が行われます。

スクロールできます
SP/RDFS/FD
男子シングル×1.67×3.33
女子シングル×1.33×2.67
ペア×1.33×2.67
アイスダンス×1.33×2.00
各カテゴリにおける加重係数

男女シングルは技術点(TES)・演技構成点(PCS)の構成要素は全く同じですが、PCSの加重係数が異なるので点数の出方も微妙に変わってくるわけですね。

点数早見表

各カテゴリのPCS採点結果に加重係数をかけた結果が以下のとおりです。PCS〇点台なら、〇〇点もらえるはず!という早見表に使ってください。

男子シングル

スクロールできます
PCSショートプログラム(SP)フリースケーティング(FS)
10.0050.1099.90
9.5047.6094.91
9.0045.0989.91
8.5042.5984.92
8.0040.0879.92
7.5037.5874.93
7.0035.0769.93
6.5032.5764.94
6.0030.0659.94
5.5027.5654.95
5.0025.0549.95
男子シングル PCS早見表

女子シングル

スクロールできます
PCSショートプログラム(SP)フリースケーティング(FS)
10.0039.9080.10
9.5037.9176.10
9.0035.9172.09
8.5033.9268.09
8.0031.9264.08
7.5029.9360.08
7.0027.9356.07
6.5025.9452.07
6.0023.9448.06
5.5021.9544.06
5.0019.9540.05
女子シングル PCS早見表

ペア

スクロールできます
PCSショートプログラム(SP)フリースケーティング(FS)
10.0039.9080.10
9.5037.9176.10
9.0035.9172.09
8.5033.9268.09
8.0031.9264.08
7.5029.9360.08
7.0027.9356.07
6.5025.9452.07
6.0023.9448.06
5.5021.9544.06
5.0019.9540.05
ペア PCS早見表

アイスダンス

スクロールできます
PCSリズムダンス(RD)フリーダンス(FD)
10.0039.9060.00
9.5037.9157.00
9.0035.9154.00
8.5033.9251.00
8.0031.9248.00
7.5029.9345.00
7.0027.9342.00
6.5025.9439.00
6.0023.9436.00
5.5021.9533.00
5.0019.9530.00
アイスダンス PCS早見表

各項目の定義

続いて、PCSの各項目について定義や採点のポイントを深堀していきます。

日本スケート連盟のデータサイトに関係資料が掲示されています。この資料ベースで整理していきましょう。

データサイト内の以下2点の資料が非常に参考になります。

  • 01 ISU特別規程、技術規程、コミュニケーション>00 共通>コンポーネンツ説明2023 縦.pdf
  • 01 ISU特別規程、技術規程、コミュニケーション>ジャッジ席持ち込み可能資料>2023-24シーズン プログラムコンポーネンツ表.pdf

Composition(CO)

ポイント

音楽との関係でプログラムをどう設計・構築するのか

定義

さまざまな種類の動きを意図をもって組み合わせる,独創的に組み合わせる,練り上げるなどして,調和,統一感,空間,形式,音楽構造とあらゆる面で全体として意味のある形に仕上げることができているか

基準

多次元的な動きと空間の利用

異なる平面(高、中、低、斜め)に沿い、あるいは、それを横断するように、流れるようにコントロールして動くこと。

空間を利用する能力

ペア・スケーティング、アイスダンス、シンクロナイズド・スケーティングでは、魅力的に設計された動きの創造にスケーターの全員が貢献すること。

要素中および要素間のつなぎ・つながり

変化に富んだ複雑な身体やスケートの動き(ホールド、動きの種類、長さが変わるなど)によって要素同士を完全につなぎ、動きのシークエンスを中断することなく、幅広い能力を示すこと。

「要素-動き-要素」というブロックを「動きの単位」と呼ぶ。動きの単位において、要素は動きのシークエンスの一部となる。

音楽のフレーズや表現形式を反映した振り付け

表現形式とは、音楽構成の構造と構成を指す。

フレーズとは、それ自体が完全な音楽的意味を持つ音楽的韻律の単位を指す。

動きの単位は、 一つひとつが音楽のフレーズや表現形式に対応する。

コレオグラフィックなフレーズは、その開始からクライマックス、終了まて音楽のフレーズに従うこと。

パターンと氷面の十分な利用

氷上における動きの単位の配置が魅力的・創造的であること。

プログラムの設計および配置が氷面全体をカバーしていること。

ペア・スケーティング、アイスダンス、シンクロナイズド・スケーティングでは、魅力的なパターンの創造にスケーターの全員が貢献すること。シンクロナイズド・スケーティングでは、隊列やシンメトリーを保つ能力を含む。

統一感

あらゆる部分が適切に組み合わされて統一感のある全体となっており、完全性が感じられること。

ペア・スケーティング、アイスダンス、シンクロナイズド・スケーティングでは、構成をクリアにするという目的の達成にスケーターの全員が貢献すること。

Presentation(PR)

ポイント

音楽との関係でプログラムがどのように演じられているか

定義

音楽と構成を理解し,心を込め,全身かつ全力でそれを表現できているか.

基準

表現と投射

スケーターは,プログラムに全身で関与し,音楽的な選択と構成のアイデアに導かれた,あるいは,規程や当該ダンスのスタイルに求められている雰囲気や感覚,イメージ,リズム,スタイルを表現・投射すること.

身体とエネルギーの明快な表現により感覚を伝えること.

観客をつかみ,感動をもたらす能力.

エネルギーや動きの多様さ,メリハリ

意味を強める,および/または,アクセントや音楽的ニュアンスを強調する動きの導入

力強さや動きはプログラムを通じて変化すべきである.

音楽に対する感受性,タイミング

音楽およびその要素(メロディ,リズム,和音,テンポ,強弱,音と音のつながりに様々な表情をつける)の特徴に応じて正確かつ一貫した動きができる能力.

ステップや動作は、はっきり認識できる場合,あるいは規程や当該ダンスのスタイルによって求められている場合は音楽のタイミングに従う.

音楽的な細部,アクセント,ニュアンスの理解を示す動きの技巧.音楽を適切に/意図をもって動きに転換していること.

ユニゾン、一体性,空間把握(ペア・スケーティング,アイス・ダンス,シンクロナイズド・スケーティング)

一体となって演技すること

スケーターそれぞれが音楽に対する感受性を示し,表現を目的に互いに調和しあう形でスケーター同士が作用し合う能力.

スケーターは等しい能力と技量を持ち,コンポジションを演技する責任を等しく分担しなければならない.また,相手がいまどこにいるのか,目で確認することなく互いに認識できなければならない.

Skating Skills(SK)

ポイント

スケーティングと動きのテクニック

定義

ブレードと身体をコントロールし,さまざまなステップ,ターン,スケーティング動作などスケートらしい動きができているか.

基準

多彩なエッジ,ステップ,ターン,動き,方向

エッジ,ステップ,ターン,身体の動き,スケーティングの向きなどが多様であること:フォワード,バックワード,時計回り,反時計回り.

エッジ,ステップ,ターン,動き,身体コントロールの精度

エッジ,ステップ,ターン,身体の動きをそれぞれ正確かつ完全に行う能力.精度とは,質の高い実行と正確性を指す.エッジは,ブレードが氷に触れる瞬間から正しくなければならない.動きの面にかかわらず,体幹がコントロールされていると動きがよくなる.

バランスとなめらかな滑り

ブレードを氷の上でなめらかに滑らせる能力.

ブレード上でバランスが取れていて,その結果,ブレードや動きがコントロールされていること.

ブレードが氷の上で容易に,スムーズに動いていること.

基本的に片足で滑っていること(両足で滑ること自体は可).

バランスを保ち,コントロールし,ブレードを氷の上でなめらかに滑らせることでスピードを保つ.

長いディープ・エッジは,短いフラット・エッジよりも難しい.

流れ

膝や足首を深くなめらかに動かし,最終的に,調和を保つ形でスムーズかつ楽々と身体全体を動かす能力.

ある動きから別の動きへ,あるいは,ある動きのコンビネーションから別のコンビネーションへ,流れるように楽々とトランジションすること.

パワーとスピード

片足から別の足へと踏み換える際(ダイナミック・ストローキング)に加速し,スピードをコントロールする能力.

加減速を示す能力と,スピードに乗って楽々とさまざまなスケーティングを行う能力.

各項目の個人的解釈

Composition(CO)

  • プログラムの構成・振り付けが、いかに音楽に合っているのかを評価する。
  • 様々な種類を含む全身の複雑な動きができているかどうか。
  • 要素間に空白の部分がなく、連続性があるかどうか。
  • 音楽を表現する振り付けができているかどうか。
  • 要素配置、動きに偏りがなく、リンク全体をカバーして演技できているかどうか。
  • プログラム全体の統一感があるかどうか。

もちろん、演技するスケーターの実力も影響しますが、COはプログラム自体の評価を行う項目という印象があります。

プログラム構成における動きの複雑性、連続性、リンク全体のカバー、これらが音楽を十分に表現し、プログラム全体の統一感を保った状態で実施することが重要ということでしょう。

逆に言うと、動きが単調、要素間のつなぎがなく空白が多い、音楽表現する振り付けがない、要素配置の偏り、リンクの一部のみを使って演技している、プログラムの統一感がないという場合は評価が低くなります。

Presentation(PR)

  • 音楽を表現するために、どのように演技を行っているかを評価する。
  • プログラムの雰囲気やイメージを全身で表現できているかどうか。
  • 動きの強弱をつけて、プログラムのアクセントをつけれているかどうか。
  • 動きが音楽と合っているかどうか(=音楽と同じタイミングで動けているかどうか)
  • ペア、もしくはグループ全体で1つとなった演技ができているかどうか。

COはプログラム自体の評価だったのに対して、PRはプログラムをスケーターがどのように演技して表現するのかを評価する項目という印象です。

プログラムのイメージを評価できているかどうか、その際動きの強弱が付けられているかどうか、動きと音楽があっているかどうか、ペア、シンクロ競技であれば、一体となった演技ができているかどうかが重要ということでしょう。

逆に言うと、プログラムの雰囲気を表現できていない、動きの強弱がなく、プログラムのメリハリがない、音楽から早く/遅れて演技している、ペア、グループで動きがずれている場合は評価が低くなるのでしょう。

余談ですが、フィギュアスケートにおける「マイム」は、プログラムのアクセントになっているという点で、評価項目の一つになるでしょうね。

Skating Skills(SK)

  • スケーティング技術を評価する。
  • 複雑なエッジ、ステップ、ターン、動きができているかどうか。
  • 複雑なエッジ、ステップ、ターン、動きが正確かつ完全に行うことができているかどうか。
  • なめらかな滑りができているか、より長い時間ディープエッジにより滑ることができているかどうか。
  • 動きがスムーズかつ流れがあるかどうか。
  • スピードがあり、尚且つコントロールできているかどうか。

COはプログラムそのものの評価、PRはプログラムをどのようにしてスケーターが演じるのかを評価していましたが、SKでは、フィギュアスケートの根底であるスケーティング技術を評価する項目という印象です。

注意すべき点として、我々スケートファンは「なめらかな滑り」、「きれいなスケーティング」が評価項目になっていると考えがちです。もちろんこれらも評価項目なのですが、より複雑なステップやターンが入っているかどうかも評価項目となっています。

そのため、例えばですが、奇麗で滑らかなスケーティングをしている一方で、要素間のつなぎがほとんどないスケーターについては、複雑なステップやターンを行っていないという点で、ある程度は評価されるでしょうか、最高評価までは伸びきらないということになるでしょう。

まとめ

この記事では、フィギュアスケートのルール勉強として演技構成点(PCS)について勉強してきました。

簡単にまとめると、PCSの各項目は以下の内容を評価する項目だと言えるでしょう。

PCSの各項目
  • CO:プログラム構成の評価
  • PR:プログラム表現の評価
  • SK:スケーティング技術の評価
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この記事を書いた人

ただのフィギュアスケートファン。フィギュアスケート現地観戦し始めて10年前後。現在も日本国内の大会・アイスショーに出没しています。
このブログでは現地観戦の感想、日々感じたことをのんびり書いています。

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